Yoっち☆楽しくグテを綴る♡ -39ページ目

Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️



前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨


【テヒョンとセオドラ卿】


テヒョンは時間があるときには、チョン伯爵家へ出向いてパックスの相手をしてやった。
ジョングクが不在の伯爵家では、こうしてテヒョンが訪問してくれるので、普段、主人の世話をする従僕や女中達の寂しさは幾分薄れているようだった。
それに、キム公爵家とチョン伯爵家が縁組をするという話が、両家でそれぞれ働く職員達にも、まだ内密であるという条件の元で知らされるようになったので、それだけで更に喜び活気づいていた。


「今日は殿下がお見えなのか?」
「はい。今はパックスとお庭に出ていらっしゃいます。」
昼過ぎにセオドラ卿が外出先から戻ると、テヒョンが来ている事を知ってハンスに訊ねた。
「殿下もお忙しいのに、わざわざご訪問頂くのが申し訳ないな。」
「はい、ですが、、、やはりジョングク様がいらっしゃらないのがお寂しいのではないでしょうか。」
「そうだな、、、。本来であれば心通わせた者同士、婚約発表を控えた楽しい時期であるからな。しかし二人が王族と公人の立場である為に、職務で我慢をしなければならないのは致し方ないな。」

父親の立場で考えれば、一番楽しくて幸せな時期を普通のカップルと同様に、味わわせてやりたいと思うのが親心である。
しかし、テヒョンには王族としての公務と領主の仕事があり、ジョングクには領主と特殊部隊を担う軍務がある。結婚生活が始まってもお互いに多忙な生活になるのは目に見えていた。
こうして婚姻前に二人が遠距離に置かれる経験をしておくのは、大事な事なのかもしれなかった。


セオドラ卿は中庭に出た。
「殿下、ようこそいらっしゃいました。」
パックスと戯れていたテヒョンが振り返る。
「これは、セオドラ卿。お戻りになったのですね。」
パックスがセオドラ卿の足元で飛び跳ねている。
「はい。今日の用事はすぐに片付く内容でしたので。」
セオドラ卿はしゃがむとパックスを抱き上げた。

「ジョングクが留守になってから、この仔はかなり寂しがって、大人しくなってしまいましてね。我が家にはあれほど走り回れる者がおりませんから、私も大変でございます。」
「パックスはかなりパワフルに走り回りますね。おかげで運動にはなります。」
テヒョンはセオドラ卿に抱かれてくつろいでいるパックスの頭を撫でた。
「毎度我が家にお出で下さり、恐れ多い事でございます。殿下のおかげでパックスがだいぶ元気になりましたので、私どもはとても助かっております。」
「私もこの仔に癒されておりますよ。」
にこにこと笑顔でパックスを撫でる。セオドラ卿はじっとテヒョンの表情を見ていた。


遊び疲れたパックスを飼育係に託すと、テヒョンはセオドラ卿と一緒に昼食を摂った。
二人だけでの食事は初めてだったが、食事をしながらパックスの事や、世間話で盛り上がっていた。

「あ、そうだ。セオドラ卿。」
「はい、なんでございましょうか? 」
「私はよく、小さい頃のやんちゃぶりを昔話の引き合いに出されるのですが、、、」
「はい失礼ながら、殿下の可愛らしいお話は有名でございますから、私も存じ上げております。」
セオドラ卿が笑いを含みながら言う。
「今はそれを忘れて下さい。今日はジョングクのとっておきの話を是非知りたいのです。」
テヒョンは自分についての話題に流れてしまわないよう、すぐにジョングクについての話へ切り返した。

「う〜ん・・・そうですな、、、」
セオドラ卿は顎に手を当て、しばらく考えている様子。
「元々が大人しいというか、何も言わない子でしたから、思い出に残るようなエピソードは無いに等しいのでございますが、、、」
テヒョンはじっとセオドラ卿を見て、一つくらいは何かしらエピソードはあるだろうと、出てくる言葉を期待して待った。
「ああ、、一つございました。」
テヒョンはパッと顔を輝かせ聞く体勢を整えた。

「とっておき、、とまではいかないのでございますが、、、。まだ就学する前だったと思います。
貴族の子ども達だけで結成された聖歌隊がございまして、ジョングクも入っておりました。」
「聖歌隊ですか?」
この話は初耳だった。
「ええ、特にジョングクの歌声には定評がございまして、独唱を任されておりました。」
すっかり父親の顔になって話していた。
「しかし、ある時仲間の一人を殴って怪我をさせてしまったのです。」
「え?、、、あのジョングクが、、ですか?」
突然の話の展開にテヒョンはびっくりした。

「これが、うちに帰ってきてからも、頑なに口を閉ざし殴った理由を答えようとはしなかったのですよ、、、。」
「本当にジョングクが殴ったのですか?信じられない、、、」
「私も最初は信じられませんでした。息子は理由もなく他人を傷つけるような真似は致しません。」
「そうですよ。逆に暴力的な事は嫌いなはず。」
セオドラ卿は深く頷いて話を続けた。
「あれはかなりの頑固者でして、何度理由を訊いても頑として口を割りません。その代わり両目一杯に涙を溜めているのです。」

テヒョンは、微動だにもせずまるで何かを守るかのように、口を閉ざしたままでいる少年のジョングクを想像した。
「しかし、私には大体の見当はついていました。」


ーーセオドラ卿と少年ジョングクーー

『母の事を言われたのだろう?』
ジョングクはハッとして顔を上げた。その拍子に涙が溢れて頬を伝い転がり落ちた。膝の上の両手がギュッと拳を握る。
『もうよいから、この父に話してみなさい。』
ジョングクの幼い瞳から、ポロポロと涙が溢れて止まらなくなった。
セオドラ卿がしゃがみ込んで、ハンカチーフで涙を優しく拭いてやる。

