堕させません!ウチで育てます! | アスペルガー症候群の娘が妊娠しました 〜回想録です

アスペルガー症候群の娘が妊娠しました 〜回想録です

大学生シンママになったアスペルガー症候群の娘。

妊娠から出産、出産から今までの育児。
その間の相手家族とのやり取りなど、
周りの人にはあまり話せない事が沢山。

“王様の耳はロバの耳” 的な回想録になりますが、
ツラツラと綴らせていただきます。

プリンスホテルの高級料理店。

だいぶ時間が経ったのか、
客数も減り 辺りが少し静かになって来た。


シュン ママは続けて言う。

「シュンは亜香里ちゃんの事が大好き過ぎて、
 勉強が手に付かないくらいなのよ。

 今まで塾をサボった事なんて無かったのに、
 亜香里ちゃんと付き合うようになってから
 平気でサボるし、夜中まで一緒にいるし。

 最近は、良くウチに泊まりに来てるのよ」



「あぁ、すみません。
 それは私が言ったんです。

 どこのラブホテルだか分からないけど、
 そんな所にしょっ中行っていたら、
 何かの事件に巻き込まれる危険があるし
 女の子だから心配だったので、

 シュン君の家に泊まらせてもらうか
 ウチに泊まってもらいなさい。
 って 私が言っていたんです」



「そうよね。女の子のご両親にしたら
 とても心配だものね。

 でも、私も主人も娘が出来たみたいで
 とても喜んでいたのよ。
 主人なんか亜香里ちゃんが遅刻しないか
 心配で、電車の時間まで調べたりして。

 それに、私の母も亜香里ちゃんが大好きで
 ウチのマンションに住んだら良いのにって。
 亜香里ちゃんの為に一部屋空けておくって
 言ってるのよ」


和やかな雰囲気で会話が続いていた。


「ありがとうございます。
 亜香里も、シュン君のお母さんや
 ご家族の事を素敵な人達 って言ってました。
 
 私は、前にお付き合いしてた
 立教大の子の事が真面目で誠実で
 とても気に入ってたのだけど

 亜香里はその子のお母さんの事が
 あまり好きになれなかったようで、

 家族になるなら
 シュン君のお母さんの方が良いなって
 言ってるくらいです」


そう笑顔で返すと…


突然、
シュン ママが強い口調で話題を戻してきた。

「まぁ、とにかく!
 亜香里ちゃんもシュンもまだ若いんだし、
 2人の将来の事を考えて
 私は産まないでって言ってるの。
 
 ウチも熱心なカトリック教徒だから
 本当は堕したくはないけれど
 産まれない事を決めている魂もあるのよ」


数日後に分かったのだが、
先程の「立教大の子」 と、何気なく言った言葉が、シュン ママの癇に障ったらしい。


小さい頃から勉強ばかりしていて、医大受験をするようなシュンは、

立教大よりずっと上の学力だろうと、私が勝手に思い込んで話していたのだが、
実は、シュンの学力はもの凄く低いらしい。

なのに、前の彼氏が立教大だなんて、
息子を侮辱された!と感じたそうだ。


「私も昔エホバの証人だっただけで
 もうキリスト教でも何でもないですけど、

 まだ胎児だって言っても、既に1つの命で、
 その命を大人の都合で
 故意に奪うべきではないと、

 私も主人もそう思っているので、
 亜香里には何がなんでも産ませるつもりです」



「そう!分かったわ。
 でも、ウチはさっきも話したように
 医大受験の事もあるし、立場もあるから
 認知は簡単にはできないし、

 医者になるまでには
 お金がもの凄く掛かるから
 シュン以外にお金は掛けられないの。

 だから、堕した方が良いと言ってるのだけど
 ウチにどうしろって言うの?」



赤ちゃんはこちらで育てるので大丈夫です。
 そちらの家の事は、
 そちらで考えてくれれば良いんじゃないですか?
 
 認知したくないなら しなければ良いし、
 お金も出したくなければ、出さなければ
 良いんじゃないですか?

 数年後、
 まだシュン君と亜香里がお互い好きなら
 その時に、結婚するなり何なり
 考えれば良いんじゃないですか? 」



「そう。
 お互いの意見は、全く合わないみたいね」

 
もうお互い話す事も無いので
店を出る事にした。

会計をしながら
シュン ママが背中越しに言う。


「まぁでも、
 今日は、貴方と話せて良かったわ。
 これで話は終わったから。

 もう、父親達は会わなくてもいいわよね」



はぁ?!
とんでもないわ!
たった私達女2人だけの会話で全部済ませて終おうだなんて!そんな簡単な事じゃないじゃない!
謝る素振りすら見せないし!
何、逃げようとしてるの?!


とてつもなく苛立ったが、
冷静さを欠かないよう、ゆっくり返答した。


「いいえ。
 今日の話しはあくまでも
 私個人の意見を言っただけなので。
 近いうちに改めて、
 父親同士 子供同士も一緒に
 話し合いをします」


「あ、そう」


最後の最後まで
自分の思い通りにならなかったのが
面白くなかったのだろう。

横目でチラッとこちらを見ると
冷たく背中を向け
先をスタスタと歩いて行った。


「あ、そうだ。
 シュンが明日お宅にお邪魔するって。
 でも、言葉も態度も本当に子供で
 ご家族に会わせるのが恥ずかしいくらいなの」

クルッと振り返って
笑顔でシュン ママがそう言う。


「もう何度か遊びに来てくれていますので
 大丈夫ですよ」


「え!あの子、
 お邪魔したことあるの?!」
慌てて言った。


「ええ。
 主人や私とも、一緒に食事に行った事も
 何度かありますし」


予想外だったのだろう…口をつぐんだ。
…が、一呼吸すると また笑顔で言った。


「明日は失礼の無いよう言っておきますので
 宜しくお願いしますね。
 ご主人にも宜しくお伝えください」
 

「分かりました。
 明日、お待ちしてます。
 今日はありがとうございました」

笑顔で別れた。


シュン ママの態度が
クルクル変わるので疲れた。
なんだかコントロールしようとされてるみたい…


自己愛性人格障害?

はぁ……。


電車の中でも
さっきまでの会話が頭の中でグルグルし
何度も溜息を付いた。




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※大筋の記事はこちらです。

最初の記事。
アスペルガー長女が妊娠

娘が堕胎を考え始めた出来事。

娘が赤ちゃんを産む事を決めた出来事。