映画『響ーHIBIKI』の感想

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第400話 2018.9.19

 

  狂気を少しも含まない天才は絶対にいない。

                 アリストテレス

 

 

 現在公開中の日本映画『響ーHIBKI』を劇場で観た。

 期待を裏切らない素晴らしい作品であった。

 主演の平手友梨奈の演技はまさに圧巻。

  共演した北川景子は、完成披露の舞台あいさつで、つぎのような絶賛の言葉を口にしている。

          ネット記事 から

    【引用開始】

北川は「何をするにも“している”感覚がないところがすごい。カメラの前に立つと目の色がかわって、ぐっと集中している。響のキャラクターを勉強してきているように見えるんだけど、そんな感じが無いし、『そういう(スイッチが入ったような)感覚がないです』って(言っていた)。役が憑依したという感覚もなく、自然にやられているんですよ。それがすごい。私達は役に入ろうと思って必死にやっているのに(笑)。そういう感覚がないところがすごい」とその天才ぶりに感嘆の声を上げた。

    【引用終了】

 

 北川の「すごい」という言葉は、実によくわかる。学問でも芸術でも超一流の人物は、「努力している」という感覚なしに並外れた鍛錬をしているものだ。実際に、そういう方を何人も存じ上げている。また剣道修業の目標とする境地は「無心」である。それが最初からできてしまう人間を天才というのであろう。

 

 

    yahoo 紹介記事

 

 2017年に漫画大賞を受賞した『響~小説家になる方法~』の映画化。

 テレビドラマや映画で映像化された作品が、原作と同等以上の力を持つことはめったにないのだが、この作品は稀有な成功例の一つである。日本映画史に残る傑作になるのではないかと思われる。

 

  [あらすじ]

 スマートフォン・SNSの普及により、活字離れは急速に進み、出版不況の文学界。そこに現れた一人の天才少女、彼女の名は『響』(平手友梨奈)。15歳の彼女の小説は、圧倒的かつ絶対的な才能を感じさせるもので、文学の世界に革命を起こす力を持っていた。文芸誌「木蓮」編集者の花井ふみ(北川景子)との出会いを経て、響は一躍世の脚光を浴びることとなる。

 

しかし、響は、普通じゃない。彼女は自分の信じる生き方を絶対曲げない。世間の常識と慣習に囚われた、建前をかざして生きる人々の誤魔化しを許すことができない。響がとる行動は、過去の栄光にすがる有名作家、スクープの欲だけで動く記者、生きることに挫折した売れない小説家など、様々な人に計り知れない影響を与え、彼らの価値観をも変え始める。一方、響の執筆した処女作は、日本を代表する文学賞、直木賞・芥川賞のダブルノミネートという歴史的快挙にまで発展していく。

     以上 (上記ブログ記事から引用)

 
 また、エンドロールで流れる主題歌『角を曲がる』は歌詞も曲も秀逸で、映画の感動をより高めてくれた。
  
 角を曲がる』 歌詞
    
 

   【平手友梨奈についての過去記事を編集】

 

 ちょっと前まで、AKB48等のいわゆるアイドル・グループには興味がなかった。

 私とほぼ同世代の秋元康は天才的な商売人だと感心はしていたし、彼の書く歌詞は恐ろしく器用だと認めてもいたけれど、心を揺さぶられたことはなかった、のだけれど……

 

 2016年の春先のことである。

 自宅でぼんやりテレビを眺めていたら、秋元康がまたまた新しいアイドル・グループを誕生させた、というニュースが始まった。

 AKBの三番煎じ、しかも乃木坂の次は欅坂、とくれば食指なんか動きようがない。

 それでチャンネルを変えようとしたのだが、デビュー曲のタイトルが『サイレント・マジョリティ-』だという話になって、少し興味をそそられた。

 

 1969年、アメリカで若者たちによる反体制運動の嵐が吹き荒れた時、ニクソン大統領が演説で使ったこの有名な言葉を、秋元は何を思ってアイドル・グループの歌詞なんかに使う気になったんだろう……   「サイレント・マジョリティ」解説記事

 ちょっと真剣に、テレビから流れて来る言葉に耳を傾け始めた。

 

 すると、この曲のダンス(パフォーマンスかな)の振り付けを担当するのは、世界的なダンサーの上野隆博 (TAKAHIRO)なる人物だという紹介に続いて、彼が20人の少女たちに向かって真剣に語っている姿が画面に現れた。

 

僕が君たちに教えられるのは形だけだ。心を入れるのは君たちしかいない。まず、歌詞の言葉にこめられた意味を深く理解すること。そして、そのメッセージがどうしたら観客に伝わるか、徹底的に話し合いなさい

 そして、少女たちだけでこの曲の歌詞について長時間熱く真剣な議論を繰り返し、遂に、「徹頭徹尾、一切笑顔を見せない」という、この種のグループでは前代未聞のパフォーマンスにたどり着いた、という解説が入った。

 

 これって、今、日本の教育界を席巻しているアクティブ・ラーニング(主体的・対話的で深い学び)の理想形ではないか……

 思いがけない展開に心が騒いだ。

 そのうちに歌が始まったのだが、それまでのアイドル・グループの感覚とは全く異質だった。

 若者受けを狙った新しい楽曲を聴いて、本当に久しぶりに興奮した。

 

         『サイレント・マジョリティー』の歌詞と動画

         https://www.uta-net.com/song/205640/

 

 そしてアイドルグループでは史上最年少・14歳のセンターだという平手友梨奈の印象は強烈だった。

 特別に美人というわけでもなく、歌やダンスに圧倒的な力があるとも思えない。

 しかし、醸し出すオーラが凄かった。

 この曲以降、欅坂46の楽曲の振り付けは、ほとんど(全てかも)上野が行っている。

 

 インタビューに答える平手の眼からは、絶望と虚無と諦念をはらんだ強い意思が感じられた。

 それは、山口百恵や中森明菜達も持ち合わせていたが、彼女の眼の力はかつてのカリスマアイドル達を凌駕しているのではないかとさえ思われた。

 

 秋元がこんな大物にアイドルグループの振り付けを頼んだのも、

 上野が引き続き欅坂の振り付けをやり続けたのも、

 もしかしたら平手友梨奈という存在があったからなのかもしれない……

 

 上野は平手をこんな風に評している。

 「彼女のスゴさは、スイッチが入ると普通の人とは違って見栄や恥を気にせずリミッターを外して『感情の人』になれること。だから人の心を揺さぶる」 

  多分、「リミッターを外せる(外れる)」というのは天才の共通して持つ特質なのであろう。

 

 作家の柳美里も、こんな言葉を発している。

「平手友梨奈はこの30年で最もインパクトのある女の子。光の中で闇を吸い寄せるような目力がある。絶対的な主人公でナウシカに似ている」

 
 
 
語るなら未来を』 公式MV 第2作『世界には愛しかない』のカップリング曲

 

 

特にこの曲のダンス・パフォーマンスは、これまでのアイドルグループのものとは全く異質だ。
天才ダンサー・上野は、ほとんどのメンバーがダンスの経験に乏しい
グループの持っている可能性を最大限に引き出した。