『・・・母、、上を、、』
やっと口を開いたが、言葉を発する度にしゃくり上げてしまう。
『うん、ゆっくりでいいぞ。』
セオドラ卿が両手でジョングクの腕を支えると、擦ってやった。
『母上が、、、僕を、、棄てて、、死んだと、、、母上を、、酷い親みたいな言い方をされて、、、許せなかった、、、』
ジョングクはそう言ってセオドラ卿にしがみつくと、わんわん泣きじゃくった。


ーーーーーーーーーーーー


「自分が何かを言われるよりも何よりも、母親が侮辱された事がどうしても許せなかったのでしょうなぁ、、、」
テヒョンは当時の虚勢を張ったジョングクの背中を想像し、胸が締め付けられるような気持ちになった。
「そんなことがあったのですね・・・私も母を亡くしているので、ジョングクの気持ちは痛いほど分かります。」
テヒョンは少し涙目になっていた。
「聖歌隊の中では、ジョングクは何をおいても上位におりましたので、それに敵わない者達が、あの子の弱点が《母親がいない》ことだと踏んだのでしょう。それを持ち出していじめに走ったのが間違いでした。」
セオドラ卿が苦笑いをした。

「そうですね、、、妬んで虐めに走ることは子どもにはよくある話ですが、自分にではなく母に矛先が向いた事が、ジョングクには許せなくて悔しい事だったのですね。」
テヒョンは言いながら、子どもながらに言い訳をしようともしなかった彼を《ジョングクらしい》と思わずにはいられなかった。全て自分一人で背負おうとするところは本当に彼らしかった。
大人になった今も変わらない性格に、少年ジョングクへの愛着も湧いた。
そして更に、母親を早くに亡くした寂しさをじっと我慢していた所への攻撃に、小さい心は耐えられなかったであろう事もテヒョンにはよく理解出来た。

「私の昔話とは違って、真面目なジョングクが際立ったエピソードですね。」
テヒョンがため息混じりに言うと、セオドラ卿がニッコリ笑った。
「殿下のご幼少時代のお可愛らしい数々のお姿は、厳格な宮廷の中でもほっとする話題でございましたよ。そのお子様らしいエピソードは、宮廷に出入りする者達の癒しになっておりましたからね。」
「私はよくは覚えていないのですけどね。」
「いや、ですが貴方様の毅然としたお姿や、人々に対する優しいお気遣いや、時折お見せになる愛らしい笑顔は、あのお小さい頃の本質のままでいらっしゃいます。」
テヒョンは少し照れた。

「我が息子がお慕いし、心を奪われるのは無理もありませんな。」
おもいもよらない言葉に、テヒョンの顔が紅くなった。
「勘弁してください、セオドラ卿!」
本当に恥ずかしくなって、両手で顔を隠すと、
「やはり殿下はお変わりなく素敵なお方でいらっしゃる。」
と言ってセオドラ卿は笑い出した。
大きな笑い声に、ハンスや他の従僕達がテーブルにいる二人を振り返った。
「セオドラ様が大きな声で笑われるのは珍しい。」
ハンスは驚いた。そして、それはやはりテヒョンの人柄のおかげなのだと実感した。

「いや、、、失礼致しました。」
セオドラ卿はまだ口角が上がったままだった。
「あなたの大きな笑い声を初めて聞きましたよ。」
テヒョンは恥ずかしさを通り越して、一気に素に戻っていた。
「久しぶりに声を出して笑いました。このように楽しいと感じられるのは、殿下のおかげでございますな。」
テヒョンはセオドラ卿へじっと目線を向けて、
「なにやら素直に喜べないのですけれど、、、」
と冗談交じりに言った。今度は食堂に二人の笑い声が響いた。
チョン伯爵家の職員達は、早くも目の前で未来の親子の親しさを目撃したことになった。


スコットランドの古戦場で、ジョングク率いる師団は最新鋭のアームストロング砲(後装式大砲)の実践訓練を進めていた。
午前中の訓練を終えて昼食休憩の時間になった。
「チョン大佐、王室より私信が届いております。」
訓練所の司令官室で昼食を摂っていたジョングクは、伍長が持ってきた書簡を受け取った。
裏を見るとテヒョンの封蝋がされている。ナフキンで口を拭うとすぐに席を立って、暖炉の前の椅子に座って開封した。

そこには懐かしい愛しい人の文字が並んでいた。読み始めからクスクスと笑いながら文字を追う。
テヒョンの手紙には、仕事の合間に時間を見つけては、チョン伯爵家に行ってパックスと遊んでいる話、セオドラ卿と一緒に食事をした時に、大きな笑い声を初めて聞いた話など、心がほっとする内容ばかりで楽しめた。
手紙は更に続き、調印式の話やニールとゲインズ親子の話にまで及んでいた。
文面を見ると、テヒョンの沢山話したいことが盛り込んであって、離れていてもなんでも共有したい想いが伝わってきた。

会いたいとか、寂しいなどの言葉は書かれてはいなかったが、《くれぐれも身体には気を付けて》とか《無理をしないように》などの労りの言葉の中に、寂しさを紛らわしている思いが感じられて、そのいじらしさに胸がぎゅっと締め付けられた。

