こちらの2冊を読了いたしました。

こちらは女性の社会学者、水無田気流氏のエッセイです。女性の活躍社会における少子化問題などを論じています。
女性ジャーナリストの草薙厚子氏による一冊です。

同著者の作品では、こちら↓も読了させて頂いています。
日本では「不妊治療」への認識が広まっており、生まれてくる子供の約21人に1人が生殖補助医療で誕生しているそうです。3組に1組の夫婦は不妊を心配したことがあり、 実際に不妊治療を受ける夫婦は5組に1組だそうです。

データによると、日本の女性の第一子出産年齢の平均は30歳であり、東京では32.3歳となっています。


40年前から比べても5歳程初産年齢は上がっています。


日本における不妊治療の成功率は以下のとおりです。

不妊治療から出産に至った割合は30歳で20.6%、 35歳で18.1%、40歳で8.8%、42歳で4.4%、45歳では0.8%となっているそうです。

日本の不妊治療における妊娠の確率は、世界から見てもかなり低い位置にあります。その理由としては 日本の晩婚化に伴い、不妊治療のスタート時期年齢が 世界と比較しても 遅いということが理由となりましょう。(不妊治療の4割が40代以上)

不妊治療を希望する 40代夫婦に、「 妊娠の確率は1割ないですが、それでも大丈夫ですか?」なんて、わざわざ告知して、患者を不安にさせるお医者さんもいないでしょうし。

人口比で考えると日本はアメリカの4倍以上の不妊治療を行っており、世界でも類を見ない不妊治療大国です。まさに日本の不妊治療が「コウノトリビジネス」と呼ばれる所以です。( 日本は国際的に見ると不妊治療が世界で一番行われているにも関わらず、その成功率(出産数)は一番低い)

「不妊治療を諦めることができず」、5000万円も治療費注ぎ込んでしまって一回も妊娠していないというご夫婦もいらっしゃいます。(黒田医師)
(データ本書より)


日本ではどの国よりも不妊治療が実施されていますが、どの国よりもその成功率は低いのです(晩婚化の影響)↓。 晩婚化に伴う晩産化は、「卵子の老化」( 年齢とともに原始卵胞の数が急速に減り、卵子の質と量が低下すること)を招きます。

また、日本では不妊と言うと女性側のみの問題のように受け止められますが、実際には 40~50%は男性側にも原因があるそうです。

著者は指摘します。
「アメリカでは 生殖補助医療、特に顕微授精にリスクがあるということは、常識的に知られていますが、日本では顕微授精の危険性が 全く知られていないのではないか」ということです。

P3引用
「欧米では不妊治療技術の一つである顕微授精によって生まれた子供には、自然に妊娠して誕生した子供に比べて、 先天異常の発症率が高い傾向があるということが多数報告されています」( 臨床精神医学研究、黒田優圭医師)


( 2013年 スウェーデンによる250万人50年間追跡調査した結果) 本書p145
● 自閉症スペクトラム障害… 自然出生児と体外受精児の差は認められなかったものの、顕微鏡授精児においては、 知的障害リスクは1.5倍、自閉症スペクトラム障害リスクは2倍となった。また、精巣から手術で取り出した精子を使った顕微授精では、自閉症リスクは4.6倍、知的障害リスクが2.4倍(早産ではさらに倍)となりました。


私達夫婦も不妊治療に通いましたし(体外受精や顕微授精はしていません)、「病院に通ってでも子供が欲しい」という気持ちは本当によくわかります。しかし、治療中に不妊治療における成功率のお話は お医者様から特に伺ったこともなく、リスク的なお話もありませんでした。

こちらの一冊は顕微授精で不妊治療に取り組むご夫婦に対して、冷水を浴びせるような内容となっていますが、日本における晩婚化・晩産化のリスクは、我々も知っておくべきかと思いました。

顕微授精のリスクについては、果たして患者さんに伝わっているのか( 今の医療ではほとんど伝わっていないそうです)、年齢における成功率や障害の出現率など、その辺りも認識した上で、不妊治療に取り組んでいくことが 必要なのかもしれません。

(勿論40代以上でも不妊治療で健康な赤ちゃんを授かる女性は沢山いるけれども、顕微授精リスクの可能性は情報公開されるべきだと思いました)

続く