Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -44ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️



暑中お見舞申し上げます💦💦💦

毎日毎日汗との戦い😫💦
皆さまお元気でしょうか❓

あー、、、でもね
我らがテヒョンさんとジョングクさんは、きっと暑くても暑いとか言ってられない中で頑張ってるのよね泣くうさぎ


さて
今日は普通に記事を書いておりますが
【群青と真紅】の読者さん向けでございます。


いきなりいくよー流れ星


群青真紅
書籍
いります❓

いやね😅
有り難い事に書籍化を希望されている読者さんからコメントやメッセージを頂くようになったので
物語が完結したら、じゃあ作っちゃおっかな〜〜って思っております😁👍

私自身も【群青と真紅】は一冊の本にまとめたいって、思っていたので
どんな形で出版するか色々調べようと思います

ただね
ブログ内では大丈夫だったことが
NGになるのね😭

それは、、、

テヒョンジョングクの名前
めちゃくちゃ著作権に引っ掛かるの
だから別の名前にしなきゃならなくなります😫😫😫😫😫😫😫
テディジョンでもいいよ〜〜
っていうならオッケー👌だけどね

テディはまんま🐻だよ🤣🤣
ジョンも元の名前をまんま半分にしただけだけど(笑)www

いや、ふざけてるわけじゃないのよ驚き


一番いいのはさ、韓国に飛んで
キム・テヒョンさんとチョン・ジョングクさんに名前使用許可の直談判に行くことはなんだけどね😂

宝くじを当てるくらい果てしなくムズいわよ絶望


彼らの名前の使用許可の申請なんて
宇宙並みな数出てるだろうしね🤣🤣🤣

通報してもらう方が手っ取り早いかも❗なんて乱暴な事を前に書いたりもしたけどね(根がアホなもんでグラサン)

まぁ事務所には物凄い通報案件が送られてるだろうから、これも果てしないわよね真顔ガーン


ま、でもなんかどーかうまくいくことを考えよう(❓)

書籍化どころかテテとグクのダブル主演映画化とかさ滝汗

映画の神様の目に止まれ〜〜💕💕


ってことで
とにかく書籍化しようと思っていますのご連絡でした☺️🩷




麗しい貴公子置いていきます✨✨✨







前回の物語


物語の続きが始まります✨✨✨


【フラッシュバックと癒やし】


聖プレブロシャス教会から戻ると、ハンスが出迎えた。
「お帰りなさいませ、殿下、ジョングク様。」
「ただいま戻りました。」
緊張感のある表情で答えたテヒョンにハンスが気付く。すかさずジョングクに視線を送ると、大丈夫だと言うように頷いて返した。
「お昼のお食事がまだでございましょう?ジョングク様のお部屋にご用意致します。」

「うん、頼む。」

ハンスが厨房へ向かうと、二人はジョングクの部屋へ向かった。


部屋に入るとテヒョンは、窓際まで来て外をぼんやり見ていた。教会を出てからずっと黙ったままのテヒョンをジョングクが後ろから抱きしめる。ふふっとテヒョンが笑って寄り掛かると、ヒョイと抱き上げられた。
「おいおい、、、歩けるよ。」
構わずそのままソファまで連れて行く。そして一緒に座って顔を覗き込むようにして話し掛けた。
「テヒョン様、何でも私にお話し下さい。」
テヒョンは真顔になって視線を上げた。
「君もあの絵を見たよね?」
「ええ。とても美しいご家族の肖像画でございましたね。」
「あの絵を見て僕は圧倒された・・・あのお方の愛情に・・・」

テヒョンはいきなりジョングクの目に訴え掛けるようにして訊いた。
「僕は満たしているだろうか?」
「何を、、、でございますか?」
あまりの迫力と予想外の問いに戸惑った。
「僕には2人の父と、2人の母がいる。あの絵と同じように、我が家にも家族の肖像画があるのだ。」
テヒョンは言いながら、ジョングクにしがみつくと泣きそうな顔で続けた。
「僕はあの方々の愛情に答えるだけの生き方をしているだろうか?」
ジョングクは驚いた。子どもは親からの愛情はそのまま受け取っていい筈なのに、テヒョンはそれに答えるだけの力量が必要だと思っているようだ。
そういえば、スミスが『甘えることを抑え早く大人になってしまわれた・・・』と話していた事を思い出した。
ヒリヒリするような幼い頃のテヒョンの心が見えるようで、ジョングクの心がそれに呼応する。

「テヒョン様、なぜ親の愛情を受け取るだけではだめなのですか?」
命を懸けて誕生を切望され、沢山の愛情を受けながら生まれてきたのに、まるでテヒョンはその愛情の重さに押し潰されそうな印象だった。そして小さく呟いた。
「僕は、、、自身の真実を知ってから、母上が早くに亡くなったのは僕のせいではないかと思ったのだが、、、」
テヒョンはそう言い掛けて頭を抱えた。
「テヒョン様!」
ジョングクが心配して声を掛けてきたのを制して、噛み締めるように続きの言葉を話し始めた。

「そうなのだ、、、忘れていたけれど僕は小さい頃既に、母上の死は自分のせいだと思っていたんだ。」
なんということだ・・・・・
その様な自責の思いが長い間ずっと刷り込まれていたというのだろうか。
「母上の死が自分のせいだなんて、、耐えられない。僕は意識から逃げたんだよ。だけど、自分に流れる血液のルーツを知って思い出した。だからやはり僕のせいなのでは、、、そして更に実の父親は命を懸けてまで、、僕を・・・・」
「もう、、、もう何も仰いますな・・・!」
ジョングクはテヒョンをきつく抱きしめた。