それに、テヒョンが何かと実家を気に掛けてくれている事がとても嬉しかった。

最後にジョングクは、Yours Taehyung と書かれたサインに口づけると、手紙を胸に当てしばらく想いに耽った。


テヒョンからの手紙を受け取ってから3週間後、ジョングクは20日間の休暇を迎えることになった。
責任者としての引き継ぎを大尉にすると、実家にもテヒョンにも通達は出さずに、スコットランドを馬車で出発した。


【 プロポーズ〜愛の告白〜】


季節は秋を終え初冬を迎えていた。この頃に降る雨は氷水のように冷たい。
テヒョンの部屋の窓ガラスに、そんな冷たい雨がいくつも当たって濡らしていく。
暖炉の前で読書をしていると、ノックの音がした。
「入ってよいぞ。」
扉が開く音がする、、、だが誰かが入ってくる気配がしない。不思議に思って振り返った。

「お久しぶりでございます、テヒョン様。」
見覚えのある優しい笑顔の持ち主が、テヒョンを真っ直ぐ見つめてそこに立っていた。
「なんだ?、、、え?いつ、、」
「さぁ、おいで下さい。あなた様のジョングクでございます。」
驚いて目を丸くしているテヒョンに、ジョングクは両手を広げて言った。
「なんなのだ、、、知らせもよこさずに、、、」
テヒョンは嬉しいやら、悔しいやら感情がまとまらないまま、ジョングクの腕の中に包まれた。

「ずっとあなた様をこうして、腕の中に閉じ込めておきたかった、、、」
テヒョンの身体を包み込み抱きしめる。
そのまま顔を首筋に近づけて、愛しい人の香りを確かめた。
テヒョンも同時にジョングクの香りに包まれて、幸せな一時に身を委ねた。
久しぶりに感じるお互いの温もりを確かめ合う。
しばらくそうしていたが、テヒョンが思い出したかの様にパッと顔を上げた。
「食事はどうした?いや、先に伯爵家には帰ってきたのか?いつまでこちらにいられるのだ?陛下の所には・・・」

「シー・・・黙って、、、」
低い静かな声で言いながら、テヒョンの唇の前に自分の人差し指を当てる。
言葉を遮られて上目遣いにジョングクを見ると、ゆっくり口角を上げて煽った。
その表情にすっかり上気したジョングクが、テヒョンをそのまま抱き上げてベッドまで行くとそのまま沈めた。
「そのうちスミス達が来るぞ。」
「それは大丈夫でございますよ。しばらくテヒョン様と二人きりにして下さいと、ちゃんとお願いをして参りましたから。」
「本当にそんな事を言ったのか?」
「はい。」
恥ずかしげもなく満面の笑みで答えた。テヒョンは思わず吹き出した。

「今からあなた様を・・私が独り占めに致します、、、」
『いつからジョングクは、こんなに大胆で甘い言葉が言えるようになったのだろう、、』とテヒョンは思いながら、待ち望んでいた想い人からの熱い口づけに身も心も委ねた。
お互いの衣服を次々と脱がしていく。服さえもこの二人の間には介在させたくないものなのだ。
離れていた間の、恋焦がれた切ない想いを共有し合うように、何度も何度も口づけ抱き合った。



「ねぇ、、僕に歌を歌ってよ。」
テヒョンはジョングクの腕を枕に話し掛けた。
「歌、、、ですか?」
「前に二人で歌ったことはあっただろう?今度は君の歌が聴きたい。」
「・・・歌えますかどうか、、」
「昔、君は聖歌隊にいた事があったんだよな?」
ジョングクはびっくりして上体を上げて、
「どうしてそれを?」
と訊き返した。
「セオドラ卿に聞いたのだ。君が少年だった頃に聖歌隊にいた事をね。」

「そういう事ですか、、、」
ジョングクはじっとテヒョンの横顔を見ていた。その視線を感じて応える。
「前に言っていただろう?君の小さい頃のとっておきの話を訊くつもりだって。」
「では私の話をお訊きになられたのですね。」
「うん。しっかりとね。」
テヒョンは優しい笑顔で答えた。だが何の話を聞いたのかは語らなかった。

「小さい頃の君は、、、」
言いかけて何かを思い浮かべる。フッと笑顔がほどけると、
「僕が知っているままの君だったよ。」
そう言って手を伸ばして、優しく指で髪をすいた。
ジョングクはテヒョンが、何の話を訊いたのか思い当たった。それほど本当に印象深い話が他に無いということでもある。
それも、テヒョン自身の幼少期に似ている話だけに、敢えて話さないという姿勢が思いやりとして胸にしみた。

こうして心が通じ合うテヒョンのそばにいる事が、ジョングクにとっては最大の癒しなのだ。誰とでもこのような気持ちになれる事ではない。改めて《運命》という言葉を心に刻んだ。
腕枕でまだ余韻に浸っているテヒョンの柔らかい髪に口付けると、ジョングクは静かに歌を歌い始めた。

世の全てを光で包んでしまう
輝きとはあなたの心
私に降り注ぐ煌めきは
崇高なあなたの慈愛

その愛に酬いるために私は
剣を天に捧げ神の雷光を受ける

この人生の使命とは
あなたに繋ぐため
その為に私は天から命を賜った
私の宝のあなたよ

その愛に酬いるために私は
剣を天に捧げ神の雷光を受ける


テヒョンがジョングクの美声に酔いしれていた。
「・・とても良い歌だ。素敵な歌声ではないか。だけど聴いた事がない歌だな、誰の作品なのだ?」
「・・恥ずかしながら、この歌は私が作りました。」
「君が?凄いではないか!」
「成人を迎えた際に、自身の記念として作詞作曲を致しました。どこにも披露したことはありません。今こうしてあなた様に聴いて頂いたのが、初めてのことでございます。」
ジョングクは照れたように答えた。
「君にこのような才能があったなんて、、、ありがとう、最初に聴かせてくれて。」
「大切な人が現れたら、、、そう思って大事にしまっておいたのですよ。」
テヒョンは嬉しくなってジョングクに口づけた。


