2022.03.05
統合失調症の利用者さんで、いつも「歯がグラグラしてませんか?」「僕の手は骨折していませんか?」「足は折れてませんか?」と毎日、何度も会うたびにスタッフに聞いて来られる方がいる。
変わった方だなあとか、統合失調症特有の挙動不審なのかなとか、ふんわりとした理解しかしていなかった。
歴代のスタッフによる、その人に関する過去の「記録」を読んでも、ずっと変わらず同じことを繰り返されていた。
薬の影響もあるのだろうかとずっと思っていたが、昨日、突如閃いてあるキーワードで検索したら「口腔内セネストパチー」という単語にたどり着いた。
ほかに症状がなく、この症状だけが出ている人も多くいるのにも関わらず、独立した病名ではなく「統合失調症の幻覚症状のひとつ」として対処されているケースが多いのですね。
今は身体表現性障害とか、解離性障害とか、違う病名を診断されることもあるみたいですが。
まてよ。
これ、結構重要なことではないだろうか。
決して病名を増やせばいいと言うわけでもないけれど、「統合失調症」との差別化をするためならば違う病名をつけて貰った方がまだましなのかも知れないと思う。
統合失調症の病名をつけることで、医師は多剤大量処方への罪悪感がなくなり、自分の無力を正当化するからだ。
悲しいしやるせないけれど、不治の病ということにすれば治さなくていいので、多くの医療、看護、福祉の人間がその人の訴えを軽視するようになる。
多くの医療者が、統合失調症という病名を本来とは違う使い方をしているように思う。
本来は多くの人が治る病気なんですけどね。
医者が治すことを諦めたら統合失調症ってつけるんだよって言ってた先輩がいたっけな。
だから、統合失調症ばかり診断する先生は、患者を治す気がないんだよ、とも言っていた。
つまり先生は「私は悪くない、患者の病状が重いから治せないんだ」と言いたいんだって。
なるほどと思ったものだ。
さて。
この方が診断当時、統合失調症と診断されたのは、セネストパチー(のみ)が出たからなのだろうか。
それとも、ほかの統合失調症の症状もあってセネストパチーも(一緒に)出たのだろうか。
もしセネストパチーが出ていることだけを理由に統合失調症と診断されていたのなら、これは、医者ガチャ失敗例だなと思う。
医者ガチャ。
精神科は特に、医者ガチャの傾向は強い。
主治医次第で、その時の時代で、流行りで、運次第で、診断名が変わるという事実。
しかし、親ガチャと違って医者ガチャは自分で選べるし、いつでも変えられるというのは重要なポイントではある。病院に行かないという選択もある。
精神薬を飲みはじめたら、やがて誰でも統合失調症になる。
本当は統合失調症ではない患者に薬を飲ませて患者を作っているケースも実はかなりある。
精神薬の副作用を一つ一つ調べてみると、統合失調症の症状そのものであるのだから。
特にその人の主治医は誰でも統合失調症にする医師として有名な方なのである。
或いは、セネストパチーがその人が精神薬を飲んだ後から出た症状である可能性、つまり薬害である可能性はあるのだろうか。
うーん、あるだろうけど、
検証しようがないか。
とにかく、
当該利用者さんが、奇妙な言動を繰り返される裏には、長年の苦しみがあったんだなあと今更ようやく理解出来た。
今まできちんと理解してあげられずに申し訳なかったなあ。
この方は20年以上施設にいるけれど、この人の言動を「困ったことだ」「変わった人だ」という以外に、本人の不快、苦しみの結果の行動であると理解して接してくれたスタッフはどのくらいいたんだろうか。
いくら表面上優しく接したところで、理解がない寄り添いに意味はないでしょう?
精神科医にしろ、看護師にしろ、福祉のスタッフにしろ、その視点を持てないのならばプロではないよなあ。
だから、気がついた人間が周知しなくてはならないよな。
6年前、福祉のズブの素人としてこの職場に入った私に、こういうことを教えてくれる先輩は1人も居なかった。記録にも特に何も書いていない。
まあその、つまり…そういうことなのか。