ヴィヴィアン・リー主演の映画も、原作たる本作も、恐らく世界中で何十億人の人々がその名を知っていると思われるくらい有名な作品。私も若い頃映画を視た記憶があります(英語の勉強も兼ねて、古い海外映画にはまっていたのです)。
そして今でも、この戯曲は世界中の舞台で上演されています。
昭和のロック曲でも『欲望という名の**』という歌詞がよく登場していました。本作に影響受けたのは明らか。欲望、Desireという言葉は、若者の心をつかむのだと思います。よい野心は持っていたほうがいいと思います。
さて、本作。
1947年つまり大戦の2年後、戦勝国アメリカの南部の海運と工業が盛んなニューオーリンズは、蒸し暑くて、貧しいけれど、老いも若きも活気に溢れた、人種が入り交じった、労働者の街です。
ストリートミュージシャンが奏でる退廃的なジャズ、ブルースが街中から流れてきます(ト書きにあります)。
本作のオープニングで、1階の玄関前から夫が2階にいる妻に、肉の塊が入った袋を投げ渡すシーンがあります。映画でも有名なシーンですね。笑っている妻ステラには、こういう荒々しさも、頼れる男性、と映るのでしょう。我々一般人にはこの野獣性は真似できません。
そんな街に、白のスーツにふんわりとしたブラウスを優雅に着こなし、真珠のネックレスとイヤリングに白の手袋と帽子の、明らかに場違いの女性、ブランチ・デュボアが路面電車から降りて、尋ねます。
●「欲望」という名の電車に乗って、「墓場」という電車に乗り換えて、六つ目の角で降りるように言われたのだけど-------「極楽」というところで。
こんなセリフ、よく考えつきますね。天才です。
映画では、路面電車の行き先掲示は「DESIRE」となっています。
登場人物はシンプルです。
姉:ブランチ(27)
妹:ステラ(22)、その夫:スタンリー(不明)
地方都市の富裕層の出で、常に美しくありたいと願うお姉さんが妹夫婦宅にやってきて、当たり散らします。アパートはボロで狭いし、義弟はポーランドからの移民で、野蛮で遊び人だし、周囲はろくでもない野生児だらけだし、一体全体どうなってんのよ!私は上流階級のレディなのよ!と上から目線です。
●誰かしら、そこに来たのは?私の<バラの騎士>ね?まず、私にお辞儀を!それから、贈り物を!
姉vs義弟の間で紛争勃発です。
ところで、ブランチが義弟を「ポーランドからの移民」と見下すシーンが複数回あります。恐らくこれが当時のアメリカの社会情勢なのでしょう。保守的富裕層VS移民という構図です(そして、没落する上流階級、勢いのある労働者階級、とシフトしていくのも、時代風刺なのでしょう)。
でも何だか変ですね。
上流階級のはずのブランチは、カネも持たず、ウイスキーを浴びるように飲んで、煙草スパスパ吸っています。明かりをいやがります。肌を見せたくないのでしょう。本当に上級階級ですか?と疑いたくなります。
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徐々にブランチの秘密が明かされていくのはミステリー小説みたいです。
読者(私)は、次に何が明かされるの?と先が読みたくてしかたありません。秘密を小出しにしていくのは小説も戯曲も同じです。
ブランチの秘密:
① 土地、屋敷は少しずつ切り売りされ、最後は屋敷が抵当に取られた(ゆえに妹を頼った)。
② 夫の自*。
③ 多くの男性に身を任せ、高校生をも誘惑した事が知れ渡り、田舎にはいられなくなった。
ニューオーリンズに来た直後に若い男と結婚話まで進んだのに、↑これらの秘密を知ると、彼は去って行きます。
ブランチの究極の「欲望」は、誰かに守られたいというものです。いつも守ってくれる誰かを探しています。同情はします。自助努力ではどうしようもない、誰かの援助がないと生きる術がない、そういう弱い女性、妹ステラも同様、多くの女性がそういう境遇だった、時代のせいでもあります。
その姿は狂気的です。
妹も距離を置いてしまいます。
徐々に、ブランチの立場は悪くなり、義弟との関係はますます険悪になります。ただ、義弟は妻の実家の資産を狙っていた不届き者なわけで、目算が狂って逆ギレしているのです。元々ショート・テンパーな男ですから、その荒れようは手が付けられません。
この義弟スタンリー、野蛮人なのですが、許せないことは徹底的に追求する、一本気なところがあります。この義弟はとうとう姉を相手に不同意な性犯罪まで起こしてしまいます。それも「欲望」。
その後の姉ブランチは読むのが辛くなるくらい、精神異常に陥ってしまいます。最終的に、義弟による行為が、最後の望みだったニューオーリンズでの<誰かに守られた>生活、という欲望を崩壊させました。
精神科医のお迎えがきました。
ブランチの最後の一言
●(医師の腕にしっかりすがって)どなたかは存じませんが、私はいつも見ず知らずの方のご親切にすがって生きてきましたの。
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欲望は叶わないもの?
人間誰しも、欲望はあるわけで、叶えられない欲望ばかりではないと信じたいものです。
(写真は表紙とWikipediaから引用)