二人はようやくベッドを出て着替えを始めた。
鏡の前でブラウスのボタンを留めながら、テヒョンは何かに気付いた。喉仏の下の方の胸骨辺りに愛跡が着いていたのだ。
「ジョングク、、、これ。」
「はい。」
ジョングクはテヒョンに近付いて後に立った。
テヒョンは鏡越しにそれを指差して見せた。するとその愛跡に後から手を当てて、
「私の痕跡を着けさせて頂きました。
他の方々からは分からない所でございます。あなた様がお着替えをする度に、鏡を通して私を思い出して頂きとうございます。」
と言った。
「ではこれが消えるまでは、スミスやデイビスに見つからないように着替えなくてはならないな。」
テヒョンは、いじらしい事をするジョングクが可愛いと思って笑った。

着替えを終えて身なりを整えると、テヒョンは机の所まで行き、引き出しを開けて何かを取り出した。
「ジョングク。」
「はい。」
改まった表情で呼ばれてジョングクは背筋を伸ばすと、テヒョンは指輪ケースを差し出して開き、
「僕の公婿(こうせい)になってくれますか?」
と申し出た。ジョングクは直ぐ様跪くと一瞬間を置いて、
「はい、謹んでお受け致します。」
と応えた。

テヒョンは指輪ケースからダイヤモンドの指輪を取り出して、ジョングクの左手を取るとその薬指に婚約指輪を通した。
ジョングクがゆっくりと立ち上がる。
「私が先に求婚をしたかったです。」
「ここは伝統に則って、王室の求婚をさせてもらったよ。」
王族の結婚は、王族側からの求婚がしきたりとなっていた。
「では、個人的に私からも申し入れをさせて下さいませ。」

ジョングクはまた跪き、上着のポケットから指輪ケースを取り出した。そして開くと、
「テヒョン様、私の伴侶になって下さいますか?」
と求婚した。テヒョンはにっこり微笑んで、
「勿論、喜んで受けよう。」
と応えた。
ジョングクは立ち上がり、指輪ケースからこちらもダイヤモンドの指輪を取り出して、テヒョンの左手の薬指に婚約指輪を通した。

「テヒョン様、あなた様にお伝えしたい大切な事がございます。」
ジョングクは指輪を通した手を掴んだまま、もう片方の手を取ってテヒョンを見つめた。そして1言1言に想いを込めて、
「私はあなた様を心から愛しております。」
と伝えた。それは、愛に満ち溢れた《抱擁する言霊》だった。
テヒョンはまるで魔法がかかったように動けなくなってしまった。
お互いにずっと秘めながら、育てるよう大切にしてきた愛の言葉だからだ。

「僕も、、君をとても愛しているよ。」
テヒョンの瞳からは左の薬指にはめているダイヤモンドのような、キラキラとした涙が次から次へと零れ落ちた。
「あなた様は本当にお美しい、、」
ジョングクは恍惚とした表情で涙に濡れるテヒョンを見た。
感極まった二人はしっかりと抱き合うと、深い深い口づけをした。


テヒョンとジョングクは大公の部屋の前にいた。二人は顔を見合わせて頷くと扉をノックする。
扉が開くとオルブライトが深々とお辞儀をして二人を迎え入れた。
大公の部屋にはスミスもいて、オルブライト同様にお辞儀をした。どうやら二人からの《報告》を三人で待ちかねていたようだ。
「随分と待たされたな。」
大公が笑いながら言った。
「父上、先程ジョングクに求婚を致しまして、彼の同意を得られました。」
「そうか。やっと決意したか。」
「おめでとうございます!テヒョン様、ジョングク様。」
オルブライトとスミスが声を掛けた。
二人は顔を見合って嬉しそうに笑った。

「さて、国王陛下にご報告をせねばならぬな。ジョングクの屋敷にも使いを出せ。」
「かしこまりました。」
大公はスミスに書簡を渡した。
「さぁ、どうぞグラスをお取り下さい。」
オルブライトがシャンパーニュを開けてグラスに注いだ。もうすっかり何もかも準備が整っていたようだ。
「前祝いだ。オルブライトもスミスも一緒にグラスを取れ。」
五人はグラスを取ると、大公が乾杯の声を掛ける。
「未来の花婿たちへ!乾杯!」
大公の部屋は幸せの美酒で湧いた。



貴族の婚姻には、先ず国王の許可を必要とした。縁組で生じる爵位の継承や相続などで、後々争いが懸念される事案がないか調査する必要があるからだ。
王族の婚姻の場合には国王の許可は絶対であった。
この度のテヒョンとジョングクの場合は、テヒョンが王族である事と、二人ともヴァンティーダである為、歴代ご法度とされてきた王族とヴァンティーダ族の縁組が審議に掛けられた。
しかし、テヒョンは先の王太子の実子である。産みの親がヴァンティーダであっても、正当な王族の血を受け継いでいるのは事実で、今回の婚姻が同士婚であることで、ヴァンティーダの子孫は残せない事が分かっている。結果この二人の婚姻は問題なしとされた。

大公はテヒョンとジョングクが心を通わせている事を知った時、すでに国王に打診をしていて、早目に許可を取り付けていた。
大公とテヒョンは、婚姻についてテヒョンとジョングクの《同士婚》の意思が整った事が記された書類を持って、国王の元へ参内した。
親子は国王の執務室に通された。書類を受け取った国王は、
「ようやく婚約までこぎつけたか。待っておったぞ。」
と、しびれを切らしたような言葉を向けた。

