群青と真紅㊽【伯爵家のクリスマス】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

スマホのタッチパネルに一部反応しない箇所が出るという不具合が出て、ブログアップが遅くなりました😭
やっと新しいスマホにしたのでアップ出来ます😆👍
お待たせしてすみません🙏


前回の物語




物語の続きが始まります✨✨✨



【テヒョンのクリスマスプレゼント】


日付は仕掛け花火と共に25日を迎えていた。
最後の閃光を見届けると、テヒョンは拍手で花火師を讃えた。見守っていた周りの者達も従って一斉に手を叩いた。
「ジョングクありがとう!とても素晴らしかったよ。」
「お楽しみ頂けましたか?喜んで頂けて私も嬉しいです。」
ジョングクは窓を閉めてカーテンを引くと、暖炉に向かい新しい薪を焚べた。
「お体冷えていませんか?」
テヒョンは首を振った。
「君がずっと僕の体を掴んでくれていたから寒くなかったよ。」

暖炉の前まで戻ってくると、クッションに座らず、
『ちょっと待ってて』と言うとテヒョンは一人で部屋を出て行った。
しばらくして戻って来て、後ろ手に何かを持ってジョングクの前に座った。
「これを君に。」
綺麗にラッピングがされた包みを差し出す。
「これは?」
「開けてみて。」
受け取って銀色のリボンを外して緑色の包装紙を解くと箱が出てきた。
一瞬テヒョンの顔を見ると、  小さく頷いて早く開けるよう促している。
箱の蓋を開けると中には黒い革製の手袋が入っていた。

「わぁ、、これを私にですか?」
「うん。はめてみてよ。」
言われるまま手袋を取り出してまず左手にはめてみた。
「ああ、暖かい・・・。中に羊毛が織り込んであるんですね!」
テヒョンがもう片方を取り出して、
「君の手はいつも僕を優しく包んでくれて、癒やして温めてくれるから・・」
ジョングクの右手にはめてやった。
「僕の代わりに温めてもらって。君へのクリスマスプレゼントだ。」
心遣いに嬉しさがこみ上げてくる。

「ありがとうございます。あなた様と思っていつも持って一緒に出掛けます。」
テヒョンはにっこり笑って頷くと、手袋の手の甲側の袖口を指差した。
見ると金糸で筆記体の《TJ》の組み合わせ文字が刺繍されていた。
「これ・・って・・」
二人のイニシャルだった。
テヒョンがジョングクの頭にそっと手を回すと、グイッと自分の肩に引き寄せた。
「いつも君のことを想ってる。僕はどんな時でもそばにいるよ。」
耳元で囁くテヒョンの唇が、冷たくなっていたジョングクの耳たぶに触れた。
一気に体中の血が騒ぎだして身も心も 温まる。

新しく焚べた薪が既に真っ赤に揺れている。
暖炉の前であらためて落ち着くと、二人はワインを開けて乾杯をした。
ふわりと流れる時の中で、テヒョンがほろりと酔いしれる。
「こうして1日の締めくくりに君がいてくれる・・・」
ゆっくりワイングラスを回してもう一口含んだ。
「今日はずっと気分がいい。」
「私も同じです。」
ジョングクの肩にテヒョンの頭がゆっくりと傾く。しばらくそのままお互いにグラスを何度もあけながら暖炉の火を眺めていた。
とくに言葉を交わさなくても、寄り添う感触だけで伝わってくるものがある。二人はお互いの温もりにも深く酔っていく。

ジョングクの肩にグッと重さが増した。覗くとスースーと寝息が聞こえる。テヒョンの無防備な寝顔に思わず顔がほころんだ。
傾いた手からグラスを離すと、眠っている頭を動かさないよう注意をしなからワゴンに置いた。
預けられた体にそっと腕を通して抱き上げると、そのままベッドまで運んで静かに寝かせた。
『う・・・ん』と声が漏れた。しかし目覚めていない事を見届けて、クローゼットに行ってパジャマを2組持ってきた。

テヒョンの着ているものをそっと脱がして寒くないように毛布をかける。その間にパジャマを広げ素早く着せた。療養中の世話で慣れていたせいか手こずらずに着替えが終わった。
自分の着替えも終わらせると、テヒョンの服と一緒に揃えてまたクローゼットまで持って行った。

