群青と真紅 57【領地巡りの旅行①】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

年明けから1週間が経ちました
時間の経過が本当に速い💦💦💦

元旦から色々な事がありましたが、みなさんいかがお過ごしでしょうか
現実の無情さに負けないように
Love Myself を忘れずにいきましょう

今年もキム公爵とチョン伯爵を宜しくお願い致します❤️💙💜


前回の物語
今回物語の中で出てくる、旅行用カトラリーの参考資料です☺️
実はこれ、マリー・アントワネットの旅行用食器セット✨✨✨
日本でマリー・アントワネット展があった時に、実物を見たことがあります👍
めちゃくちゃ真剣に見入ったよ(笑)



物語の続きが始まります✨✨✨


【旅支度】


盛大な内にトーマスとフランシスの結婚披露宴が終わった。
次の日には二人の結婚式にテヒョンとジョングクが参列したことと、更には披露宴でその二人の貴公子がダンスを披露したことまでも社交界中に広まった。
この話は貴婦人方の羨望の渦の中、かなり長いこと語り草になった。
「私の友人からもジョンソンご夫妻の結婚式での殿下とチョン伯爵の事が話題に出ました。」
デイビスがまた例によってホットココアをテヒョンに出しながら話した。
「本当にそんなに話題になっているのか?」
「はい。そのうちに結婚式の御参列をお願いされるのではありませんか?」
「いや、例え依頼が来たとしても親しくしていない所は無理であろう。」
テヒョンは先程からデイビスがまとめた旅行の荷物のチェックをしていた。
「父上から頂いたブーツを忘れてはいないな?」
訊きながらココアのカップを取ると一口飲んで、にっこり笑ってまたテーブルに置いた。
今回も《認定》は頂けないようだ。デイビスには想定内の結果だったので、何事もなかったかのように応える。
「大切な御品物ゆえ一番にご用意致しましたので大丈夫でございます。」

いよいよ週末からキム公爵家が所領する領地を巡る旅行が始まる。
一週間前からデイビスはテヒョンの荷物をリスト化して、それを元に旅行用のトランクに揃え始めていた。
約三週間を予定にした旅の日程だった。
旅行の一ヶ月前には宿泊先の手配、訪問先への事前連絡、各現地の警備警護の手配と入念に進められていた。
プライベートで領地を巡るとはいえ、一国の王位継承権を持った王子の移動には、それなりの準備や手続きが必要だった。テヒョンは《国のもの》でもあるからだ。
更に、今回の旅行は側近として同行するジョングクの軍務の予定を優先して日程が組まれた。国王直属の師団の長である為、休暇申請の許可を国王から貰う必要があった。

《大佐》は陸軍の行政管理を司る。
ジョングクは表向きには組織上の上官がいる。留守の間の総指揮を引き継ぐ必要がある為、直属の上官となるウィルソン准将に引き継ぎ、現場指揮官のベネット中佐には准将と連携を取り、万が一の有事勃発時の部隊編成と統帥を任せた。
准将、大佐、中佐が揃い引き継ぎを行う。
「チョン大佐、くれぐれも道中お気をつけて大公子殿下とよいご旅行を!」
「ありがとうございます。ウィルソン准将、ではよろしくお願い致します。」
ジョングクは軍旗をウィルソン准将に渡した。師団や部隊が今現在誰の直接指揮下で統制を取っているのか分かるように、長期に組織を離れる際には自身が管轄する師団の軍旗を預けなければならなかった。
「ベネット中佐、今からはウィルソン准将より直接指示を受けるように。」
「はい!承知致しました。大佐、どうぞお気をつけて行ってらっしゃいませ。」
三人は細かい引継ぎをすると敬礼をして終えた。
ジョングクはコートを取ると司令官室を出た。
「大佐、お送り致します!」
扉の外には近衛兵がいてジョングクを馬車まで送った。


