あなたの職業は?
ジェントルマンだ。
格好いいですね。これが言えるのは英国紳士の特権なのでしょう。
19世紀の英国を代表する文豪。1859年執筆の名著。
It was the best of times, it was the worst of times.
それは最良の時代であり、最悪の時代だった。
という有名な一文から始まります。
フランス革命を題材とした歴史小説でもあり、叙情文学でもあり、660頁の長編でありながら、ストーリー展開が速く、読者を退屈させません。現代の作品だと云っても違和感なく、名著とはそういうものかも知れません。
裏表紙から引用:
●フランスの暴政を嫌って渡英した亡命貴族のチャールズ・ダーネイ、人生に絶望した放蕩無頼の弁護士シドニー・カートン。二人の青年はともに、無実の罪で永年バスティーユに投獄されていたマネット医師の娘ルーシーに思いを寄せる。折しも、パリでは革命の炎が燃え上がろうとしていた。時代の荒波に翻弄される三人の運命やいかに?
フランス革命という歴史上の大事件の最中に、一人の女性と二人の男性の「運命」に注目して読みます。
「医師の娘ルーシーに思いを寄せる」二人の男性、
亡命貴族 ダーネイ
弁護士 カートン
二人は赤の他人ですが、顔がうり二つなのです。これは第一章で余りにもさりげない一文で語られますが、これがとんでもなく大きな出来事の伏線になっているのです。
ルーシーは亡命貴族ダーネイを夫に選び、子宝にも恵まれます。
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さて、
18世紀後半のイギリスとフランスが対比的に描かれます。
イギリス:平和で安定した国家
フランス:革命前の封建制、革命後のカオス
フランスの描かれ方が酷すぎるのでは?と感じるくらいです。度を超えた飲酒、庶民の貧困、最悪な治安、劣悪な衛生状態、役人の怠慢、貴族の横暴・・・。史実なのでしょう。統治不能な状況です。
そして1789年、フランス革命が起こります。
狂信的な市民の暴力、革命政府による理不尽な強健発令。裁判所もまともな審判になりません。貴族の粛正は、毎日何十人とノルマの様に数えられ、無実の良心の持ち主すらも血に飢えた市民に糾弾されます。本作は、貴族側に立つわけでも、革命自体を否定するものではありませんが、行き過ぎた暴挙は断じて許されるものではないという強い論調で描かれています。
「ごきげんよう、市民のご婦人」
「ごきげんよう、市民の紳士」
ムッシュー、マダムといった身分制度を廃止して、市民に統一したのですね。革命への忠誠心や、生き残りの貴族を洗い出す踏絵みたいな目的もあったようです。多少の嘲りも込めて、滑稽に描かれています。
さて、
主人公の一人チャールズ・ダーネイは市民思いで良心的な貴族です。既にフランス伯爵の身分を捨て、ロンドンでルーシーと幸せな家庭を気づいています。ところが、元使用人が投獄されたという知らせが入り、彼らを救うという使命を抱いてパリに入域し、収監され、極刑を言い渡されます。
そこで、昔の恋敵、シドニー・カートンが登場するのです。
↓この名言はカートンを評したもの。
●男が本気でひとりの女を愛して、失い、彼女が妻となり母となった後も変わらず純粋な思いを抱き続けると、不思議なことに、決まって彼女の子供が男に同情を寄せる。
いい話です。折角なら彼女自身に同情して欲しいですが、子供が同情してくれます。
これ以上の詳細はやめておきますが、
最初の伏線----二人はそっくりさん----が回収されるシーン:
●もう二度と見ることのないイギリスで、俺の命を捧げた人が、平和で、有意義で、幸せで、豊かな生活を送っているのが見える。(中略)今していることは、今までにしたどんなことより、遙かにいいことだ。これから行くところは、今までに知っているどんなところより、遙かに素晴らしい安らぎの地だ。
若い頃から好きだった、一度は求婚した女性が、人妻となり母となっても、その女性を愛し続け、その人のためなら、その人の夫の代わりに命を差し出す男。
思い返すと、
身代わりとなったカートンがルーシーに告白するシーンは多くの紙面を占めるのですが、夫となったダーネイの告白シーンはないし、熱く愛を語る回数も少ないのが気になっています。ストーリー的に不要だった(夫なのですから)のは判ります。愛の男カートンを描くにしても、潔いくらい極端だったという読後感も覚えます。
素晴らしい名作でした。
(写真は表紙・挿絵から引用)


