お店を任されて1年、とある夏の日
昼時を過ぎて誰もいない店内に、ひとりの男性が入ってきました
その男性は 塩ラーメンを半麺で注文されました
僕はそれを作り始めます
その男性が入店してから、ずっと拭えない不可思議な感覚…
ラーメンを作りながら、その男性をもう一度チラリ…
…
……
………
石神さんじゃないの!?
(そう、石神さんとはラーメン王石神秀幸さんの事である)
まさかこんな所のこんな店に…
(僕が任されていた店は埼玉県内のとある田舎にありました)
ラーメンを作り終え、その石神さんらしき男性にお出しした後
裏口から駐車場をのぞくと、品川ナンバーのBM発見!
あの風貌に品川ナンバーの車…間違いないよな…
なんでこんな場所のこんな店に現れたんだろ???
頭が混乱する中、それは序々に「どう評価されるのか」の期待と不安に変わります
こちらの混乱具合をよそに、その石神さんらしき男性はあっと言う間に退店
丼をのぞくとほぼ残されたラーメンが…
オレのラーメンそんなにダメか?
深いため息をつきながら自信がくずれさった瞬間でした
それから3日後…
お店に一本の電話が入りました
電話の主は出版社を名乗ります
「うちの石神がそちらを取材したいと申しておりまして」
… えっ
……石神
…やっぱり石神さんだったんだ…
…つーか取材
なんで
2口ぐらい食べて残されたのに
評価されたの?という嬉しさと、がっつり残された事実が頭の中をぐるぐる巡りながらも
「こちらこそお願いします」と返答する僕
(あとからラーメン事情に詳しい人に聞いた情報によると、本に載せる店を選定する時には一杯につき数口しか口にしないみたいです。たしかに何軒もまわって完食してたらきついですよね)
この石神本は2005年版として2004年11月に発売されました
自分が任された店が掲載された
「石神ラーメン2005」
この本を見ていた時、濃厚鶏白湯の道へ進むきっかけをつかむのです
つづく