研修日誌6。芸大卒展 | 適当な事も言ってみた。

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~まあそれはそれとした話として~

1月31日/東京都美術館 東京芸大卒展

四浪もして入れなかった大学。それが東京芸大だ。
四流大学を卒業後、何の因果か予備校講師になっちまった僕は、
これまたどういうわけか優秀な生徒に恵まれ、
ついに四年前、自分が教えていた生徒が芸大に入ってしまったのだった。
どちらかというと「入ってくれた」という感覚に近い。

あのときのことは忘れられない。
自分の雪辱を果たしてくれたのだ。

その彼の卒業制作を観に行った。



素晴らしい出来だった。

自らの家族と先祖を描いた、モノクロームの肖像画である。
迫真の描写は、一見写実絵画の系統に属するものかと思われるが、
ああいう甘ったるい幻想写実とは一線を画すドキュメンタリー性がある。
簡潔にして剛毅。小賢しいコンセプトに依存することを許さず、
かといって技倆に溺れてもいない。存在感に満ちた作品であった。

彼らしい生真面目さ、頑固さが良い形として発揮されていた。
贔屓目でなくともトップクラスの作品だった。
小心者(これも良いところ)の彼は、大学院入試を目の前にかなりピリピリしていたが、
多分、大丈夫だろうと思う。

良い作家としてのデビューを飾ったと思う。