今目の前にいる青年は、幼少期のテヒョンそのものだった。
他の子ども達のように、母親に甘えられない自分は、早く大人にならなければならない。そのように小さいながらも自身を律する事でしか、寂しさから逃れる術がなかったのだ。
更にその原動力には、早過ぎる母の死が『自分のせいである』という悲痛な理由付けが伴っていた。しかし、子どもの心にはあまりにも厳しすぎるその自戒は、とても耐えられないので、自ら心の奥底に封印したのだ。
幼い心にそんな重圧があったなんて・・・・ジョングクは信じられない思いでテヒョンを抱きしめていた。


テヒョンは更に、フラッシュバックしたように、生みの父親の命の責任まで背負おうとした。

子どもの頃の心のあり様が、大人になった今でもこのように強い影響力を持つなんて・・・・。
凛々しく威厳に満ちた姿の裏には、幼い頃からの厳しく切ない苦悩があったことに、ジョングクは心が震える思いだった。
「大公妃殿下の死は、あなた様のせいなどではありません。伯父上もそう申していたではありませんか。勿論、王太子殿下の死も同じです。そのような理不尽な理由があるはずがありません。」
ジョングクはテヒョンの心を縛っている《呪縛》を断ち切るように言って聞かせた。

「誰もあなた様を責めてなどおりません。それは思い込みだけでございます。皆があなた様の成長を願い、喜び、慈しんでいる。それはお分かりですよね?」
「よく分かっている、、、でも、本当にそれだけでよいのか?」
「当たり前ではありませんか!」
ジョングクはテヒョンの目をしっかり見て話を続ける。
「親の人生に子が責任を負うなど有り得ません。あるとするならば、、、ご自身の人生に責任があるのでは?
精一杯人生を活きることで、ご恩返しになるのではないかと、、、」

テヒョンが少し笑顔になった。
「なるほど、、、君の方が人生の理についてよく知っているようだな。」
「いいえ、私はあなた様と出会ってから、あなた様を見ている事で色々教えられました。」
「それを言うなら、今回以外でも僕は君には沢山の事を教えてもらっているぞ。」
お互いに敬う心で見つめ合うと、テヒョンはジョングクの首にふわりと両腕を回して抱きついた。
ジョングクの心に陽が差していくような温もりが広がっていく。
今、こんなにも素直に甘えてくるテヒョンを抱きしめながら、幼少期の一番甘えたかった日々の分まで、沢山包み込んであげたいと思った。

「テヒョン様はこの数日の間に色んな事がおありでしたから、随分混乱なさっておりますよね、、、」
テヒョンはジョングクの肩に頭を擡げたままで『うん・・・』と頷いた。
「いつも私はあなた様のお心に寄り添っておりますよ。私の居場所があなた様であるように、あなた様の居場所はここにございます。」
この言葉にテヒョンが頬を寄せてきたので、ジョングクも頬をつけて頭に手を添えると、その柔らかな髪をゆっくりと何度も、何度も撫でた。


ジョングクの部屋に遅い昼食が運ばれて来た。
和やかな食卓にテヒョンも落ち着いて食事が採れた。
「君との食事はいつも以上に食欲が湧いてくるよ。」
「では、こちらもどうぞお召し上がり下さい。」
ジョングクが肉を一切れ切って、フォークに乗せるとテヒョンの口へ運んだ。
にっこり笑って『ありがとう。』と礼を言うと、何も躊躇することなくパクリと食べた。
頬を沢山動かして本当に美味しそうに食べるテヒョンを目を細めて眺めた。

食後に二人はカードゲームをしたり、チェスをしたり、または部屋に来たパックスと遊んでやったりして、一緒の時間を更に満喫して過ごした。
「もうじきアフタヌーンティーの時間ですね。」
「お昼の食事が遅かったから、軽食はそんなにいらないな。」
「そうですね。」
「それよりも、僕は久しぶりに君のホットココアが飲みたいな。」
テヒョンがテーブルに頬杖をついて甘えるような仕草で言った。

「分かりました。では準備して参りましょう。」
「いや、僕も一緒に行くよ。」
立ち上がってジョングクの側に行くと腕を絡めた。
《片時も離れたくない》という気持ちを含んだ可愛らしい仕草に、ジョングクの胸が甘く鷲掴みされた。
「はい、では参りましょう。」

厨房にジョングクだけでなく、テヒョンも入って来たのでシェフ達は驚いた。
「これは、、キム公爵。いかがなされました?」
「やあ、いつもご馳走様。ジョングクがホットココアを淹れてくれるので見学しに来たのだ。」
「そうでございましたか。ではどうぞもう少し中へお入り下さいませ。」
「皆の仕事中に邪魔をしてすまないな。」
「いいえ、厨房が華やいでようございます。」

テヒョンがシェフと話をしている間に、ジョングクは手際よく準備を始めていた。
鍋を火に掛けてココアパウダーを匙で計りながら入れると少し煎る。
そこへミルクを入れてとろみが出るまでかき混ぜ、砂糖をテヒョンの好みの量で入れ、残りのミルクを入れると、弱火でかき混ぜながら沸騰寸前まで待つ。
ふつふつと沸騰してきた所で火を止めた。テヒョンはその一部始終をずっと眺めていた。

香ばしいカカオの香りが厨房の一角に広がる。出来上がったばかりのホットココアを二つのカップに注ぎ入れて、トレーに乗せると布をかけた。
「ではテヒョン様、お部屋に戻りましょう。」
ジョングクがトレーを持ってテヒョンを促した。
「公爵、是非またこちらにいらして下さい。」
厨房を出るテヒョンにシェフ達が声を掛けるとお辞儀をして見送った。テヒョンはにっこり笑ってそれに応えた。