テヒョンはジョングクの休暇申請が下りてからずっとご機嫌だった。何しろ三週間は常に一緒にいられるのだ。
二人で練った旅の日程や名所巡り、そして何よりも領民たちとの交流に思いを巡らせた。
出発の二日前、チョン伯爵家からジョングクの荷物が運ばれてきた。これでテヒョン、ジョングク、スミスの荷物が揃う。
スミスは今回の旅行の総責任者として、御者達、警護の者達と経路の確認と途中の休憩に使う駅の確認等を行った。
そして出発前日、ジョングクがテヒョンの宮殿にやってきた。

「ジョングク待っていたぞ!」
「おはようございますテヒョン様。いつにも増してごすこぶるお元気ではありませんか。」
テヒョンはジョングクの肩に腕を掛けて出迎えた。いつもと違うはしゃぐ様子をジョングクは珍しく思った。
「今日から君とずっと一緒にいられる。」
素直な想いと共に満面の笑みをジョングクに向けた。子どものような屈託の無い表情に釣られて笑ってしまう。いつも真っ直ぐ懐に入ってくるテヒョンの可愛らしさが愛おしかった。
テヒョンはジョングクが来てからはずっとそばを離れなかった。
「ねえ、」
「はい。」
「君のホットココアが飲みたいな。」
「今お淹れ致しましょうか?」
「うん、頼む。」
ジョングクはすぐに厨房へ向かった。テヒョンから頼まれ事をされるのが嬉しかった。

厨房に入るとデイビスがいた。
「これはチョン伯爵。どうなさいました?」
「テヒョン様にホットココアを頼まれたのだ。」
「そうでございますか・・・」
デイビスが何か躊躇するような様子でいるのでジョングクが訊ねた。
「どうしたのだ?」
「あの・・・チョン伯爵に不躾ながらお願いがございます。」
「うん、なにかな?」
「ホットココアの美味しい淹れ方を教えて頂きたいのです。」
「え?ホットココアの?」
「はい。もう何度か大公子殿下にお出ししているのですが、なかなか認定されないのです。」
「認定?いやいや私が淹れているホットココアには何も特別な淹れ方などはないぞ。」
「しかし、殿下がお認めのホットココアはチョン伯爵のものだけと仰られました。」
「テヒョン様からからかわれているのではないのか?」
「いいえ、チョン伯爵への称賛には真剣な面持ちでいらっしゃいましたから。」

確かにテヒョンはいつも大絶賛でホットココアを飲んでくれている。今も是非にと頼まれている。
「チョン伯爵、ホットココアを淹れられる所を拝見させて頂いても宜しいでしょうか?」
「ああ、構わないよ。」
というわけで、ごくごく普通に準備をして淹れ始める。デイビスはポケットから筆記用具を取り出し真剣にジョングクの動きからなにから記録していった。
あまりにもデイビスが根を詰めた様子で見ているので調子が狂ってしまった。
「あのね、デイビス。」
「はい!」
「真剣なのはいいのだけれど、逆にそれが駄目な場合があるぞ。」
「どういうことでしょうか・・?」
また目つきに力が入ったのでジョングクは笑った。
「テヒョン様は杓子定規な事があまりお好きではない。だから君が淹れたホットココアに優劣をつけるような《認定》もされることはないと思う。」
「ええ?」
デイビスの顔が曇る。

「まぁ座りなさい。」
ジョングクはそばにあった椅子を勧めた。そしてマグカップにホットココアを注ぐとデイビスの前に置いた。
「どうぞ。」
「でも、これは殿下の・・・」
「いいから。」
「はい、、では頂きます。」
デイビスは遠慮しがちに一口飲んだ。直ぐに表情が強張る。
「どうだ?」
「はい・・・あの・・・・」
言いづらそうな顔をした。
「正直に言っていいぞ。」
「はい、恐れながら、、、私には苦味が強くて・・」
「うん。そうだろうな。テヒョン様はココアの苦味がお好きだ。だから砂糖は少な目なのだ。」
「そうでございましたか。」
「《おそば付き》がお口に入る物をお出しするというのは、普通に美味しいものをご用意するのとは違うぞ。」
ジョングクの言葉にデイビスはハッとする。
「主人の嗜好をよく観察することだ。テヒョン様はお菓子がお好きな方だから、逆にお飲み物には甘さをあまりお求めにはならない。苦味を楽しまれるのだ。」
デイビスはジョングクの細やかな視点に感心した。