「陛下には早目に許可を頂いておりましたので、大変お待たせ致しましたと申し上げた方が宜しかったですね。」
大公が笑いながら言った。
「ま、それでもこうして婚約にまで辿り着いたのだからな。めでたいということだ。テヒョン、おめでとう。」
「ありがとうございます、陛下。」
「どうだ?今は幸せか?」
「はい、おかげさまで。」
「ジョングクが今忙しい最中であるから、寂しい思いもしているのだろう?今の休暇中は二人でゆっくり過ごせ。」
「はい。そうさせて頂いております。」
テヒョンは満面の笑みで応えた。


テヒョンとジョングクの婚約の発表が公式に出されると、国中が沸きに沸いてお祝いの声が沢山上がった。
しかし、その反面テヒョンやジョングクの、妻になる事を夢見ていた淑女達の落胆は大きかった。
ある者は嘆き悲しみ、ある者は寝込み、またある者は他の誰に嫁ぐのも嫌だと、修道女になる道へ進んだりと大騒ぎになった。
二人はそれだけ世間から注目をされる貴公子であったのだ。


※ 画像お借りしました






 



前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨



【ジョングクの愛犬】


昼食後、国王の私室で王族達との団欒を楽しんだニールとゲインズは、明日の帰郷に備えて宿に戻ることにした。
テヒョンとスミスは二人を見送る為、宮殿の馬車回しまで移動した。
「わざわざお見送りをして頂いてありがとうございます。陛下の私室にまでお誘い頂けて、大変光栄でございました。」
テヒョンは最後まで恐縮するニールを笑った。
「これからがお前の本領発揮だな。」
「はい。心して任務に励みます。」
「うん。これからはなかなか親子の時間も取りづらくなるだろう。宿に戻ったら今夜はゆっくり親子水入らずで過ごすことだな。」
ニールもゲインズも嬉しそうに笑った。
「色々とありがとうございました。殿下には感謝をしてもしきれません。」
テヒョンはそう言うゲインズの肩を叩いた。
ニールとゲインズは、揃ってお辞儀をすると宮殿を後にした。

「良い親子だな。」
テヒョンは二人の後ろ姿を見送りながら呟いた。
「そうでございますね、、、」
スミスも感慨深げに見ていた。それほど口数が多くはないニールとゲインズだったが、お互いを思いやり寄り添っているのが分かる。
「父上と私と同じ位の親子仲の良さだな。」
スミスはテヒョンの横顔を見て頷いた。
どんな形の親子であっても、血縁に引けを取ることはないのだと、テヒョンもスミスも改めて思った。


アフタヌーンティーを国王と一緒に過ごし、夕刻前に宮殿を後にした大公とテヒョンは帰りの馬車は一緒だった。
「テヒョン。」
「はい。」
「公爵としての大役、ご苦労だったな。」
「ありがとうございます父上。」
親子で向き合って乗っている馬車の中で、大公は父親としての労いの言葉を贈った。
「お前に早いうちから家督を継がせた事は、返って負担が大き過ぎたのではないかとずっと思っておった。」

大公はテヒョンが成人を迎えてすぐに、《キム公爵》の家督を譲った。その理由は王位継承権を担う者として、統治の実践経験を積ませる為だった。
ただ、その頃の大公は既にフランスに駐在していて、そばで指導や助言をしてやれない状況だった。
実質的な補佐はスミスに委ねられたのだが、なにしろ弱音というものを吐かない息子だけに、余計に心配をしていた。

しかし、フランスにもテヒョンの実績が高く評価されて届いていたし、身内の大公の耳に直接入るものだけでなく、外部を通しての評判も良いものばかりだった。
それでも完璧に近い仕事の進め方をするテヒョンに、無理をさせているのではないかと、息子を思う父親としての心配は尽きることはなかった。

「調印式で堂々とサインを書き入れていくお前の後ろ姿は、とても誇らしかったぞ。」
「ああ、こうして先代の《キム公爵》にお褒め頂いて有り難き幸せにございます。」
テヒョンが恭しくお辞儀をすると、大公と二人で笑い合った。
そばでその様子を微笑ましく見ていたスミスは、お互いを尊敬し合う親子の絆が更に深まっているように感じた。


キム公爵家とサンドリア侯爵家の調印式のニュースが載せられた新聞は、瞬く間に売れ切れた。
スコットランドに遠征中のジョングクの手元にも、その記事が載った新聞が届いた。
新聞の一面には、調印を終えて握手を交わすテヒョンとサンドリア侯爵の挿絵が描かれていた。ジョングクは調印式の様子が細かく書かれた記事を隅々まで読んだ。『テヒョン様、あなた様の凛々しいお姿が手に取るように分かります。』
毅然と公爵としての務めを果たしている愛しい人の姿が脳裏に浮かび、ジョングクは改めて自身の襟を正した。

その頃テヒョンは馬車でチョン伯爵家に向かっていた。


馬車が正門に着くと、窓を開けて門番に声を掛けた。
「やあ、通ってもいいか?」
「いらっしゃいませ、キム公爵。勿論でございます。どうぞお通り下さい。」
「うん、ありがとう。」
テヒョンはいつもの通り、取り次ぎ無しで通された。
馬車が門をくぐり敷地内を進んで行った。玄関に着くと御者が御者台を降りて扉の呼び鈴を引いた。

