群青と真紅㉑【近付く心と魂】 | Yoっち☆楽しくお気楽な終活ガイド

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アラフィフの生活や周辺で起きたことを書いています☆
そしてときどき
終活のガイドをさせていただきます

現在、BTSの底なし沼にハマり浸かっております
ガチガチのグテペンです
現在、テヒョンとジョングクをモデルに小説を執筆中☆

前回の「ファームハウスの夜」を書いている時、テヒョンの初恋の思い出を書きながら、はぁ〜💨テヒョンの初恋かぁ〜😭などと、拗らせておりました🤣(笑)
いや、アンタ自分で書いてるやつやん❗と自分自身にツッコみましたけどね

それほど物語に没頭しながら書いております🤣

皆様からの感想もめちゃくちゃ嬉しい限りです✨🙏✨ありがとうございます

では早速参りましょう✨✨✨✨
前回の物語




【ジョングクの部屋】

置時計のチャイムが12回、静寂に包まれたジョングクの部屋に小さく響いた

テヒョンの初恋話が発端で、ジョングクが、かなり大きいものを背負っている、ということが垣間見れたテヒョンだったが、あまりの違和感で胸がモヤモヤと燻っていた
ジョングク自身が、テヒョンの初恋を『羨ましいです』と言っている以上、チョン伯爵家として守るべく《秩序》は、ジョングクにとっては責務ではあっても、胸の奥底にある極々個人的な部分では不本意なことなのだろう

だからといって、今テヒョンからジョングクに、そのことについて改善を勧めたり、何か助言したりするのは筋が違うと思っていた

遠いあの日、テヒョンがナンシーを深追いしなかったのは、ナンシーを精神的に追い詰めない為だった
人には『心』がある
例え正論を説いてみたとしても、心に混乱をきたすことは、してはいけない
果たしてその正論すら、いつも正しいわけではないのだから
そこはテヒョンも心得ていた

だから、テヒョンはジョングクの側で、ジョングクが心から幸せと思えることだけを見守ってやろうと心に決めた
「ジョングク、こっちに来て座らないか?」
テヒョンが手招いて、隣に座らせる
ジョングクは浅くソファに座ると、テヒョンに謝った
「すみません、、、重い話なんかしてしまって」
「気にするな。そもそも僕が昔話をし過ぎたせいもある。話したくない事を口にさせてしまったようだし、、すまなかった」
「いえ!テヒョン様のせいでは決してありません。・・・どうか、謝ったりしないで下さい。それよりも大切な思い出を私にお話下さったお陰で、更に貴方様を知ることが出来ました」
そう言いながらも、ジョングクの複雑な心境が表情に出る
テヒョンはそれを察して言った
「ジョングク、今はもう何も考えるな。君は当主としての責務を果たそうとしているだけだ。本当に助言が必要な時には僕が隣にいる」
テヒョンはそう言いながら、ジョングクの肩に手を回して、擦ってやった
「いつも、ありがとうございます」
ジョングクはテヒョンの気遣いを心から有り難いと思っていた
また『何故言うつもりも無かった自分の事を話してしまったのか』と少し後悔もしていた
だけど、テヒョンの側にいると無意識に心を開放したくなるのだ

ジョングクが、テヒョンの思い出の中にある《初恋で心を震わせる経験》を羨ましく思ったのは本当だし、そして、そんな経験をすることが出来ない自分の人生を愁いだのも事実だ
更に、テヒョンの心を掴んだ過去の女性の存在に、嫉妬心を抱いたのもまた事実なのだ

ジョングクの心は交錯していた

テヒョンが言っていた通り、心を縛ることは出来ない
ジョングクはそれを痛烈に思い知らされていた

心というものは、いつでも外に向いているもので、閉じ込めようとすればするほど、その反動は大きく跳ね返る__

テヒョンもジョングクもお互いの存在が、いつでも自分を 開放させてくれる相手であるということに、潜在的にではあるが気付き始めていた

「さ、もう休もうか?そろそろ失礼するよ」
テヒョンがソファから立ち上がりながら言った
しばらく間が空いて、ジョングクが
「テヒョン様・・・今夜はここで一緒にお休みになって下さいませんか?」
と言いながら、縋るような目をしてテヒョンを見上げた

ジョングクは、今夜はなんとなく独りになりたくないと思った
テヒョンは考える間もなくニコッと笑って
「いいよ」
とだけ応える

『ありがとうございます』と言って、ジョングクはテヒョンをベッドに案内した
そして、暖炉にもう少し薪を足すと、部屋にある燭台の炎を間引きして消していき、部屋をふんわりとした暗さにしていく
テヒョンはベッドの中からその様子を見ていた
「手慣れたものだな。ジョングク」
テヒョンの声に、ジョングクは振り向いて
「はい、私は必要最低限の身の回りの事は、なるべく自分でやるようにしています」
と答えた
テヒョンは自分自身で生活を整えようとするジョングクの考え方に感心した

