一日丸まる休んだことにより、体の疲労はだいぶ抜けたように思え
た。膝の痛みもサポーターを付けていればほとんど気にならない。
首と肩の凝りも治まっている。
最大の難所を越えるのに、ふさわしいコンディションと言えた。
空には星が瞬き、少なくとも昼過ぎまでは雨が降ることはないと確
信させてくれた。
走り始めてわずか20分ほどで、道は緩やかに上り始めた。
この頃から僕とは切っても切れない縁になったもの、それは「上り
坂車線」の標識である。こいつを見つけると、ああ、峠のお出ましだ
、と言うことになり、覚悟を決めるのである。
最初の峠は箱根山の脇を通る「通岡峠」である。上り、下りとも急坂
注意の標識があり、かなり角度がある。ギアを軽くし、一つ一つ地道
に漕いで距離を稼ぐ。速度は早足に歩く人程度である・・・・・。
おそらく気温は10度以下で、僕は半そでに7分丈のスポーツパンツ
という超薄着であるにもかかわらず、汗が吹き出た。
なぜか、車が通ることは滅多にない。10分に1台程度である。
それ故、僕はこの旅始まって以来のスポーツ感覚で、この峠越えを
楽しむことが出来た。
辛いと分かっていれば、多少の事にはへこたれない。そして辛い一
日になるのだから、ゆっくり進めばいい、という考えに至り逆に余裕
が出てくるのであった。Sさんに散々脅された成果と言ってもいい(笑)
何分漕いだか分からない。しかしいつしか上り坂車線は姿を消し、僕
は峠のてっぺんに立っていたのである。
今日はなんてスポーティーなんだ(笑)
車のない下り坂は、爽快でスリリングで、この上なく楽しいもの
であった。時速は最高54キロに達した。およそ4キロの間、一度
もペダルを漕ぐことなく僕は大船渡に到着した。
今日は何とかなるぞ、そう思った。
仙台付近で、膝の痛みや暑さやパンクや悪路や大型トラックや
インチキ工事と戦っているよりは、今日の方がよっぽどやりやす
い。峠と僕の、フェアな戦いだ。乗り切ってやろうじゃないか。
そして、きっと宮古にたどり着いてやる・・・・・・。
僕は一人興奮していた。
町を二つ越えると、再び峠の上りである。出ました「上り坂車線」。
Sさんが言っていたキツイ二つ目の峠、その名も「大峠」。
さすがにこれはキツイ。やはり一個目の疲労が足に溜まっている
模様。疲労は蓄積されていくんだよな、と今更ながら実感する。
しかしひたすら漕ぎ続け、頂上と思えるトンネルに到着。あまりの
交通量の少なさに、大胆な一枚。
この道ホント車来ない・・・・・
下り始めてすぐのところに道の駅「さんりく」があったので、一休
みする事に。今までの僕ならきっと「まだ行ける」とか言って通過
していたんだろうな。今日は長いのだ。のんびり行こう。
この頃から僕は、ゆとりを持って旅をする、という事を覚え始めた。
道中の写真も増えていく。