玄関の扉が開いて従僕が出て来た。
「これは!キム公爵。」
テヒョンの訪問に驚いてすぐさま馬車まで近付いて扉を開けた。
「また突然ですまないな。」
「何を仰られますか、さあどうぞお降り下さいませ。」
従僕はテヒョンの手を取って馬車から降りるのを手伝った。

玄関まで近づいて行くと、ハンスが現れた。
「いらっしゃいませ、キム公爵。」
「やぁ、今日は独りではないぞ。」
ハンスがゆっくりと外を見廻して、
「しかし、警護の姿ではなく御者にございますな。」
と言って首を横に振った。
テヒョンはペロリと舌を出した。王族らしからぬあまりの可愛らしい仕草に、ハンスの頬も緩む。『これはジョングク様がお心を奪われるのも無理はない。』
「困った王子様でございます。」
ハンスが大袈裟に言うと二人は笑った。
「さぁ、中へお入り下さいませ。」

「今日はセオドラ卿は留守にされているのか?」
「はい。残念ながら宮廷に行かれております。」
「そうか、約束無しで来ているのだから仕方ないな。それに今日はパックスに会いに来たのだ。」
「左様でございましたか。パックスはジョングク様がスコットランドに向かわれてから、すっかり大人しくなってしまいました。」
「そうなのか・・・」
テヒョンには大人しくなったパックスが想像出来ない。それほど寂しい思いをしているということか。
「どうぞ、ジョングク様のお部屋でお過ごし下さいませ。」
テヒョンはジョングクの部屋に通された。

「主人が留守なのにいいのか?」
「勿論でございますよ。テヒョン様のご案内は、いつでもこちらのお部屋へと申しつかっております。」
王族であるテヒョンは、高貴な身分である事で敬われる存在だが、主人であるジョングクが、親しくしさせてもらってい  るという理由だけでなく、チョン伯爵家の人達は皆が尊んで慕っていた。
こうして、主人が留守であっても訪ねて来てくれることで喜び、沢山おもてなしをしようとしてくれる。テヒョンはそれが感じられて、あたたかい気持ちになった。

部屋の中に入ると、整理整頓されたインテリアや生活用品などが、この部屋の主人の留守を強く印象づけた。
「じきにお飲み物をお持ち致します。その間にパックスをお連れ致しますのでしばらくお待ち下さい。」
ハンスが部屋を後にした。
それと入れ替わるように、女中が二人『失礼致します、』と入ってきて、茶器を持ってきた方が紅茶をカップに注ぎ、スイーツの支度を整えると、もう一人が暖炉の薪に火を入れた。一通り支度が整うと一礼をして静かに部屋を出た。

テーブルについて紅茶を飲む。『ジョングクのホットココアも飲みたいな。』と、居ないと分かっているのに、気持ちは余計に無い物ねだりのような事を思ってしまうようだ。
ふとベッドの枕元に、畳まれたガウンコートが置いてあるのが目に入る。
テヒョンと色違いでお揃いの、あのガウンコートだ。立ち上がってベッドまで行くと、それを手に取って広げた。
思わず胸に抱きしめるとほのかにジョングクの匂いがして、まだ離れて間もないというのに、テヒョンの胸が懐かしさに引き込まれた。

上着を脱いでガウンコートに袖を通した。そしてまたテーブルに戻って残りの紅茶を飲んでいた。
扉をノックする音が聞こえた。『はい、どうぞ。』と応えると扉が開いて、パックスを抱いたハンスと、おもちゃが入っている籠を持った飼育係が中に入ってきた。
「お待たせ致しました、、、」
ハンスが言い掛けた時、パッと顔を上げたパックスは、テヒョンに気付いた途端に腕の中から飛び出すと、一目散に駆けてきた。そしてキュンキュンと鳴きながらテヒョンの足元で飛び跳ねる。

「パックス、久しぶりだな。」
テヒョンは興奮冷めやらぬ仔犬を抱き上げた。
「わぁ、前よりも重たくなってるではないか。」
パックスは嬉しくてテヒョンの顔を舐めた。
「よし、よし、わかったよ。」
ハンスと飼育係は笑いながらその様子を見ていた。そして飼育係が、
「公爵、この仔のおもちゃがございますので、どうぞ沢山遊んであげて下さいませ。何かございましたらお呼び下さい。」
と言っておもちゃの籠を差し出して置いた。
「うん、分かった。」


「お寒うございますか?薪の火力を上げましょうか、、、」
ガウンコートを着ているテヒョンを見てハンスが訊ねた。
「いや、大丈夫。このガウンコートで丁度いい。」
ハンスがハッとして黙って頷いた。テヒョンがジョングクのガウンコートを着ている時点で、その心情を察するべきであったと反省したのだ。
テヒョンもジョングクも《婚姻》の話が出始めた最中に、離れ離れにならなければならなかった。だから人知れず寂しい思いをしていることであろうと想像はつく。

ハンスはテヒョンにじゃれついているパックスの頭を撫でる。
「沢山遊んでやって下さい。この仔がしょんぼりしている姿は、家の者達誰もが見るに耐えないものがございます。」
ハンスは静かに言った。この家でパワフルに遊んでやれるのは、ジョングクしかいないだろう。テヒョンは両手で優しくパックスの顔を包みこんだ。
「では我々はこれで失礼致します。」
ハンスとパックスの飼育係はジョングクの部屋を出て行った。

「パックス、何して遊ぶ?」
パックスはテヒョンの腕の中に鼻を突っ込んでいた。
「ん?お前の主人の匂いがするか?・・・寂しかったのだな、よしよし。」
ジョングクのガウンコートの残り香に、ピスピスと鼻を鳴らして懐かしがる様子に『僕と同じだな、、、』と呟いてパックスのおでこにキスをした。

