今朝のコーヒーは、

いつもより少し甘く感じた。

豆を変えたわけではない。


淹れ方も、

いつも通り。

いつものカップに、

いつもの黒いコーヒー。


湯気が、

細く上がっている。

ひと口含んだ時、


苦さの奥に、

丸い味があった。

あれ、少し甘い。

そう思った。


はっきりした甘さではない。

舌にふれた瞬間、

角が少し取れているような感じ。


苦いはずなのに、

今日は少しやわらかい。

カップを持つ手に、

あたたかさが移る。


口に近づけると、

香りが先に来る。

その香りまで、

少し穏やかに感じる。

何を変えたわけでもない。


それなのに、

いつもの朝に、

ひとつだけ違う感じが混じっている。

そのことが、

少しうれしかった。


今日は、

何かひとつ、

いい流れに乗れそうな気がした。

大げさな期待ではない。

何かが起きると決まったわけでもない。


ただ、

朝の入り口に、

小さな明るさがある。

そう感じただけで、

少し動き出しが変わる。


カップを置く前に、

ひとつだけ先に済ませた。

あとでやろうと思っていたことを、

今のうちに終わらせる。


それだけで、

朝の中に少し余白ができた。

もう一口飲む。

苦さの奥に、

まだ少し甘さがある。


さっきより、

今日が近く感じる。

これと言って、

変えたものはない。


ただ、

今朝のコーヒーは、

いつもより少し甘く感じた。


その一口で、

今日を少し楽しみにしている自分に気づいた。