群青と真紅 2【《最終章⑤》Forever and always.】 | Yoっち☆楽しくグテを綴る♡

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テテとグクの Me Myself写真集にインスピレーションを得て【群青と真紅】をブログ内で執筆中です️





前回の物語
物語の続きが始まります✨✨✨



【二人の群青と真紅】


 挙式後のバルコニーでのお披露目が終わり、アポロンの間から、玉座の間に移動をしたテヒョン達は、ここで記念撮影に臨んだ。
最初にテヒョンとジョングクの二人で撮影をし、次にベストマンのアンジェロとトーマスがそれぞれ、二人の隣に並んで撮影をした。
更に国王と一緒に撮影をすると、大公とセオドラ卿と撮った。
そして最後に、お互いの親族や友人達と並んで撮影は終わった。
 

 次に国賓や大臣、挙式に参列した招待客を招いての宮中昼餐会だ。レセプション等に利用される、宮殿の中でも最も大きく、格調高い大広間に宴席が用意された。
 皆のグラスにシャンパンが注がれると、ジョングクのベストマンを任されたアンジェロが、乾杯の音頭を取った。
「大公子殿下、ジョン、本当におめでとうございます。お二人の《相手を尊敬し、敬愛し、真摯に向き合われる》お姿を間近に見ていた者として、この日を無事に迎えられた事を我が事のように嬉しく思っています」

テヒョンとジョングクはじっとアンジェロを見つめていた。
「どうか末永くお幸せでいて下さい。それでは麗しき新郎達に!」
「「新郎達に!」」
アンジェロがグラスを上げると、続けて一斉に乾杯の声が上がった。
招待客達が祝の杯を上げる中、テヒョンとジョングクはアンジェロにグラスを向けて礼をした。


 食事の合間は、テヒョンもジョングクも国賓や大臣達と談笑が続き、予想していた通り、食事には一切手を付けることが出来なかった。なので当初から考えていた、困っている者達に早く提供させるということで、給仕に速やかに下げるよう指示を出した。
 祝宴の席はどこも和やかで、誰もが笑顔で食事を楽しんでいるようだった。
各国の国賓は、多少は外交を意識して来英していたのだろうが、テヒョン達と話をしている際には、社交辞令と感じるような言葉はなく、心から祝ってくれている気持ちが感じられた。


 祝宴のテーブルにデザートが運ばれる頃、侍従長がテヒョン達の席にやって来た。
「両殿下、そろそろお時間でございます。ご出発のお支度をなさって下さいませ」
「もうそのような時間か?」
テヒョンとジョングクが席を立つ。
「大公子、大公子公婿(こうはい)両殿下、ご退出でございます」
侍従長が二人の退出を告げると、談笑をしていた招待客達は拍手で二人を送った。

これから二人は《新婚旅行》に向かうのだ。
「私達はこれで失礼致しますが、皆様にはまだごゆっくりと、最後までご歓談下さいますように。
そして、本日は私とジョングクの記念すべき喜びの時を見守り、祝って下さってありがとうございます。私達からも皆様の末永い幸せを心からお祈り申し上げます」

また再び拍手が起こる。
ジョングクがテヒョンの隣で、右手を胸に当てて会釈をした。
 二人が大広間を出るとデイビスが控えて待っていた。その隣にはスミスとハンスもいた。
「テヒョン様とジョングク様の新婚旅行には、私も同行致します」
スミスは祝賀の席にいたのだが、早目に離席して着替えていた。すっかりキム公爵家の執事の顔に戻っていた。
「デイビスと共に、お二人の旅行中のお世話を致します」


「ジョングク様、、、」
ハンスが声を掛ける。
「ハンス、、、」
「私のお役目はここまででございます。キム公爵の・・・大公子殿下の伴侶として、どうかお幸せにお過ごしくださいませ」
ハンスの声が震えた。
「ハンス、、長い間私のそばにいてくれてありがとう、、感謝してもしきれないよ」
ジョングクはハンスを抱き締めた。
テヒョンとスミスとデイビスが、黙ったまま二人を見守った。