「君が普段従僕としてテヒョン様のお世話をするのは、職務としての勤めを果たす為ではなく、テヒョン様が快適に過ごされるようにして差し上げる為だろう?」
「はい。」
「君は一流の仕事が出来ると聞いている。だが、型にはまった従僕としての模範になるだけではだめだ。目の前の主人ただお一人にとって完璧でなければ意味がない。」
デイビスはジョングクの言葉に猛省した。
「ありがとうございます。チョン伯爵。原点に戻って改められた気が致します。」
デイビスは先程の曇り顔からガラっと表情が明るくなった。評価されたくて頼まれてもいないのに、独りよがりでホットココアをテヒョンに出していた事も反省した。
「さあ、テヒョン様の所に早く行かねばな。」
「そうでございました!申し訳ありません私の為に。」
ジョングクは『いや。』とだけ言って笑った。
二人はホットココアを持って急ぎテヒョンの部屋へ向かった。

デイビスが扉をノックして開くとジョングクがホットココアを持って入る。
「お待たせ致しました、テヒョン様。」
「ありがとう。」
ソファで寛いでいたテヒョンはテーブルに座る。目の前でココアを注いでくれるジョングクを見ていた。
「はい、どうぞ。」
両手でカップを受け取り一口飲んだ。
なんともいえない充足感の表情でココアを味わっているテヒョンを見て、デイビスは目の前の二人には、到底立ち入れない信頼関係と絆が強く結ばれている事を実感する。端で見ていてもこちらが幸せな気持ちになる雰囲気に包まれていた。
ジョングクが淹れるホットココアの絶品さも、きっとそういった《特別な相手》への心の込め方にあるのだろうと悟る。
自分はどう大切な主人に礼節と心を込められるか、デイビスはテヒョンとジョングクを目の前に、改めて真剣に思いを巡らせた。



【旅行初日】


出発の朝。
テヒョン、ジョングク、スミスの荷物が旅行仕様の馬車に積まれる。
今回は近場の領地を巡るのだか、車中で食事が出来るように、旅行用のカトラリーセットも初日の昼食と共に積まれた。
スミスが馬車の前でテヒョンとジョングクを待った。
暫くして、テヒョンとジョングクは一緒にやってきた。
「テヒョン様、頂きましたコートをご覧下さい。」
スミスが両手を広げて見せた。
「よく似合っているではないか。」
「本当にありがとうございます。」
「素敵ですよ。」
ジョングクも褒めた。スミスは照れて、
「さあ、お乗り下さいませ。」
と早く馬車に乗るよう二人を促した。
「なんだ、自分から見せておきながら照れているではないか。」
テヒョンの言葉にジョングクとデイビスが笑った。
馬車に乗った事を確かめて、デイビスが二人の手回り品が入ったバッグを一緒に乗せた。スミスが最後に乗り込む。乗り込みながらデイビスに伝えた。
「では行ってくるぞデイビス。後はオルブライト伯爵から指示を仰ぐのだぞ。」
「はい。かしこまりました。」

馬車の扉が閉められると、警護の二人が馬に騎乗し馬車の後ろの両側に就いた。
「行ってらっしゃいませ!」
デイビスが頭を下げて見送る。と、同時に馬車は出発した。
いつも出掛ける時のように庭園を抜けて正門から出ると、ロンドンの市街地を北に抜けて行く。
「これからのご予定でございますが、本日はベッドフォードまで参ります。そこでご一泊なさって明日、最初のご領地に入ることになります。」
「分かった。」
テヒョンはスミスからの説明を受けて、すぐジョングクとベッドフォードについて話を始めた。どうやら二人で現地について色々調べていたらしい。スミスはこの二人と一緒の馬車には同車するまいと思った事を思い出した。だが今更どうにでもなるわけではないので、敢えて考えないことにした。
馬車は真冬のロンドンを北上し最初の駅に着く。