部屋に戻りテヒョンがソファに座ると、ジョングクはカップを渡す。
「お熱いのでお気を付けて。」
受け取ってすぐにフゥフゥと息を吹きかけて一口飲んだ。
「うん、、、やはり美味しいな・・・久しぶりに君のホットココアが飲めた。」
「喜んで頂けて光栄でございます。」
ジョングクはテヒョンの向かい側に座ると、二人は見つめ合いながらカップを傾けた。
テヒョンはカップを持つジョングクの手指を見た。厨房でホットココアを淹れてくれている間、ずっと指先の所作を見ていたのでそれを思い出していた。

「どうか、、されましたか?」
あまりにもテヒョンが凝視して、自分の手元を見ているので気になった。
「厨房で君がホットココアを淹れている時の手の動きをずっと見ていたのだ。」
「そうだったのですね。」
「うん。僕はしなやかに作業を進めていく君の手や指が好きだ。」
ジョングクは嬉しそうに笑った。
「では、、あなた様に触れる手も好きでいて下さいますか?」
そう言いながらテヒョンの前に手を差し出すと、答える代わりに手のひらに手を重ねた。ジョングクは親指でテヒョンの白い手の甲を撫でた。

二人の間には、ホットココアの香りに負けない位の甘い雰囲気が漂っていた。
更に二人は、こうして言葉を交わさないで、想いのやり取りをすることが多くなった。
今回、テヒョンがヴァンティーダの血液に耐性が出来てから、更に《無言の意思の疎通》が増えた。その上二人の間に流れる空気が濃く、深くなって誰も入り込めない雰囲気もあった。
二人はホットココアを楽しみながら、静かな時間を過ごしていた。
それでも秋の夕陽は容赦なく暮れていく。テヒョンとジョングク二人の絆の力を持ってしても、流石に時間の流れに逆らうことは出来なかった。


ジョングクの休暇も明日で終わる。
夕食を終えて休暇最後の夜を迎えると、二人の会話は更に少なくなった。
しかし、それは何か気まずくなったわけではなく、また会える時間を待つ日々が始まる事が切ないだけだった。
けれど二人でいる貴重な時間を暗い気持ちで寂しいものにしたくはなかったので、部屋の明かりを半分に落とし、柔らかな雰囲気を作り、就寝の支度を終えてワインを楽しむことにした。


ジョングクがベッドの周りをベッドカーテンで覆うと、グラスを片手に窓際で夜景を見ているテヒョンの所まで近付いて来た。
「次の休暇には必ず私がお迎えに上がります。」
後ろからそっと囁くとテヒョンの肩に自分の顎を乗せた。
「いや、また僕が馬で会いに来るよ。」
すかさず応えて肩の上の頭に額をコツンと当てた。
「もうお付きの者無しではいけませんよ。」
そう言われてテヒョンはジョングクの方へ振り返った。二人は顔を見合うとクスクスと笑い合う。

笑った拍子にジョングクが奪うようにしてテヒョンに口づけた。
それに合わせてテヒョンが向きを変えて、グラスを持ったまま両腕をジョングクの腰に回した。
二人がお互いの唇に触れられる喜びに酔いしれる。鼓動の高まりと想いの高まりが同期する。
ジョングクはテヒョンが手に持っているグラスを取るとテーブルに置いた。
空いた手を掴むと『ベッドへ・・』と言って誘う。

ベッドカーテンを開けて中にテヒョンを入れる。
ジョングクは常夜灯の灯りだけを残して、部屋の蝋燭の火を消して回った。燭台を持ちながら歩いているのが、カーテンの布越しでも分かった。
やがてその燭台の炎がベッドの方に近付いて、反対側のベッドカーテンが開くとジョングクが入って来た。
テヒョンの鼓動が速くなる。

ベッドの上をテヒョンの方へ移動してくると徐々にベッドの振動が伝わってきた。そしてその沈みが深くなった時、目の前にジョングクの顔が近づいて『おいで・・』と小声で言った。
テヒョンは敬語なしで言われ体が熱くなった。そして高揚する気持ちごとジョングクに体を委ねた。
二人はブランケットの中に潜り込む。

ジョングクは着ていたパジャマを脱いだ。テヒョンは鍛え上げられたその肉体美を目の前に見せられて、吸い込まれてしまうかのように見惚れた。そしてテヒョンの体の上に逞しい重みが伸し掛かった。
「あなた様の全てを見せて、、、」
ジョングクに乞われて、テヒョンは静かに頷いた。それで自分で脱ごうとしたので、その手は止められた。
ジョングクは徐ろにパジャマのボタンを一つづつ外していく。

袖を外しテヒョンの両肩があらわになると、そこで初めてジョングクの目を見つめた。纏っていたものが全て外され、テヒョンの肌が無防備に輝いて見えた。
優しい瞳がその素肌をなぞっていく。ジョングクのゆっくり愛でるような視線にテヒョンはぞくぞくした。
二人は重なったまま口づける。口づけながらお互いの肌を指先で探求する。

滑らかな肌を伝い、骨格を撫でて心の中に記録していくように弄っていく。
その肩幅に流れるような腕、胸も背中のラインも、腰周りもしなやかな脚も、髪の毛の一本一本から、手や足先の爪の形、顎のラインから喉仏の形・・・
全てが心を熱くする情熱の源だった。

そして今度は唇が素肌に這わせて愛でていく、、。二人のお互いへの探求は尽きることがないようだった。
暫く慈しみの行為は続き、やがて抱き合いお互いの温もりに癒やされていた。
最後までの営みは無くても、今はそれだけで充分に幸せを感じられた。



テヒョンが宮殿に帰る。
厩舎から乗ってきた馬と、ジョングクのアルミラージが連れてこられた。
少し経ってからテヒョンとジョングクがハンスを伴い玄関先に現れた。
外で待っていた伯爵家の従僕達は二人の雰囲気がガラッと昨日とは変わっている事に驚いた。何が変わったのか、、、言葉で説明がつかないところではあるのだが、二人の雰囲気が誰も入る隙のない程煌々と輝いて見えた。