ジョングクは戻って来ながら廊下を出て扉の横に用意されていた冠水瓶を取って来ると、テヒョン側のベッドのサイドテーブルに置いた。それから室内の四隅と飾り棚の燭台の灯りだけを落として回る。
部屋はツリーの灯りと暖炉の火と扉の常夜灯だけになった。
天蓋のベッドカーテンを閉めてやっとベッドの中へ入る。
目の前ですでに深い眠りの中にいるテヒョンを見て言い表し難い幸福を感じた。

久しぶりに見る寝顔は昨日までとは違う感慨深さが湧いてくる。想いを伝えた事で確実にテヒョンは人生に於いて特別な存在となったのだ。
そっと頬に触れるとシルクのような滑らかな肌が指先に心地いい。
何度も撫でているのに微動だにしない。
安心しきったその姿はジョングクの体内を巡る全ての血潮を刺激して、とても激しくテヒョンを求める衝動に襲われる。
理性を総動員させて激情と戦っていた。

このまま思いに任せてテヒョンとより深く絆を結んでしまう事は簡単に出来てしまうだろう。
だがそれは愛しく想う人の人生を大きく変えてしまう程《危険》を伴うことだ。
自ら一歩近く踏み出してしまった今、大切な人を守り敬愛していく術を見つけていかなければならない。
名実ともに《側近》としての技量が必要だった。
『納得して下さるだろうか・・・』無心に眠る姿を眺めていると、拭いきれない不安も感じた。

理由も告げずに自分の事情だけを押し付けるなんて不誠実であり、まして高貴な相手に対する態度としては許されるものではない。『テヒョン様の優しさに付け入る行為になってしまうじゃないか!』
葛藤に苛まれてもこの心情を甘美に感じてしまう身勝手な自分がいる。
誰かと心を交わすなんていう事を意識から遠ざけていた自分が、危険を冒してまでも《恋慕》に突き進もうとする自我に正直驚いていた。
それでも今は精一杯尽くしていきたいと心の底から思うのだ。
「テヒョン・・」
優しく呼びすててみる。
独占したい気持ちが溢れ出た。


「ん・・・」
心地よい温かさの中で目が覚める。まだ薄暗かったが目が慣れるてくると視界に喉元が見えた。ゆっくり見てみるとジョングクに包まれて眠っていたことが分かった。嬉しくなって自分からもギュッと抱きしめる。
しかしいつ寝てしまったのか記憶がない。少し頭を上げてみるとパジャマに着替えていることにも気付く。
『全部ジョングクがやってくれたんだな。』慈しみを込めて寝ている額を撫でる。
クークーと寝息が聞こえた。
相変わらず少年の面影が残る寝顔を見て笑みが出てしまう。頰杖をついてしばらく《夢の中の少年》をながめていた。

お互いに想いを伝え合っての初めての夜だ。テヒョンはステディとしての関係をもう一歩進めたくなった。
自然に吸い込まれていくように顔を近づけていく。
あともう少しで唇が触れる所まできた・・・・。
だがグッと堪えるように衝動を止めた。
すぐに顔を離すとそのままジョングクの胸に埋めた。テヒョンは後悔の思いで彼のパジャマの襟を掴んだ

『相手の不意をつくような事はフェアじゃない!』例え親しい間柄であったとしても。いや、親しいからこそあってはならないのだと自身を戒めた。
涙が出てきた。何の涙なのだろうか・・。
自戒なのか悲しさなのか分からないまま泣いていた。


【 運命のHoly Night 】


胸の中で泣いているテヒョンに気付いてジョングクが目を覚ました。驚いて身を起こすと
「テヒョン様!いかが致しました?」
と肩を掴む。
テヒョンは首を横に振った。
「僕はどうかしている・・・」
フフッと笑ってみせたが直ぐに涙顔になってしまう。どうしようもないという様な切なさがジョングクの心を突き刺す。堪らなくなりテヒョンを引き寄せると腕の中に包み゙込んだ。背中は小さく震えている。
赤子をあやすように背中をトントンとたたいているとようやく落ち着いてきた。

「僕は君の唇に触れようとしたんだ。」
ジョングクはテヒョンを抱いたまま無言で虚空を見つめた。
「でも、、そんなことは出来なかったよ。」
顔を上げると続けた。
「だって卑怯だろ?君の意志の無い所でそんなこと・・・不意打ちなんて。」
昨夜の幸せに満ちた涙とは違い悲痛に濡れる眼差しに、ジョングクは申し訳ない気持ちで言葉が出ない。
「君が何か事情を抱えているのは分かっているよ・・。」
テヒョンが一生懸命理解を示そうとしてくれているのが痛いほど伝わってくる。