駅では馬に水分補給と休憩をさせる。
テヒョン達は馬車の中でランチを摂った。
「まるでキャンプで食事をしているみたいだな。」
テヒョンが楽しそうに言ったので、ジョングクとスミスは頷きながら笑った。
「でも、ジョングクにとっては野営訓練の延長に思えてしまうか?」
「いいえ、ご心配には及びません。テヒョン様とのお食事はどこでもとても楽しいですから。」
その言葉にテヒョンがにっこり微笑む。
スミスが目の前の二人を交互に見て、
「私はお邪魔ではありませんか?」
と、わざと訊いてみた。
「何を言っているのだ!そんなわけないだろ・・・」
テヒョンが多少焦り気味でムキになって答えたので、スミスは笑いを噛み殺した。ジョングクも誤魔化すように車窓を向きながらワインを飲んだ。
『お可愛らしい方々だな。』スミスは更に笑いを我慢した。

食後、馬車から降りて駅構内を歩いたりして身体をほぐす。
駅には旅行者向けにお菓子や土産物等を売っている露店がいくつか並んでいた。
「そちらの旦那様、ドーナツ(doughnut)はいかがです?」
物珍しく露店を見て歩いていたらテヒョンに声が掛かった。
「私のことか?」
「はい。車中でのおやつにぴったりですよ。」
テヒョンは興味津々で恰幅の良いおかみの露店に近づいて行った。
見ると店先の籠の中に砂糖がまぶされたリング状の揚げ菓子が並んでいた。
「これはどうやって作るのだ?」
「まぁ!なんて綺麗なお方だこと!じゃあ作るとこを見せましょう。」
おかみは小麦を練ったものが入った布製の袋を掴んで、お玉に輪を描きながら絞り出すと、それをそのまま油の中に入れた。ジュワジュワと気泡が立ってしばらくすると自然に浮いてきた。

テヒョンとジョングクはじっと油の鍋の中を見入っていた。
おかみはトングでひっくり返すと、ドーナツがキツネ色に変わっていた。香ばしい匂いが立ち込める。
テヒョンが『わぁ!』と声を上げた。
ニ、三回ひっくり返した後アミに上げて油切りをして砂糖の中に入れてまぶした。
「美味しそうではないか!おかみ、それを三つくれるか?」
「ありがとうございます!じゃあみんな揚げ立てを差し上げましょう。」
おかみは追加で二つ揚げた。出来上がりを紙袋に入れて紙ナフキンと一緒に渡してきた。ジョングクがそれを受け取る。
「あら、こちらのお方もハンサムだねぇ〜。」
おかみの言葉にテヒョンがジョングクを見て笑った。
スミスはおかみに代金の3ペンスを渡す。
「まいどありがとうございます。旦那様方良いご旅行を!」
おかみはそう言ってテヒョン達に投げキスをした。三人は手を上げて応えた。

休憩を終えて馬車が出発をする。
「なかなか面白いおかみだったな。ドーナツというのか、作り方も面白かった!」
テヒョンにとっては駅や露店などは新鮮な光景だった。
「せっかくおかみが揚げ立てをくれたのですから、召し上がりましょう。」
ジョングクが紙袋から紙ナフキンで一つづつ包んでテヒョンとスミスに渡した。
「ではいただくぞ。」
テヒョンが大きくかじり付いた。唇の周りが砂糖だらけになったので、ジョングクとスミスが笑った。テヒョンはそれを舌で舐めて取る。
残る二人も気兼ねなくかじり付いた。
「美味しいですね!」
食後間もなかったはずなのに、三人はぺろりと食べてしまった。

「こういうのも旅の醍醐味というのだな。」
テヒョンが満足気に言う。するとジョングクはすかさず取りきれていなかった、テヒョンの唇の周りに残る砂糖を新しい紙ナフキンで取ってやった。
「ありがとう。」
「いいえ。」
二人は目を合わせて笑った。
「さ、では紅茶を淹れましょう。」
スミスはやれやれというように二人から視線を外すと、旅行用のポットから紅茶を注いだ。
紅茶を飲んで一息つくと、三人でカードゲームをしたり、仮眠を取ったりして馬車の時間を過ごした。