「世話になりましたね。」
テヒョンは見送りに出ていた者達に声を掛けると、帽子を被り颯爽と馬に乗った。
従僕達は一同にお辞儀をした。
「ではテヒョン様をお送りしてくる。」
続いてジョングクも馬に跨がった。
「行ってらっしゃいませ。どうぞお気を付けて。」
ハンスが二人を見送る。公爵家から警護二人が送られていたので、テヒョンとジョングクの馬の後を付いて行く。

「やはり麗しいお二人でございますね、ハンス様」
「そうだな、、、」
段々と姿が小さくなるまで見送り続けていた。


【父からの手紙】


テヒョンが宮殿に到着した。
「お帰りなさいませ、テヒョン様。」
スミスが出迎える。
「ただいま。」
テヒョンは手綱を馬丁に渡した。
「ジョングク様、お送りありがとうございました。ささ、中へ、、」
「ありがとうスミス殿。でも明日の仕事の準備もあるので、私はここで。」
「左様でございますか、、、残念でございますが、仕方ありませんね。」

「また、次回に。・・・あ、スミス殿、お預かりしたテヒョン様の被服類は我が家で管理させて頂きますよ。」
「ああ、はい。それがようございます。我が家の王子様は何もご用意することなく、旋風のようにお出掛けあそばしますからね、、、」
「おいおい、スミス。随分な言いようではないか。」
「間違ってはいないと思われますが・・・。」
テヒョンがふくれた。

ジョングクとスミスが笑い出した。
「ではテヒョン様、私はこれで戻らさせて頂きます。」
「うん。色々ありがとう。またな。」
二人は握手をして肩で抱き合った。
「それでは失礼致します。」
ジョングクは帽子を被り馬に跨がう。
「どうぞお気を付けて。」
スミスがお辞儀をして送った。
テヒョンは見えなくなるまでジョングクを見送った。

「スミス、デイビスの姿が見えないが。」
「はい、昨日から上級バトラーの実地訓練と試験を受ける為に留守にさせて頂いております。」
「そうか、、、いよいよその時期が来たのだな。」
「暫くはこのスミスがテヒョン様のお世話をさせて頂きます。」
「うん。忙しいだろうが宜しくな。」
「はい。」

「テヒョン様、じきにお昼のお食事がご用意出来ますが、その前にお茶をお部屋にお持ち致します。」
「あ、いや。暫く一人になりたい。昼になったら自分で食堂に向かうよ。」
「かしこまりました。では後ほど食堂でお待ち致しております。」
スミスはそう言うとお辞儀をして見送った。

テヒョンはそのまま自分の部屋に向かう。部屋に入って書き物机まで行くと、大公から受け取ったテヒョン宛の封書を取り出した。
封書を一旦眺めると、それを持って部屋を出る。
宮殿内にある歴代国王や王太子など、王族達の肖像画が飾られている《ヘリオスの間》へ向かった。
この部屋は国賓を迎えた時のレセプション等に使う大切な場所で、この宮殿を住まいにしている大公やテヒョンも、滅多に出入りする事がない部屋だった。

『確かこの辺りであったな、、、』ヘリオスの間に入り、テヒョンは壁に飾られている肖像画を一つ一つ見ながら、歩いていく。
テヒョンはついに、ある絵画の前で足を止める。それはヘリオスの間の中間に飾られていた。
《騎乗の王太子ベリスフォード・ヴィンセント・サミュエル殿下》とキャプションが付いている。
ベリスフォード王太子は乗馬服に身を包み、漆黒の青毛の馬に跨がった凛々しい出で立ちで描かれていた。年号を見るとテヒョンが生まれる数年前になっていた。

テヒョンは暫く絵画の中の《父親》を見ていたが、真下に置かれているフットスツールに腰掛けると、持ってきた封書を開封し中の便箋を取り出した。それは思った以上に分厚く枚数が多かった。
ゆっくり便箋を広げると目を通していく。初めて見る筆跡にドキドキと緊張が抑えられない。
一枚目にはこの書簡の概要が記されていた。


この書簡は王太子の私信であり

私の命はもうそんなに長くはないと悟り、一人息子のテヒョンに宛てて

私の愛する第2弟王子フィリップに託したものである___



最愛なる我が息子、テヒョンへ


この手紙を開いた君は、いくつになっているのだろう。
そしてこれを読んでいるのだから、既に私が君の最初の父だという事は承知しているね。

私はベリスフォード・ヴィンセント・サミュエル。現王朝の子孫であり王太子である。
しかし、王位継承権は放棄し第1弟王子に委ねられた。国王陛下がお亡くなりになったので、弟は国王に即位し正式な王位継承権を持つ王太子は、甥のフレデリックが継承した。
私は王太子の称号を名乗ることだけが許されている。
君を国王にしてあげられず申し訳ない。
ただ、君が王位に野心があればの話ではあるが、、、

さて、何から話したらいいのだろう。
青年になっている君を想像しながら書くことにしよう。まだまだ小さい君しか知らないのに、青年になった息子に手紙を書くのは緊張するものだな。

でもきちんと伝えておきたい。
私は君と君を産んでくれたステファニアと永遠に別れなければならない事が、この命の火が消える事よりも辛い。
命を授けておきながら、君が成長するまで守ってやれない父を許して欲しい。

しかし、父としてどうしても君に遺しておきたい事がある。
テヒョン、この父は心から君を愛している。私を父親にしてくれて本当にありがとう。これはどうしても言っておきたかった想いだ。
君には感謝しかない。私達夫婦にとって君は宝物なのだ。
君は望まれて幸せになるために生まれて来たのだ。どんな人生を歩んだとしても必ず幸せになるように。それだけはお願いしたい。
今の君を慈しみ育ててくれた御両親を今後も変わらず、唯一の親として敬って欲しい。