ハンスはそっとジョングクから身を引くと、テヒョンに笑顔でこう言った。
「ジョングク様を宜しくお願い申し上げます」
そして深々とお辞儀をした。
「うん。君達の大切な《家族》を生涯を掛けて大切にするよ」
ハンスは安堵したような笑顔になった。
「スミス様、デイビス殿、宜しくお願い致します」
今度は公爵家を守る側の二人にも頭を下げる。スミスはハンスに手を差し出すと固く握手をした。伯爵としてのジョングクを立派にサポートしてきた、ハンスの執事としての誇りに敬意を示したのだ。

「君がとても可愛がってもらっていたのが、本当によく分かるよ」
「はい。私にとってハンスは、父同様かけがえのない家族です」
「うちのスミスと同じだな。これからも、ちょくちょく会いに行ってやるといい」
「ありがとうございます。ご理解頂けて嬉しいです」
「当たり前だろう?夫の家族なら僕にとっても家族だよ・・・うわっ!」
ジョングクがテヒョンをギュッと抱き締めた。

「お二人共、じゃれ合っている場合ではございませんよ。急ぎませんと」
「違う!家族愛の話をしていたのだ」
テヒョンがムキになって反論したので、ハンスが笑った。
「もう存分に仲がよろしい所を見せて頂きました。それではこれで私はセオドラ様の所へ戻ります」
「父上を頼む」
「はい。両殿下、お気を付けていってらっしゃいませ」
ハンスは再度深々と頭を下げた。


 テヒョンとジョングクは、それぞれの部屋で着替えをした。
ジョングクは王室の一員になって、改めて王宮に自室を与えられた。チョン伯爵家として設けられていた部屋は、セオドラ卿の侯爵家の部屋に改められた。
 
 デイビスがテヒョンの着替えを手伝い、スミスがジョングクの着替えを手伝う。この時ジョングク専属の従僕が、スミスに付いて仕えた。
「ジョングク様、この者がこれからキム公爵家での、あなた様のお世話をさせて頂きます」
「殿下、初めてお目に掛かりますネルソン・ランバートと申します。今日からしっかりとお仕えさせて頂きます。今回のご旅行にも同行させて頂きます」

「うん。宜しく」
そう言って、ジョングクは手を出した。
王族である主人の立場から、握手を求められたことで一瞬驚く。しかし、すぐに応じて頭を下げた。
 ネルソンという従僕は、ネルソン子爵という貴族の長男で、代々王室に仕えている家柄の出身だった。ジョングクの婿入りが決まってから、国王からの推薦でずっとキム公爵家で研修を受けていた。
しかし、いくら自分が貴族の出だとしても、従僕に対して握手を求めるなど、絶対に有り得ないことだった。
 
その研修中ネルソンは、スミスからキム公爵家の人々は、身分の違いで人間性を測ることは絶対しないと聞かされていた。だから、しばしば王侯貴族のしきたりとは違う対応をされる事があるが、臆せず応えるようにとも併せて言われていた。
だけれどこんなに早く、遭遇するとは思ってもいなかった。ましてやキム公爵家に婿入りしたばかりのジョングクからだ。
ネルソンは、ジョングクも人間味が溢れる人柄であると感じた。
だからこそテヒョンとジョングクが、よくある政略的な結婚ではないことを悟った。


 国王専用の馬車寄せに、長距離用の馬車が停まっていて、テヒョンとジョングクを待っていた。
二人の荷物は数日前に既に滞在先へ送られており、出発日のこの日は新婚の二人と、お付の者だけが馬車で目的地に行くだけだった。
勿論、馬車の周りには近衛騎兵連隊がしっかり護衛する事になる。
 旅行用の衣装に着替えた二人が、馬車寄せにやってきた。
デイビスとネルソンが馬車の扉を開けて、二人の乗車を手伝った。