いつの間にか陽が傾いてくる。
陽の傾きと競うように馬車が進んで行くと、この日泊まる宿があるベッドフォードに入った。市門を潜ると古い古城がテヒョン達を迎えた。
「ベッドフォードに着きましたね。これはまたずいぶん時代を感じさせるお城ですね。」
ジョングクが車窓から横を通り過ぎる古城を見て言った。
「この城は一度破壊されて14世紀のスチュアート朝の時代に再建城されたものだな。」
テヒョンが説明をしながらジョングクにぴったりと近付いて一緒に車窓から古城を眺めた。
馬車が市街の中心部まで進んで、宿になるホテルの前に停まった。

ホテルの前には支配人とドアボーイやメイド等のホテルスタッフが一同に並び、テヒョン達の到着を迎えた。
「殿下、ベッドフォードへようこそお越し下さいました。私は当ホテルの支配人をしておりますエヴァンスと申します。」
支配人がうやうやしく挨拶をした。
「出迎えありがとう、エヴァンス。世話になりますよ。」
「精一杯御世話をさせて頂きます。」
支配人は入り口の扉を開けて、
「お疲れでございましょう。皆様方もどうぞ中へお入り下さいませ。」
と中へ入るように促した。
支配人が先導して五階建てのホテルの最上階にある貴賓室にテヒョン達を案内した。

貴賓室はリビングダイニングを真ん中に寝室が三つ付いていて、バスルーム、サニタリールームが二つあった。
テヒョンとジョングク、スミスは一室づつ寝室が使用できた。
スミスがテヒョンの寝室で着替えを手伝い、リビングのソファに案内すると、
「警護の者に明日のスケジュールの確認をして参ります。」
と、言って出ていった。

ジョングクも着替えを終えてリビングに出てきた。
テヒョンが自分の隣に座るようにジョングクに手で合図をした。
「お疲れではありませんか?」
ジョングクはソファに座り掛けながらテヒョンの頬に触れた。
「いいや、楽しい方が先で少しも疲れてはいないぞ。君は大丈夫なのか?」
テヒョンは頬に触れているジョングクの手に自身の手を重ねた。
「私も楽しませて頂いておりますので、疲れは全く感じておりません。」
「そうか、ならよかった。暫く軍務から離れるのだから、心身共に羽根を伸ばすといい。」
「ありがとうございます。」
テヒョンとジョングクがソファで寛いでいると、扉のノックの音がしてスミスが支配人と共に貴賓室に戻って来た。
二人は重ねた手を離した。

「失礼致します。間もなくお食事をご用意させて頂きます。食前酒をお持ち致しましたのでどうぞお召し上がり下さいませ。」
支配人の後からホテルスタッフが一礼をして入ってくると、グラスにシェリー酒を注ぎトレーの上に乗せてテヒョン、ジョングク、スミスに振る舞った。
「よし!こうして三人だけでいる時は、なるべく上下関係の仕来たりは無しで頼む。」
テヒョンがグラスを掲げて言った。
「はい、なるべくご希望に添えるよう努力致します。」
ジョングクが応えてグラスを掲げた。
「君は相変わらずまだ堅いなぁ」
テヒョンがケラケラ笑った。
「スミスもだぞ。」
「はい。努力致しましょう。」
テヒョンは日常を離れている時には開放的でありたいと思っていた。
特にジョングクとプライベートで一緒に居られる時は《国家の自分》ではなく、ただのテヒョンとしておりたいと願った。
ジョングクはその気持ちを察し、尊重してやりたいと思った。

テヒョン達が食前酒を楽しんでいる間に、隣のダイニングでは旅行初日のディナーテーブルが用意されていった。
貴賓室は夜遅くまで楽しそうに笑う声が響いていた。


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