そして一番大事な事を伝えよう。
君はどんな立場であっても、自分の意思で活きていって欲しい。
君が信じられる活き方を選んでいけば間違いはない。
君の人生は君だけのものだ。誰も代わりには活きることは出来ないのだから。
恐れずに前に進んでほしい。
それには君を信じてくれる友や仲間が必要だ。その者達に信頼と敬意を忘れずに。

そして、
今の君には愛する人がいるのだろうか?
もしいるのであれば、相手に誠実に向き合って欲しい。本当に心から大切に想える人とは、そう簡単に出会えるものではないからね。
私がステファニアという素敵な人に巡り会えたのも奇跡的で尊い。 
君の母は物静かで思慮深く、私を心から愛してくれた。

お互いが運命だと思えたから、私は彼女との人生を選んだのだ。だが、掟があって普通には結ばれない想い人同士であった。
私の為に一旦は別れを選ぼうとした彼女だが、私は諦めなかった。
その代わり王位継承を諦めた。国民を幸せにする前に彼女を幸せにすることが優先であった。

私達は大反対されたが、私とステファニアは二人が正しいと思う道を選択した。
命懸けで君を儲けたことも、私には正しいことなのだ。
それほど彼女を愛していたし、生まれて来た君もとても愛している。私の一番大切な家族だ。君たちが私の生き甲斐だ。

だから君も運命だと思う相手がいたなら、ためらわず想いに正直であってほしい。愛し抜いてほしい。
(君の心を寄せる想い人を見てみたいものだ。)

本当は伝えたい事が山ほどある。しかしそれを全て伝えるには私の体力が足りない。今もベッドの中でこれを書いているのだが、文字が揺れないようにする事に必死だ。

今、生まれて間もない君が目の前で眠っている。私のベッドに君を連れてきて貰っているのだ。この子に力を貰って生きている。
小さい、本当に小さい手が私の小指をしっかり握っている。そのおかげで少し元気が出て手紙が書けている。
愛しい我が子、勿論それは君なのだがその姿を君に見せてあげたい。
赤子の柔らかい香りが私を幸せに包んでくれる。君には人を幸せにする力が生まれた時から備わっているんだ。凄いことだろう? 

こんなにも可愛くて愛おしい君を遺して逝きたくない。
父上と君の声で呼んでもらえる事が出来ないなんてそれが寂しくて心残りだ。
覚悟はしているはずなのに、君を目の前にすると未練ばかりが頭に浮かんでしまう。
だけど、これが私という人間なのだ。どんな父親であったのか知っていて欲しい。

君に沢山のキスを贈ろう。この手紙を読んでいる君には直接出来ないから、今私の目の前で眠っているテヒョンに先に捧げておくよ。時空を越えて受け取ってくれ。

私はこの世からどこに行こうとも、君の幸せを願いずっと、ずっと、ずっと見守っている。必ず永遠に約束する。
もうここまでにしておこう。

テヒョン、幸せに

あらん限りの愛を込めて
父、ベリスフォード・ヴィンセント・サミュエル


最後の方はもう涙で文字がぼやけてしまっていた。ただただ涙が後から後から流れて仕方がなかった。
まるで王太子である父親がそこにいて、話し掛けてくれているかのような、そんな錯覚を覚える手紙だった。
テヒョンは暫く泣いていた。ただ静かに祈るような佇まいで泣いていたのだ。

長い間そうしていたが、徐ろに父親からの手紙を丁寧に畳むと、大事に封筒の中へ戻した。
そして立ち上がると、父親の肖像画に向き直り左膝を立てて跪いた。先ほど読んだばかりの手紙を胸に当てて、
「ベリスフォード父上、ありがとうございました。」
と礼をした。

生みの親と育ての親から同じ血を受け継ぎ、そして愛おしい想い人とも同じ血を受け継いでいることに、今更ながら気付いたテヒョンだった。
それがとても奇跡的な繋がりであり、尊いことだと実感するのだった。

テヒョンの中で何かが変わった気がしていた。


※ 画像お借りしました






前回の物語

物語の続きが始まります✨✨✨


【二人の憩いの時間】

ソレンティーノ伯爵を見送った後、テヒョンとジョングクはパックスを連れて散歩に出た。
チョン伯爵家の厩舎で、この年の春に産まれた仔馬を見るために、放牧場に向かう。
「あ、あの子ですよ、テヒョン様。」
放牧場で母馬と一緒に歩き回ったり、走ったりしている仔馬の姿が見える。
動きがまだチャカチャカしていて可愛らしい。
「おお、元気の良い綺麗な栗毛ではないか。」
「はい、それに鬣と尻尾が金髪なので、名前をブロンディ( Blondie )と名付けました。」
「なるほど、いい名前だな。
ブロンディー!」
テヒョンが名前を呼びながら柵に近付くと、仔馬は興味を示して近付いて来た。母馬が警戒して阻止しようとしたが、テヒョンは優しく声を掛け続けた。

「ほーら、ほーら、大丈夫だ。お前も一緒においで。」
テヒョンの声に落ち着いたのか、親子が揃ってテヒョンにの元にやってきた。
「よしよし、この子に触れてもよいか?」
先ずは母馬の額をゆっくり撫でながら、

そう声を掛けた。様子を見ながらもう片方の手でそっとブロンディの額も撫でてみる。母馬は怒らなかったので、どちらも首まで撫でてやった。ジョングクは黙ってその様子を見ていた。

「流石でございますね、テヒョン様。」
感心しながら柵まで来るとブロンディを撫でてやる。抱かれていたパックスは長く大きい顔に頬ずりをされて震えていた。
「ははは、パックス、ブロンディは挨拶をしてくれたのだぞ。」
「なんだ、パックスはブロンディが怖いのか?」
テヒョンはパックスの頭を撫でて慰めてやった。