 テヒョンとジョングクが馬車に乗り込んだ後、スミスとデイビスとネルソンはすぐ後ろの馬車に乗った。全て支度が整った所で出発する。
「君と馬車で旅行をするのは、領地巡りの旅行以来だな」
「そうですね。あの時同行させて頂けてとても嬉しかったです」
「ふふ・・・僕は君を独り占め出来て幸せだった」
二人のくすぐったいような笑い声が、馬車の中を甘い雰囲気にする。

柔らかくもたれ掛かるテヒョンの肩をジョングクは優しく包んだ。そして、視線が絡み合うと自然に唇が重なった。
「今日は伴侶同士、僕達は家族として行けるのだな」
「そうですね、、、とても嬉しいです」
二人の馬車は、終始誰も入り込むことが出来ない、そんな空気に包まれていた。
二人が一つの家族になる事をずっと夢見て、願って来た事がようやく叶ったのだ。

「スミス様、お二人のお馬車に、従者が一人も同車しなくて宜しかったのでしょうか」
ネルソンが心配をして訊いてきた。
「お二人共新婚でいらっしゃる。気を利かせて差し上げたのだ」
「なるほど、そういうことでございましたか」

「・・・まぁ、もし同車していたとしても、乗らなければよかったと、必ず後悔するであろうがな」
スミスの言葉にデイビスが少し吹いて笑った。キョトンとするネルソンに、
「その内に《洗礼》を受けることになりますよ」
とデイビスが付け加えた。ネルソンは余計にわけが分からなくなった。
「あのお二人は、幾重の困難を乗り越えて結ばれた、尊い絆をお持ちなのだ。王侯貴族の中でも珍しい結びつきでいらっしゃる。そう心得ていれば宜しい」
「はい」

ネルソンは、スミスのその言葉には納得出来た。テヒョンとジョングクには、特別な何かを感じさせるものがある。
テヒョンの崇高さやジョングクの功績を知ってはいるが、それだけではない。誰が見ても心揺さぶられるのは、二人の人柄に他ならない。国民の熱狂ぶりを見れば分かる。



 王宮では、テヒョンとジョングクの結婚式に関わる行事が全て終わり、国王と大公とセオドラ卿が国王の私室でワインを飲んでいる。
「素晴らしい結婚式でしたね」
「はい。無事に終わり安堵しましたら、一気に疲れました。私も歳ですな」
「私も大公殿下と同じでございます」
「あの二人は本当に色々な事がありましたからね。二人並んだ晴れ姿を見た時は涙が出そうでした」
「陛下には沢山ご心労お掛け致しました。ありがとうございます」
「私からも御礼申し上げます」
大公とセオドラ卿が揃って頭を下げだ。

「いや、私にとっても特にテヒョンは弟と変わりませんし、ジョングクも親しい友人ですからね。公人としてより身内として進めて来たようなもの。いささか公私混同していないかと、苦言が出るのではないかと思っていましたよ」
「親の立場からしたら、誠に有難いことでございます」
「叔父上もセオドラ卿も、これで一安心ですね」

「既に成人になってはおりますが、結婚して独立をする事で、初めて親の手から離れるという感覚ですな」
「誠に大公殿下の仰る通り。私は更に何か空虚な感じも致します」
「なるほど・・・では、セオドラ卿にも何か公務を与えて、寂しさを紛らわしてあげなければ」
「おっと、陛下の前では、あまり余計な事は申し上げない方がよいですな」
三人は笑った。

「しかし今回の新婚旅行は、どうしても《あの場所》がよいと言うので聞き入れはしたが、公務の延長のようで、本当に良かったのか、、、」
国王はテヒョン達が、遠慮をしたのではないかと思っていた。
「よほど思い入れがあるのでしょう」
「そうですね、、、きっかけはあの場所だということらしいですから」
大公とセオドラ卿は、その選択がテヒョンとジョングクらしいと、二人を微笑ましく思った。

「今頃は最初の宿泊地に着いた頃だな」
国王達三人は夕暮れを迎え、仄かに着き始めた外の灯りを窓越しに見て、二人の旅路に思いを馳せた。
 朝から尊い二人の貴公子の婚礼で、とても賑やかだったロンドンの街も、日暮れと共に静かな時を迎えた。
 テヒョンとジョングクは目的地に着くまで、夜には途中で宿泊を重ねながら、ゆったりと旅を楽しんだ。