テヒョンは床に座り込み、ボールを取って投げた。パックスが嬉しそうに追いかけて、口に咥えるとテヒョンの前まで持ってきた。
「いいぞ!パックス、賢いな。」
身体中を撫で回して大袈裟に褒めた。
それが気持ちよかったのか、パックスはひっくり返ってお腹を見せる。
テヒョンはよしよしと言いながら、覆い被さってマッサージをしてやった。
そうやって沢山構ってやっているうちに、いつの間にかテヒョンはパックスと一緒に眠ってしまっていた。

「・・・キム公爵、公爵、、」
ハンスに揺り起こされて目が覚める。
「あ、、、いつの間にか眠ってしまったのか、、、」
「絨毯の上に横たわっていらっしゃいましたから、お倒れになられたのかと驚きました。」
「それはすまぬな。」
テヒョンはまだ横になって眠気眼のまま、ハンスと顔を合わせてニヤリと笑った。
『本当に、なんて可愛らしいお方なのだろう。』大公子と公爵といった恐れ多い身分を持っていながら、誰をも魅了してしまう笑顔を併せ持つ人柄に、ハンスはいつも頬が緩んでしまう。

「さぁ、起き上がれますか。」
「ん、、、待ってくれ、ここにパックスが、、、」
見るとテヒョンを腕枕にしてスースーと眠り込んでいる。
「公爵の腕を枕に寝ているなど、なんとも贅沢な仔犬です。」
「はは、、可愛らしいな。普通であればちょっとした物音でも目が覚めるものなのに。」
テヒョンはこの仔が、毎日浅い眠りの中で、主人が帰ってくる時をずっと待っているのだなと思った。
「これからもお前に会いに来なければな。」
そう言って頭を撫でると、ようやく目を覚ました。

「エジンバラの離宮で、私の部屋に泊まったジョングクが、国王陛下や私より後に起きてきた事を思い出したぞ。パックスは主人にちゃんと似たのだな。」
テヒョンはケラケラと笑い出した。
「なんと!あちらでそんなことがおありだったのですね。」
ハンスは驚きながら笑い出した。
「本人は青ざめていたが、陛下も私もそんな事は気にしていなかった。陛下は特に自然体を好まれる方だから、それでジョングクには好印象を持ったようだ。」

そう言いながら、テヒョンはあの時自分がジョングクに抱いた印象を思い出していた。会った瞬間に何かを感じていたことを・・・
「そのような事がございましたか。私は同行しておりませんでしたから、何も知らず・・・」
ハンスの言葉にふっと我に返った。ついつい思い出の中に入り込んでしまっていた。


ブランチを食べた後、テヒョンは庭に出てパックスを散歩に連れて行く。
そこでもボールを投げて取りに行かせた。大喜びで追いかけて、咥えて持ってくる。
「いいぞ、パックス。ほらもう一度取っておいで!」
テヒョンも沢山一緒に走り回り、いい運動になった。
「パックスは速いな、、これではセオドラ卿もついてはいけまい。」
テヒョンは芝生に座ると、パックスを脚の上に乗せた。流石に走り過ぎたようで、ハッハッと息が上がり舌を出して呼吸をする。

「疲れたか、うん?」
テヒョンはパックスを抱きしめておでこにキスをすると、フワリとお陽さまの匂いを感じた。
「今日は楽しんでくれたか?」
まん丸の瞳で首を傾げながらテヒョンを真っ直ぐ見つめる。
「僕もお前のおかげで楽しい時間を過ごせたよ。」
仔犬と沢山戯れて、多少なりとも寂しさを紛らわす事が出来たようで、清々しい気持ちでいる事に気付いた。
テヒョンは空を見上げると遠いスコットランドに思いを馳せた。
ジョングクもきっと元気で職務に就いているはずだ。



【ジョングクからの手紙】


ジョングクがスコットランドに行ってから、1か月半が経とうとしていた。
テヒョンが執務室で仕事をしていると、デイビスがやってきた。
「殿下、スコットランドから私信が届いております。」
「スコットランドから?」
スコットランドと聞いて、テヒョンの声が弾む。封書を受け取るとすぐさま開封をした。
「それでは失礼致します。」
デイビスは微笑みながら一礼をして執務室を出た。
逸る気持ちを抑えながら便箋を開いた。窓辺に寄り掛かるようにして文字を追い始める。


親愛なるテヒョン様

早いものでもう1か月が経ちました。
お元気でいらっしゃいますか?
私はスコットランドに着いてからというもの、目まぐるしいスケジュールで動いております。
沢山の兵士達を統率する責任がございますからそれは当然の事ですが。
あなた様にお会い出来ない寂しさを紛らわせる事が出来て、この忙しさに正直助かっております。

そのような中で、用水路工事の調印式の記事が書かれた新聞が、私の手元に届きました。その時の様子が描かれた、挿絵がございましたが(あなた様には似ても似つかない物でしたが。)
ご領主であるキム公爵としての、威厳に満ちたお姿が私にははっきりと見えました。
もし、私がおそばで見守らせて頂いていたらきっと、感動で涙してしまうことでしょう。
この遠征地におりましても、あなた様の側近である私に、この度の調印式への祝辞を下士官や兵士達から貰います。
皆が注目する国家事業の先頭に、あなた様がいらっしゃる誇りを感じずにはいられません。

ああ、今こそこの腕の中にあなた様を包み込んでしまいたい。
柔らかい髪、吸い込まれてしまいそうな深い瞳、筋の通った威厳ある鼻、意思を持った月の上弦と下弦を思わせる唇、誰をも虜にしてしまう笑顔、、、そして、
しなやかなお身体に通う血潮の温かさは、こんなに離れていても私の胸の中に感じられます。
私の意思が強くいられるのはあなた様の存在のおかげです。