「あなたを想う気持ちに嘘偽りはありません!」
ジョングクもまた泣き出していた。
「でも・・・待って頂けませんか?」
消え入りそうな口調で哀願した。
「気持ちをお伝えしておきながら、あなたの求めにお応え出来ない私をお許し下さい・・・」
二人はしばらく視線を合わせていたが、お互いにまた引き寄せて抱き締め合った。
「必ずきちんと事情をお話し致します。それまで待って頂けませんか?」
「・・仕方あるまい、、待つよ。」

「テヒョン様・・・」
ジョングクは両手でテヒョンの顔を包んで真っ直ぐ見つめた。
「そのまま動かないで下さい・・・」
囁きながら正座に座り直して、静かにゆっくり近づいて行くと、テヒョンが瞳を閉じた。ジョングクは待っている唇に優しく自分の唇を少しだけ押し当てた。
まるで誠実を極める儀式のような口づけだった。
テヒョンはもう涙を止めることが出来ない。
唇を離すとお互いの額を合わせた。
「今はここまでしか出来なくて・・・」
「ふふ・・・まるで子ども騙しだな。」
テヒョンは憎まれ口を言った。けれど本当は照れていた。

ジョングクはきっとギリギリのところまで心を示してくれたのだ。その想いが胸に滲みて嬉しかった。
いつか打ち明けてくれるものがどんなものかを考えると怖いところもあるが、今の幸せを精一杯分かち合うことの方が大切だと思った。
「もう分かったから泣き止んでくれよ。」
ジョングクも涙を止められないでいた。
今度はテヒョンがしっかり抱きしめる。



ツリーの灯りが次々と燃え尽くし静かに消えていく。なにかを告げるように教会の鐘の音が部屋を突き抜けて、再び眠りに堕ちる二人の上で呼応しているようだった。
神の祝福なのか
天使の讃歌なのか
または試練の警鐘なのか・・・

既に動き出していた運命は更に加速して回り始める。
テヒョンとジョングクそれぞれの宿命から生まれた新しい《運命》がこの明け方に召喚された。
だがまだ二人は気付いていない。
この始まりは唯一二人の魂のみが知っている事だった。



陽が昇りクリスマスの昼近く、テヒョンとジョングクの二人はそれぞれのお付の者達から起こされた。
「殿下、ご起床をお願い致します。」
デイビスがハンスと共にベッドサイドに立って声を掛けた。
天蓋のベッドカーテンが少し開いて眠気眼のテヒョンの顔が現れる。
二人はしゃがむと挨拶をする。
「おはようございます。」
「おはよう・・今は何時?」
「もうじきお昼になります」
「そうか、、よく寝たな。」
「昨夜はよくお飲みにもなられたようでごさいますね。」
ワゴンの上にあるワインの空き瓶を目にしてデイビスが笑いながら訊いた。

反対側のベッドサイドではジョングクがハンスから起こされていた。
なかなか覚醒しないのでハンスは先に窓際に行くとカーテンを開けた。
「殿下昨夜の仕掛け花火はお見事でございましたね!」
デイビスは冠水瓶の水をテヒョンに手渡した。
「おお!デイビスも見たか?素晴らしかっただろう。」
「はい!こちらの詰所でみなさんと一緒に拝見させて頂きまして、とても有意義なお時間でございました。」
「喜んで頂けて私どもも光栄でございます。今回の催しはジョングク様が全て手配なさったのですよ。」
ハンスが揚々と答えた。

当のジョングクはやっと半分覚醒してきたようだ。
「私どもの主人はまだ半分夢の中でございますなぁ。」
ハンスの言葉にテヒョンとデイビスは笑った。
「では殿下は控室へお着替えに参ります。」
言いながら肩にガウンを掛けて履物を揃えて促した。テヒョンがベッドから立ち上がると、
「ジョングク!起きろ!」
と声を掛けた。
「は、、はい」
目覚めてなくても大切な人の声には素早く反応するようだ。
「また後でな。」
まだうつらうつらしている姿を見てクスクスと笑いながら部屋を出て行った。


※ 画像お借りしました