 そして_______
ようやく懐かしいあの場所に到着した。


 馬車を降りた二人は、所々、吹雪いて出来たと見られる雪化粧の建物に迎えられた。
「秋の日のエジンバラの離宮とは、また違った美しい景色ですね」
「そうだな、この地域の冬はとても厳しいから、なかなか訪れる事はないのだが、建物といい、庭園といい白銀の世界がとても素晴らしい」
二人の会話で舞い上がる呼気が、いかにも寒そうな真っ白さだった。

 テヒョンとジョングクが選んだ新婚旅行先は、二人の出会いの場所となった、あのエジンバラの離宮だった。

 真冬のエジンバラは、雪と氷でかなり厳しい寒さの中にあった。しかしその極寒の厳しさを忘れてしまう位、白く覆われた景色は幻想的でとても美しかった。
「さあさあお二人共、中へお入り下さい。そのような軽装では身体が冷えて、お風邪を召してしまいますよ」

スミスは、到着してからずっと景色を眺めているテヒョンとジョングクを促した。
「テヒョン、手を貸してみて」
ジョングクはさり気なく言って、中へ入りながらパッとテヒョンの手を取ると、自分の頬に当てた。
「すっかり冷たくなっていますね」

テヒョンは、不意に名前だけで呼ばれた事に胸が弾んだ。
ジョングクはその様子に気付いて、腰に手を回しながら、
「名前だけで呼ぶのは、これからはベッドの中だけではありませんよ」
と耳元で囁いた。
「・・・!!??」

寒さで紅くなっていたテヒョンの頬と耳が、更に紅くなったような気がした。
「この離宮に着いたら、あなたの夫として名前を呼ばせて頂こうと決めていました」
「うん・・・」
テヒョンは嬉しそうに、ジョングクの肩に頭を預けた。二人は寄り添いながら部屋に向かった。

 テヒョンの部屋は、何も変わらずあの時のままだった。
宮廷職員が扉を開けると、ふんわりとテヒョンの好きなサンダルウッドの香りに迎えられた。テヒョン達の到着に合わせて、室内を担当している職員が焚いてくれていた。
「なんだか本当に懐かしいですね。調度品も香りもあの時のままです」
「模様替えはしないように頼んだのだ」

王族が離宮を訪ねてくる時には、公私どの来訪でも、それぞれの私室の模様替えを季節に合わせて行うのが恒例だった。
しかしテヒョンは思い出の為に、そのままにしておいて欲しいと申し入れをしていた。
 また本来であれば、結婚をした事で王室から二人の為に、新たに部屋を与えられる予定だった。しかしそれを辞退し、寝室だけを二人で使えるように、改装依頼をしただけだったのだ。


 しばらくすると夕食の時間になり、やはりあの時と同じように、部屋のサロンに食事が運ばれてきた。
「初めてここで一緒に食事をした時、陛下主催の会食と同じコースメニューだったな。何を食べたか覚えているか?」
「いいえ。あの時はもう色々舞い上がっていて、何を食べたのかなど覚えていませんよ」
「そうか?そのようには見えなかったけどな」
「舞い上がりながらも、お話がとても楽しかったのは覚えています」
「僕も凄く楽しかった。それに二人ともよく食べたよな」
「本当に・・・」

思い出話に花が咲く。そして懐かしいエピソードが、あの日のように食を進ませた。
 デザートに差し掛かった頃、ノックがしてデイビスが応対する。
「両殿下、料理長がご挨拶に参りました」
「失礼致します」
「あ、あなたはプチ・パレスにいた時の!」
「はい。覚えていて下さいましたか」
「勿論ですよ!」
挨拶に来た料理長は、テヒョンが落馬をして、プチ・パレスで療養中に食事を担当してくれたシェフであった。