私の大切なお方、、、
あなた様にお伝えしたい事がございます。
お会いできる日が楽しみです。

益々寒くなって参ります。どうかお元気でご自愛下さいませ。

沢山の口づけを贈ります。

あなた様のジョングクより


テヒョンは便箋を胸に当て目を閉じた。
「だから、、手紙じゃ口づけすら出来ないって言ったのに、、、」
そう言ってもう一度愛おしそうに便箋を眺めていたが、末尾に書かれたジョングクのサインに口づけた。

姿は見えなくても文面からは勇ましく
『弾込めー!撃てー!』と声を張って指揮を取っている様子が見て取れた。
部下である兵士達とも信頼関係はしっかり結べているのだろう。ジョングクの筆跡は以前の滑らかな文字と違って、堂々として勢いがついた文字が書かれていたので、そこに自信のようなものが感じられた。
テヒョンは窓から空を眺めて、スコットランドへと続くこの先の向こうに想いを馳せた。



久しぶりの休みを過ごしていた大公の元に、セオドラ卿からの私信が届いた。
「フィリップ様、チョン伯爵家より私信が届いております。」
「うん。」
「では、お茶をお持ち致します。」
オルブライトが部屋を出た。
机上で送られてきた書面に目を通す。
ひとつ、ふたつ頷くと立ち上がり窓辺に向かう。

しばらくしてオルブライトが戻ってきた。
「戻り直ぐですまぬが、テヒョンを呼んでくれるか。」
「はい、かしこまりました。」
オルブライトが再び部屋を出ると、茶器が2客用意れている事に気が付いた。
『さすが、我が側近だな。ちゃんと察しがついておるわ。』大公は満足そうに笑った。


「殿下、大公殿下がお呼びでございます。私室に来られるようにとの事にございます。」
デイビスがオルブライトからの言付かりを伝えに来た。
「分かった、すぐ参ろう。」
テヒョンは執務室を出ると、大公の部屋へ向かった。


「テヒョンか?入りなさい。」
部屋では大公が紅茶を飲みながら、テヒョンを待っていた。
椅子に座るように促すと、大公自らが紅茶を淹れようと立ち上がった。
「あ、父上、自分でやります。」
「たまには父が淹れる紅茶もよいであろう?まぁ、座りなさい。」
「ありがとうございます。」
「実際に用意をしたのはシェフだがな。」
大公がウィンクをしてそう言うと、親子で笑った。

テヒョンの前にティーカップが置かれると、『いただきます。』と言って一口飲んだ。大公はそれを見届けると話を始めた。
「先程、チョン伯爵家から私信が届いた。」
チョン伯爵家と聞いて、テヒョンはカップをソーサーに戻した。
「お前とジョングクの婚姻について、セオドラ卿に《同士婚》の意向を訊いておったのだ。」
「はい。」
「今現在、ジョングクには許嫁もいないので、公爵家との縁組に何も憂慮するものはないそうだ。
更には公爵家からの縁組の申し入れは、この上ない誉だと申しておるぞ。
それに、二人は既に心を通わせているようだから、後は本人達次第だと。」
テヒョンは無言で大公を見つめるとにこりと笑った。

幸せそうな笑顔のテヒョンに、大公も頬が緩む。
「セオドラ卿は、お前達二人は運命だと言っておった。私もずっとそう思っていた。兄上が命懸けでお前を授けて下さったのは、実はもっと深い意義があるのではないかと思わされる。」
「父上・・・」
「お前達が《伴侶》となって何か新しい時代を築き上げていくのかもしれぬな。」
テヒョンはまた大公の目を見つめた。
息子の、この優しい眼差しだが眼光鋭い視線に、それは本当に訪れるのかもしれないとそう思う大公だった。

「さぁ!両家の親の承諾は出たのだから、後はお前とジョングクに任せたぞ。」
「ありがとうございます、父上。」
テヒョンは立ち上がって深々と頭を下げた。


※ 画像お借りしました






まいど群青真紅をご愛読下さりありがとうございます🙏

今回長らくお待たせしちゃいました
76話でございましたが

ランキング1位🥇
頂きましたよ😭

ほんっっっっとうに、いつもありがとうございます💕
読者の方々には感謝しかございません

時に笑い、泣き、ドキドキ💓しながら読んで下さっていることを感想としてメッセージを下さると

ああ、ちゃんと通じて頂けてるんだ✨✨😭✨✨と嬉しくて震えます

メッセージやコメント下さった方々
ホントにありがとうございます
お返事が遅かったり、出来なかったりでごめんなさいね🙏🙏🙏💦💦💦
ちゃんと読ませて頂いています💕



こうしてランキング上位をお知らせするのも、毎日忙しい中でテヒョンとジョングクに会いに来て下さる、皆様の労力を労わせて頂く為でもあります👍


いつか必ず一冊の本となり

皆様の養子としてお届け出来る日を夢見ております🩷



そして、そして、、、でっかい夢として


モデルとなった本人達を主役に

映画化😳、、、


なんてことになったら、それこそ尻尾を振って皆様にじゃれつきたい←迷惑💦


その前にアフタヌーンティーパーティーをハイクラスホテルでやっちまいましょうか❓️←来て下さる❓️



いや、ホント
デッカイ夢みよう❗❗
皆様と一緒に見たいですよ👍👍




さ、いいから早く次を書きなさいって声が・・・ニヤニヤ❓️



では、また次の
群青と真紅 77話 でお会い致しましょう


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