タクシードライバーとして機能してから早くも4ヶ月が経過して 我ながらなかなか サマになってきた気がしている。

愛車の窓はいつでも閉めきって南極の如く 温度を調整していたので 汗一滴流す事もなく 本日 気が付けば 秋の気配。

昨年に引き続き 大好きな夏は いつの間にか
何処かへと消え失せていた。

鼠色の なり損ないの入道雲が残り僅かな夏のカウントダウンを当たり前のように警告してやがる。

必然という現象なんて 何の保証も無いって思う。そう…
一年後 また 夏を生きれる約束を 一体何が保証してくれると云うのだ。
だからこそ 今この瞬間が 頬被りするほどいとおしい。

幾つもの過ぎ去った夏の出来事を 墓石の底まで執念深く連れていきたいから ベストを尽くした
今日の俺を褒め称えて呑んだくれて眠りたい。

今日は呑んだくれて眠りたい。
本日は初めて早く仕事を終えた。

いつもの如く 夏空の青を確認する。

遠く東の果てに生まれたての入道雲と頭上には鱗雲。アンバランスな風景である。今年の夏は 大好きな夏の映像を脳裏に焼き付ける事もままならず伸ばした両腕からすり抜けていきそうだ。

死の宣告を受けても尚 不眠不休のペースを止める事もなく継続している。今 言われるがままに 全身全霊を止めてしまった時 自身の人生全てを否定してしまうような気がして その信念のままに 流れているような感じ。

あとは 風任せ。

結局 なるようにしかならないなら 全力を尽くすまでだ。

今の俺はタクシードライバーというよりも狩人とか漁師という代名詞のほうが似合っているのではなかろうか。秒単位の駆け引きに痺れ捲っている。今だから記すがサービス業は絶対に無理だと決め付けていたのだが このタクシードライバーとしての毎日の楽しい事。
中毒患者になってる。

恐らく日本中で俺程この仕事をエンジョイしてる人間は居ないって位 楽しくて仕方ない。

夜中の俺の102号車は運転席に2つの赤い光が浮かび上がっているに違いない。まるで獣のように眼球を光らせ 獲物を狙っているからな。

生きる為に猟(漁)に出る。その為には 全力を出さねばならない。

そうでなければ 獲物に対して失礼だ。

全ての仕事に共通するであろう 全力を尽くして
ラリッた脳裏に映る青はとてつもなく 深い青であり 貴重なのかも知れない睡魔を吹き飛ばしてしまった。

今年の夏は永遠に続くような気がしてままならない。
天神から二人の客を乗せて 南へ向かっている。
若僧の分際で偉そうに座席でふんぞり返り 顎で俺に指図をしている。
勿論 言葉の使い方など知る訳も無く
(おじちゃん!南福岡駅まで2千円で行ってくれんね。)などと とぼけた事を当たり前の様に口に出している。

信号待ちのバス停に暑さに参った顔をしている老人が見える。

全く理不尽な景色である。

丁重に(無理だぜ。バカ野郎。)とお断りして
また 渋滞している日赤通りを走り出す。

こんな 日本の未来を創る為に あの老人たちは
戦後の歴史を築いてきたわけではなかろう。

無料で目的地まで乗せてあげたい人たちが たくさん映し出されている。
俺の夏は加速を続けて未来へと確実に進んでいる。日本の未来の為に きっちりと規定の料金を貰い 若僧たちを目的地で下ろした。 窓を開けて蝉の声を聴きながら 複雑な感情を街に置き去りにして 静かにアクセルを踏み込む。

唇を真一文字に締め上げて 理不尽な景色から 目をそらす事をやめないで生きていく。

1タス1イコール2。みたいに 答えは必ずあるはずだ。色んな要素を代入して きっと素敵な未来というものを 見つけ出してみたい。
俺にとっての 色んな要素とは 恐らく たくさんの経験ではなかろうか。
どんな理不尽にも立ち向かわなければいけないと覚悟を決めた。