「君の所はこのブロンディとパックスが加わって新しい家族が増えたな。」
「はい。もうそれだけで嬉しいです。小さい子は皆可愛いですからね。それと・・・」
ジョングクが言い掛けて止めたので、テヒョンが振り返り見た。
「恐れながら、、、、あなた様も私の家族、、、と思ってもよいでしょうか?」
テヒョンが一瞬目を丸くした。
「本来なら親族なのでしょうが、私にとってあなた様は、、、それだけ大切なお方です。」
ジョングクが甘く深い眼差しで見つめると、テヒョンの胸が弾けた。
「僕達は想いだけでなく、血も繋がっていたのだったな。ならばそう思ってくれるのは嬉しい・・・」
ジョングクはその言葉に高揚する気持ちを隠しきれず、テヒョンの体に腕を回して、そのまま肩を引き寄せると額にキスをした。

二人は寄り添いながら庭園を歩く。パックスはボールを追いかけ回して遊んでいた。
「先ほどのあのブロンディですが、実は私の誕生日の次の日に、テヒョン様にお見せしようと思っていたのです。」
「次の日?僕が泊まってずっと君と一緒にいることが想定だった?」
テヒョンがいたずらな眼差しで訊いた。
「勿論でございます。一日だけでは時間が足りません。ずっとそばにいて頂きたいと思っておりました。・・あなた様も同じ気持ちでいて下さったのでは?」
テヒョンは答える代わりに、ニヤリと笑ってパックスの所へ行ってしまった。
「あ!逃げないで下さい、、、テヒョン様。」
ジョングクは後を追い掛けた。


テヒョンとジョングクはパックスと沢山遊んでやった。
疲れて噴水の辺で二人が座って休んでいると、先程までじゃれていたのに、ジョングクの上でまどろみ始めていた。
ちょうど昼の食事の時間になったので、遊び疲れたパックスを抱いて屋敷に戻った。
玄関まで来るとセオドラ卿がちょうど出掛ける所だった。
「これは殿下、お加減はもう大丈夫でございますか?」
「ええ、おかげさまでこの通りです。セオドラ卿はこれから宮廷ですか?」
「はい。ここの所、定期的に参内致しております。」
「お忙しいのですね。」
「今の世界情勢を考えると仕方がありませんな、、、ではもう出掛けます。殿下にはどうか我が家でごゆっくりなさって下さいませ。」

セオドラ卿は一礼をして帽子を被ると馬車に乗り込んだ。
テヒョンとジョングクは馬車を見送りながら現実の社会を憂いだ。
「世界各地で起きている暴動や戦闘の話題が、街なかで普通に語られるようになっているそうだ。」
「はい、対岸の火事として見ることがもはや難しくなりました。」
一瞬ジョングクの瞳が紅く揺れたことにテヒョンは気付いた。宝石のルビーのような深い紅の瞳に見惚れてしまう。
「どうかしましたか?」
ジッと直視する視線を感じて訊いた。
「君の瞳が紅く動いていた、、、」
「ああ、、これは怒りを感じると出てしまうのです。テヒョン様は青く燃えるような色になりますよ。」
「僕の目が?しかし、そんなに怒ったことなどあったか?」

テヒョンは驚いて訊いた。ジョングクは笑いながら答える。
「キム公爵家のご領地をご一緒に旅行で周った時、テヒョン様はニールに剣先を向けて激怒なさった事がありましたよね。あの時でございますよ。」
「ああ、、そんな事もあったな・・・」
テヒョンがフッと笑った。
「あの迫力たるや誰もその場から動く事が出来ませんでした。それに私はなぜテヒョン様の瞳が青くなるのか、あの時は不可解に思っていました。」
その時に『あなた様は一体何方様(どなたさま)なのですか?』と、ジョングクから問われた事をテヒョンは思い出した。

「ヴァンティーダは皆怒りを感じると瞳の色が変わるのか?」
「はい。血筋や覚醒の有無に関係なく顕れます。また顕れる色についても、各々に違うと聞いています。」

「そうか、、それで君は紅で僕は青なのだな。」

テヒョンは自分が受け継ぐ種族の、不思議な現象に神秘的なものを感じた。

更に祖先の歴史に興味を持ち始めた。

「さ、テヒョン様、お昼のお食事に参りましょう。」

館に入るとパックスの飼育係が待機をしていて、ジョングクから眠気眼のパックスを静かに受け取った。




【祝福を受けた場所へ】



昼の食事の後、紅茶を飲みながら談笑をして過ごした。話をする中でテヒョンは、ある事が気になっていた。

昨日からジョングクと一緒にいても、なかなか我儘らしい事を言ってこないのだ。なのでそれとなく訊いてみることにした。

「ジョングク。」

「はい。」

「確か君は僕に我儘を聞いてもらうと言っていたけれど、いつその我儘を言うつもりだ?」

ジョングクは笑いながら答えた。

「もうずっと聞いて頂いてますよ。」

「え?」
テヒョンはどれが?というような反応をした。

二人は向かい合ってテーブルに座っていたが、ジョングクが自分のティーカップを持ってテヒョンの隣に来た。
「あなた様の時間を私が独占する事ですよ。」
「それが我儘なのか?」
ジョングクは両手でテヒョンの頭を包み込むと、優しく撫でるようにして頬も包んだ。
「今の私にとってあなた様と二人だけで会話をして、食事をして、愛犬や愛馬と戯れ、一緒に歩き、一緒に風を受け、笑い合う、、、それこそが幸せで贅沢な時間なのです。」

