一波乱ありつつも何とか僕は自転車を折りたたむ事が出来た。
たたんだ自転車は、テントなどの他の荷物と共に夕宅配便屋に持
ち込み東京に送ってもらう事にした。2000円だというから持ち帰る
手間を考えれば安い物だろう。
のんのんに戻りシャワーを浴びると8時頃まではテレビを見て過ご
した。それから夕食を食べる為に外出した。
最後の夜だし、どこかお酒の飲めるところがいいな。
函館の商店街の方をブラブラ歩く。途中酒屋がやっている立ち飲み
屋を見つけたが、中ではおっさんが盛り上がっており、とても入れる
雰囲気ではなかった。他には何件か北の海の幸を食べさせてくれる
店があった。しかし、それは今朝充分食べたからなぁ。
結局僕はホルモン焼き屋に入ることにした。チラッと中を除くと、もう
もうとした煙の中若いサラリーマンやカップルが賑やかに飲んでい
て、とても楽しそうに見えたのだ。
ここならまた何か起こるかもしてない。そして、ホルモンは陸前高田
のスーパーで見つけて以来の因縁である・・・・。
ガラッと戸を開けて中に入ると、おばあさんが水を持って来てくれた。
僕はホルモンとビールを注文した。ややあって、ホルモンが登場。
うむ、この量なら安い物だ。早速焼き始める。
まわりには一人で飲んでいるおっさんもいる。地元の人じゃなさそう
だし、出張で函館にきたのかな?
ホルモンが焼き上がる。ビールと共にパクリ。うむ、まずまず。
・・・・・・・・・・・・・・・・
しかし、この店は想像してたのとは少し違うなぁ。悪くはないんだけど
、普通過ぎるんだよな・・・・・・・・・・。何かが起こるということはなさそ
うだ・・・・・・・・。
それでも結局ホルモン2皿にビールと焼酎、締めにご飯を食べ、外へ
出た。お腹はいっぱいだけど、何か物足りない・・・・・・・。
そうだ、さっき見つけた立ち飲み屋に行ってみよう。ダメならダメで出
てくればいいし。僕は軽く中を覗くと
「こんばんは」
と言って入っていた。
するとおっさん達はいっせいにこちらを向いて
「あ、ど~ぞど~ぞ!」
と中に通してくれ、僕の分のスペースを空けてくれた。やっぱり来て
正解だったと思った。
店は狭く、カウンターに10人も立てば一杯になってしまうほどであ
る。客層は多分地元の人、おっさん、それに熟年夫婦、そしておば
ちゃん。
メニューは生ビール300円、チューハイ150円、日本酒150円、
ツマミは春巻き150円、ナッツ100円、ニラ玉200円等々。とにか
く安い。お腹は一杯であったが、生ビールを注文した。
おばちゃんがカウンター越しに渡してくれたビールはグラス一杯に
注がれ、明らかに中ジョッキより量が多かった。
「安いですね」
と言うと
「うちで仕入れてるから。アサヒスーパードライよ」
と教えてくれた。ビールは冷えていて、とても美味かった。
こういう店の自然な流れで、僕は隣にいたおじさんと話し始めた。
おじさんは地元の人であるが、ここに来るのは初めてらしい。話し
みると、とても品のいい人であった。いつしか話は「正直である事の
大切さ」という深いテーマになり酒を重ねつつ議論を交わした。
こんなところで見知らぬおじさんと議論をしていることが面白く、きっ
とそれはおじさんにとっても同じにあったに違いない。
しばらくするとおじさんは、もし良かったら、と言ってナッツを僕にく
れ帰っていった。
次は店のご主人と、僕の右側にいたおばさんが話し相手になって
くれた。ご主人は昔自転車で過激な距離を走ったことのある人らし
く、僕よりよっぽどすごい体験をしているのであった。
そのうち店のおばちゃんも客の世話を焼きつつ酒を飲み始め、かな
りご機嫌になってきた。ガチッとした感じのご主人とこのおばちゃんは
、きっといい夫婦なんだろう・・・・・・。
僕が店の棚にある小田和正の「個人主義」というアルバムを見つけ、
それについて指摘するとなんとおばちゃんはラジオを消してCDをか
けてくれた。
まさか函館の立ち飲み屋で小田和正を聴けるとはな・・・・・・・・。
雰囲気と少し違うけど、最高。おばちゃんも口ずさんでいるし・・・・・。
そのうちご主人が、
「美味いイカ刺し食べさせてあげる」
と言ってイカを捌き始めてくれた。捌くといっても、小さなまな板の上で
果物ナイフのような包丁で。しかし手際が素晴らしくよく、イカは見る間
にイカソーメンに変身した。生姜醤油で頂く。
うん、めっちゃ美味い。
ご主人曰く、朝市で出しているような水槽から揚げたばかりのイ
カは身が硬く、甘味が少ないとのこと。だから半日ほど置いたも
のの方が刺身としては美味しい、という事を教えてくれた。(ちな
みに値段は300円。朝市はぼったくりだと言っていた)
なるほどね~・・・・・。
朝市ぶらついているだけじゃそんな事は分からないわ。
しかしホントにここは雰囲気いいなぁ。何で一軒目にここに入らな
かったのか後悔した。
その後地元の人とワイワイ飲み、結局閉店の11時まで飲んでし
まった。店じまいするご主人に、また来る事を約束し僕は外へ出
た。
旅の最後を締めくくるには相応しい夜であった。
僕はだいぶ酔っ払いながらのんのんに帰り、コテッと寝てしまった。