「両殿下が新婚旅行でエジンバラにいらっしゃると伺いまして、真っ先にご滞在中の厨房を任せて頂けるよう、宮廷に願い出ました」
「そうですか。あの時の約束を果たしたかったのですが、公務ではないので、私から依頼するわけにもいかなかったのですが、料理長自ら申し出て下さったのですね。ありがとう」

「テヒョン様、宮廷職員含め、今回この離宮でのクルーは皆、あのプチ・パレスで、療養中のあなた様のお世話をしておりました者達でございます」
スミスが新しい紅茶を出しながら言った。
「スミス様が仰る通り、皆再び、それも新婚旅行中のお世話をさせて頂ける事、とても喜んでおります」

「私達もとても嬉しいよ。料理長から皆に宜しくと伝えて下さい」
「はい。かしこまりました。
両殿下、改めましてご結婚誠におめでとうございます。今夜の料理も全て召し上がって下さり、とても料理人冥利に尽きます。ご滞在中なんなりとご要望を仰せ付け下さい」
「ありがとう。楽しみにしていますよ」

料理長はよほど嬉しかったらしく、にこやかにお辞儀をすると部屋を後にした。
 テヒョンとジョングクは、お互いに幸せな充実感を味わっていた。
ロンドンを出発してから、途中の駅や泊まった宿泊先で、居合わせた国民達からお祝いの言葉を沢山掛けられた。
エジンバラに到着してからも、土地の人々から大歓迎を受けたのだ。

「僕達の幸せを皆で祝ってくれることが、感動を覚えるほど嬉しいなんて・・・」
「自分の事のように喜んでくれているのが、ひしひしと伝わってきます。有難いことですね」
「お二人の幸せが、国民皆の幸せなのでございますよ。さぁ!只今デイビスとネルソンが入浴の支度をしております。もうじきお迎えに参りますでしょう」

 スミスは、食器類を下げるためにやってきた職員達を部屋へ入れた。
次々とテーブルの上が片付けられて行く中、デイビスとネルソンも部屋に入ってきた。
「ご入浴の支度が整いました」
「では行こうか、ジョングク」

 テヒョンにはデイビス、ジョングクにはネルソンが付いて浴室まで移動する。
その間、スミスは宮廷職員達に、二人の寝室を温めて、準備を整えるよう指示を出した。
真冬の離宮はかなり冷える。入浴後は尚更湯冷めしやすい為、部屋の温めだけではなく、ベッドの中にベッドウォーマーを入れて、アイロンのようにシーツの上を滑らせて温めたり、湯たんぽを幾つか置いたりした。


 入浴後、二人はそれぞれのドレッサールームでナイトウェアを着ると、その上に指定しで持参していた《二人の大切なガウン》を羽織った。
デイビスとネルソンは、各々仕えるテヒョンとジョングクの支度を始めた。
髪を念入りにとかし、肌もローズウォーターで整え、いつもの入浴後のお手入れに比べ、より大袈裟なくらい入念に手入れに専念した。

 全て恭しく進めているのは、結婚の儀式の最後である《初夜》を離宮の初日の夜に迎える為であった。
普段は形式張った儀式等を苦手としている二人だったが、今回の結婚に関わる儀式は厳粛に受け止めていた。
そして、テヒョンとジョングクは、二人が出会った思い出のこの地を聖地として捉えていた。



 宮殿内は灯りが淡暗く落とされ、静かだった。デイビスは燭台を持って廊下に出ると、テヒョンを先導する。
別の廊下ではネルソンがジョングクを先導した。
二人の部屋には先にテヒョンが入る。
部屋の中は既に灯りが落とされていた。
唯一の明かりは、居間のテーブルの上に置かれた、カンデラブラの蝋燭だけだった。

 デイビスは寝室の扉を開けて、テヒョンを中に通した。
「わたくしはここまでで失礼致します。どうぞよい夜を」
初夜のベッドルームには、新婚の二人以外は入室出来ないしきたりだ。
寝室の明かりも淡い灯りだけになっていた。
 ベッドは既にベッドカーテンが引いてあり、中が見えないようになっている。
テヒョンはベッドカーテンをめくり、中へ入った。