この言葉にテヒョンは嬉しさと共に、なんとも言えない、いじらしさをジョングクに感じた。
もしかしたら、当たり前と捉えてしまうような日常を幸せだと言える事は、とても幸運なことなのかもしれない。
世界で起きていることを考えたら、大切な人と過ごせる時間や環境は《贅沢》で《幸せ》で《奇跡》なことかもしれないのだ。ましてやジョングクは不穏に立ち込める暗雲と背中合わせにいる立場。
テヒョンは愛おしい想いを込めて、目の前の唇に自身の唇を寄せた。
ジョングクはテヒョンを抱きしめると、そのまま自分の上に座らせた。

二人は顔を合わせ額を付けた。
今この時一緒にいられる幸せを噛み締め、もう一度口づけをした。
その瞬間、幸せな想いが湧き上がるのと同時に切なさも交錯する。この時二人は全く同じようにそれを感じていて、また、これはお互いにしか感じない感情である事にも気付く。
感情が昂る中、二人は体中の血潮が沸き立つような熱を感じていた。

唇を離すとテヒョンが囁く。
「君の誕生日だったあの日、君の一部(血液)が僕の中に入ってから、僕の想いに反応するように、体中を暴れ回っているみたいだ。」
「それはあなた様の身体の中でも、私を受け入れて下さっているということですか?」
「拒絶反応が出なかったのだから、そういうことなんじゃないか?」
テヒョンは少し澄まして言った。
「そのお答えは、ズルいです、、、」
ジョングクはテヒョンの鼻の頭を指で弾いた。

ジョングクは随分前から、全身全霊でテヒョンを受け入れている。はぐらかした答えをしたということは、テヒョンも同じ想いでいてくれていると思えた。
「重くない?」
テヒョンはずっとジョングクの腿の上に座っていたので、辛くなっていないか気になった。
「平気ですよ。あなた様の重みが逆に愛おしいです。」
テヒョンの重みを感じている事が、ジョングクにとっては幸せだった。

テヒョンもとても幸せで、ずっと心は穏やかだった。
自分の生い立ちを知った時のテヒョンは、心が大きく揺さぶられ、ショックも隠しきれなかった。だが、ほんの数日前まであったそれらの感情が今は嘘のように落ち着いていた。
事実がどうであれ、また、自分が何者であろうが、大公やジョングクとの間の絆が変わってしまうことは無かった。
ましてや何かを失ってしまうような事すら何も無かったのだ。
ただそれだけのものなのだと悟った。


「ジョングク、前に君の所の領内の教会の前を通っただろう?」
「聖プレブロシャス教会ですね。」
「うん。訪ねてみたい。」
テヒョンは今ジョングクの所に居る間に、自分が洗礼式を受けた教会に行きたいと思った。
初めてジョングクと馬で出掛けた際に通った聖プレブロシャス教会。
あの時、懐かしいという思いが湧いたのは、何かしら無意識の中で記憶が刷り込まれていたからかもしれない。
「では明日一緒に伺いましょう。早速取次をしておきます。」
ジョングクはハンスを呼んで、教会への訪問の取次をするように頼んだ。


次の日の朝、馬車でテヒョンとジョングクは聖プレブロシャス教会へ向けて出掛けた。
去年は馬で通った道を馬車は進んで行く。
「一年が過ぎるというのは、こんなにも早いものなのだな。」
テヒョンが車窓の外を眺めながら呟いた。
「その間に色々ございましたね。」
二人はそれぞれに一年の歳月を振り返る。その間に馬車は目的地に到着した。教会の前にはジョーンズ神父がテヒョンとジョングクの到着を待って立っていた。

ジョングクが先に降りて挨拶を交わす。
続いてテヒョンが降りると、神父は手を取って挨拶をした。
「お久しぶりでございます殿下。」
「急な訪問で申し訳ありませんね、ジョーンズ神父。」
「いいえ、いつお越し下さるか一年前のあの日よりお待ち申し上げておりました。さ、どうぞ中へお入り下さいませ。」
テヒョンとジョングクは促されて教会の中へ入って行った。

身廊を真っ直ぐ進み内陣まで進んで行く。進んでいくうちにサンダルウッドの香りが漂って来た。テヒョンの好きなあのアロマの香りだ。
内陣まで来るとぐるりと教会内を見回して、
「ジョーンズ神父、私はここで洗礼を受けたと知りました。」
と話した。神父はハッとした表情をしたが、直ぐに笑顔になった。
「殿下はご自身の出生の事をご承知なのでございますね、、、」
「はい、つい最近に知りました。」
「そうでございましたか、、、では、こちらで少々お待ち下さいませ。」
神父はそう言ってその場を離れた。

しばらくすると、両手に青いビロード生地のクロスが掛けられた物を持って戻ってきた。それを祭壇の前の台の上に置くとクロスを外した。そこにあったのは皮で装丁された台帳で、《洗礼式記録台帳》と標記されていた。神父がいくつかページを捲り、
「こちらでございます。」
と言うと、テヒョンとジョングクは開かれた台帳を見た。
そこに記されていたのは、キム公爵家に保管されていた、あの洗礼証明書と同じ内容のものであった。
「こちらの台帳の方には、殿下の生みのご両親の直筆のサインがございます。」

テヒョンの洗礼式記録台帳のページの一番下に、《父∶ベリスフォード・ヴィンセント・サミュエル》と《母∶ステファニア・マリア・アンドレア》の名前が記されていた。
「チョン伯爵の洗礼式記録もございますよ。」
テヒョンの洗礼式の二年後にジョングクの洗礼式の記録も綴られていた。
「お二人共こちらで洗礼式を受けていらっしゃいます。そのお二人が今こうしてお揃いで、この教会にいらっしゃることが奇跡と申しますか・・・お導きと申しますか・・・」
神父は感慨深げに二人の顔を見ていた。
この空間の中で、自分は生みの両親の元で神の祝福を受けたのだと、テヒョンは改めて実感した。それにジョングクも時を別として、同じ教会で祝福を受けている。