 中のベッドは、マットレスの下からぐるりと、紫色のシルクリボンが掛けられていて、羽毛の掛け布団と厚手の毛布ごと、中央で美しく結んで装飾がされていた。
テヒョンは、ベッドに腰を下ろしてジョングクを待った。
 しばらくすると部屋のドアが開いて、寝室に人が入ってくる気配がした。サラサラと衣擦れの音がベッドまで近付いてきて、テヒョンとは反対側のベッドカーテンが開いた。

座ったまま振り返ると、常夜灯の明かりにジョングクの引き締まった表情が見えた。テヒョンと目が合うと柔和な笑顔に変わる。
テヒョンが立ち上がり、二人はベッドを挟んで向かい合って立つ。
結ばれたリボンの端をそれぞれ掴むと、同時に引いて結び目を解いた。
掛け布団と毛布をめくり、テヒョンとジョングクはベッドに上がる。

ジョングクがテヒョンの顔を両手で包み、そっと唇を合わせた。それがスイッチになったかのように、テヒョンがジョングクのガウンを剥いだ。
「ダメダメ、私の挨拶がまだですよ」
「ん〜〜、ならなぜ口づけたの?」
テヒョンは制止されて拗ねるように言う。ジョングクはゆっくりと上目遣いで、
「・・・・我慢出来なくて」
と言った。
「こら、なんで君だけ許されるんだよ」
可笑しくなって二人で笑う。

ジョングクは真顔になると、テヒョンの両手を取って自分の胸に寄せた。そして丁寧に伝える。
「 Forever and  always 」
ハンサムな言い方に、テヒョンはときめきを覚える。
「うん、いついつまでもね」
テヒョンは甘えるように応えて、今度は自分からジョングクの唇を塞いだ。

二人が着ていたものは、次々に剥がされていく・・・。
肌と肌が密着して合わさると、共に身体の芯に情熱の火が灯された。二人は全身で愛を誓い、お互いを捧げようとしている。
テヒョンとジョングクは、大切なエジンバラの聖地で、名実ともにお互いの夫としての契りを結ぶ。

狂おしい程の愛しさと、抑えきれない激情が相まって、互いの身体へぶつけていく。
「テヒョン・・・テヒョン・・・」
魘されているみたいな声で求められて、テヒョンの身体が煽られる。ジョングクの腰にスラリと伸びた脚が絡みついた。
気だるさを帯びた心地よい波が、テヒョンの心髄を何度も去来する。そしてジョングクの下で、ついに甘美な声を漏らして堕ちていく___。

悦びの息づかいの中で、テヒョンの視界に天蓋の刺繍が見えた。
《アポロンとヒュアキントス》の神話を表すその刺繍は、群青のベルベットの生地に、金糸の太陽(アポロン)と、ルビーが真紅の糸で編み込まれ描かれている。

アポロンの光芒の先から滴り落ちる、ヒュアキントスの鮮血を表した、花びらのようなルビーの先には、沢山の紫色の百合が描かれ、豪華な天蓋を彩っている。
ベッドカーテンの隙間から、微かに入ってくる蝋燭の明かりだけで、まどろむテヒョンにもその素晴らしさはよく分かった。
ジョングクの命を救う為に、覚醒させた自らの血を捧血した時の事が脳裏に蘇った。

 テヒョンの顔の上に、ジョングクの顔が重なった。上気した彼の表情が艶を帯びてテヒョンを見下ろしていた。
「可愛い・・・あなたが本当に可愛くて仕方ありません」
ジョングクが潤んだ瞳でそう言った。
「君も、とても素敵だった・・・」
テヒョンは恍惚とした視線を向けて言った。そしてジョングクの髪を指で梳きながら、
「・・・もう一度・・・」
と求めた。



つづく__________



【本文注釈】

(※)カンデラブラ(Candelabra)
画像はお借りしました
特徴: 1本の支柱から枝のようにアーム(腕)が分かれ、3灯、5灯、7灯など複数の蝋燭を立てられる大型の燭台