「本来であれば、生後2〜3ヶ月に洗礼を受けるのですが、王太子殿下の強いご希望で新生児期の洗礼式となりました。王太子殿下のご容態がよろしくない中での洗礼式だったのでございます。・・・ですが、そんなご様子は一切見せず、それはそれは貴方様を慈しみ、お幸せそうなご家族でいらっしゃいました。」
テヒョンは苦しい体力の中、どうしても洗礼式を行いたかった《父親》の気持ちを思いながら、台帳に書かれた生みの両親のサインを指で撫でた。

「それと、大事な事がもう一つございます。殿下に是非見て頂きたい物があるのです。どうぞこちらへ。」
神父に案内されて中央交差部から袖廊へ移動した。
袖廊の中程まで来ると神父が壁に掛けてある絵画を見せた。
「殿下、こちらは洗礼式でのご家族の肖像画でございます。」
テヒョンはゆっくりと視線を上げていった。
そこに描かれていたのは、洗礼式のドレスをまとった赤子が、母らしき女性に抱かれていて、父らしき紳士がその二人を包み込むように抱いている肖像画だった。テヒョンの目は釘付けになった。紳士の表情は優しく愛情溢れるもので、とても体調が悪そうには見えない。女性の表情も母としての自信に満ちた美しさを醸し出していた。

「肖像画は事実よりもよく見せようと、手を加えられる事がありますが、こちらの王太子殿下とステファニア様のお顔は実際の表情と全く同じでございます。
王太子殿下のご体調を考慮して約15分間のスケッチでございましたが、苦しいお顔ひとつされませんでした。」
「ジョーンズ神父はその場にいらしたのですね?」
「はい。しっかりとお手伝いをさせて頂きました。」
テヒョンは改めて絵を見た。王侯貴族の肖像画は、例え家族と一緒のものであっても、威厳に満ちた立居振舞で描かれる。しかし、この肖像画は人間味溢れる家族愛に満ちていた。テヒョンは肖像画の前から動けなくなってしまった。

「王太子殿下はきっと喜んでおられると思います。いつかもしも息子が訪ねて来る事があったら、仕上がった絵を見せてやって欲しいと、遺言なさっておいででしたから、、、」
テヒョンの目から涙かこぼれ落ちた。ジョングクが静かに近付いて肩を支える。
「この絵を見ずに逝ってしまわれたのか・・・?」
「残念ながら、、、。この絵が仕上がりましたのは、王太子殿下がお亡くなりになって3週間後でございました。」
神父の言葉にテヒョンは深く目をつぶった。胸の中は説明のしようがない痛みが渦巻いていた。

教会に時間を知らせる鐘が鳴り響く。
まるでベリスフォード王太子への祈りの響きのようにテヒョンは感じた。
全て鳴り終わるまでその場で黙祷をして待った。
鐘の音が止むと、テヒョンは絵画に一礼をした。
「ジョーンズ神父、今日はお忙しい所ありがとうございました。」
「いいえ、またいつでもお越し下さい。お待ちしております。」
神父はテヒョンの手を取って何度も頷いた。

「ジョーンズ神父、このサンダルウッドの香りは・・・」
テヒョンが思い出したように神父に訊ねた。
「この教会の定番のお香でございます。殿下の洗礼式の時にも、サンダルウッドを練り込んだキャンドルを使いました。」
「そうでしたか、、、。」
テヒョンは納得したように笑った。
「最後に、、、私を産んで下さったステファニアとおっしゃる方はご健在なのでしょうか?」
「私の立場から詳しい事は申せませんが、、、」
神父は少し躊躇して続けた。
「時々お会い致しますがステファニア様はお健やかにお暮らしです。」
「そうですか。教えて頂きありがとうございます。」
テヒョンは神父の言葉に少し安堵した。


神父に見送られてテヒョンとジョングクは教会を後にした。
しばらく馬車の中は静かだった。テヒョンは物思いにふけるように、窓枠に頭を預けて外に視線を向けていた。
ジョングクはそんなテヒョンを見守った。
馬車がある程度進んだ時、テヒョンはジョングクに視線を向けた。縋るような潤んだ瞳を見て、どうぞ隣にと合図を送る。
テヒョンはすぐさまジョングクの隣に移動をすると体を預けた。

テヒョンの心の中は沢山の感情で溢れていて、また、葛藤するように揺れ動いてもいた。どの思いも蔑ろなんかには出来ない大切な思いだった。
ジョングクは何も言わずただ黙って寄り添い、しっかりと肩を抱いて支えた。
《家族》とは・・・・・
二人は各々考えを巡らせた。こうあるべきという正論で括れない、奥深い想いがそこにはあって、様々な結びつきがある。どんな家族構成でも他人には到底、理解出来ないような絆の繋がりもあるだろう。

テヒョンは特に、ベリスフォード王太子の力強いほどの愛に圧倒されてしまった。
命を懸けてまでタブーとされた領域に踏み込もうとする、、、いや、踏み込んだのだ。
その絶対的な《父の愛情》に対して、自分はどう応えていけばいいのだろう?テヒョンは真剣に考えた。
言ってみれば自分は父の命と引換えに授かった命といえる。尊い生みの父の献身的な想いの前では、今の自分は人としての力量が、全然足りてないのではないかと思えたし、まだまだ荷が重いような気がしてならなかった。
ジョングクはテヒョンが恐れ慄いている脅威を肌で感じて、また理解もしていた。

二人を乗せた馬車は、心なしかゆっくり優しく帰り道を進んでくれているように感じられた。
テヒョンはジョングクの優しさに揺られながら。

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