全ての支度を整えて、ジョングクがベッドに上がり、テヒョンの隣に入った
「おやすみ」
テヒョンが横になりながら言う
「はい、おやすみなさい」
ジョングクもそう言いながら横になる

そして、テヒョンがピローに頭を乗せた瞬間に、ジョングクがテヒョンの腰に腕を伸ばしてきた
と、同時にテヒョンの体をグッと力を入れて自分の方へ引き寄せた
「!!・・ジョ・・・・・」
テヒョンがびっくりしてジョングクの名前を言い掛けたが、ジョングクが先に
「すみません・・・今夜はこのままテヒョン様の背中を私にお貸しください」
と言って、テヒョンの背中に顔を埋めた

何が起きたのか考える間もなく、テヒョンの胸がキュッと締め付けられた
それは切ない痛みとなって、心臓を揺り起こし、鼓動がどんどん速くなる
先程の正面から抱きついて来られた時より衝撃的で、背中から抱きしめられている今、ジワジワと胸が熱くなるのを感じた
そしてそこから熱くなった血液が、一気に体中を駆け巡るような感覚をおぼえる
その感覚が何なのか、テヒョンは朧気(おぼろげ)ながら、心の奥で知ってしまう
テヒョンは、今はもう何も考えないことにした
そして、お腹にあたるジョングクの手の甲に、自分の掌を重ねた

ジョングクの方は、2度も大胆なことをしている自分に恐れを感じていた
今、目の前のテヒョンを抱きしめている現実が、自分でも信じられなかった
それは、今ジョングクの体の中で湧き上がる血潮がそうさせているのだ
まるで別人格の自分がいるようだった
こんなことをされて、テヒョンがどう感じているのか不安ばかりだったが、だからといって、今の自分を抑えることも出来なかった

お互いの魂が呼応し合うように、テヒョンとジョングクは体を寄せ合っている
二人には、もはやこうしている理由など必要なかった
ただ《自然がそうさせた》のだ

ここだけが時間が止まったようだった

二人ともただ黙ったまま、テヒョンは背中越しに聞こえるジョングクの呼吸に耳を澄まし、ジョングクはテヒョンの温かい体温と共に感じるテヒョンの鼓動に耳を傾けていた

そして、二人はなんともいえない心地良さを感じて、まどろみ始めた
それは間もなく深い眠りに誘っていくことになる

ファームハウスは静かな夜に包まれた


【忍び寄る争いの噂】


早朝、まだ薄暗い中でテヒョンが目を覚ます
ジョングクは、隣で深い眠りの中だ
テヒョンはジョングクを起こさないように、自分の体からジョングクの腕を外すと、ゆっくりと起き上がる
そしてジョングクに、ブランケットを掛け直してやってベッドを出た

ガウンを羽織り、テヒョンは静かにジョングクの部屋を出た
昨夜と変らず朝の廊下も冷え込んでいた

テヒョンが自分の部屋に戻ると、まだ従僕の姿はなかった
部屋の暖炉は、すっかり火が消えている

テヒョンは手持ち燭台を持って、厨房へ行くと火を着けてもらった
厨房のシェフ達は、公爵がまだ早い時間に、直々に火を貰いに来たので驚いていた
「キム公爵、くれぐれも火傷などなさいませんように!」
「ありがとう。気をつけるよ」
廊下を部屋まで戻る途中で、キム公爵家の従僕に出くわす
従僕は炭が入ったバケツを持っていた
「おはよう、今暖炉に付ける火を貰いに行っていた所だ」
「おはようございます、テヒョン様。ああ!わたくしが致します」
「いや、それには及ばぬ。まぁ見ていてくれ」
テヒョンはニコニコしながら部屋に入ると、暖炉の上に燭台を置いて、太い薪を2本取ると、暖炉に重ね置いた
「そのバケツを貸して」
従僕からバケツを受け取ると、炭の上に乗っている細かい枝の束を取り出して、暖炉の前に一旦置いた
そして先程の燭台を手に取って、トングで炭を取ると、蝋燭の火で炙った
フーフーと炭に息を吹きかけると、赤く炎が立つ
それを素早く薪と薪の間に置いて、小枝の束を火の着いた炭の上に乗せる
小枝の束に火が移ると、次々と炭を重ねていった
しばらくすると薪にも火が移り、パチパチと音を立てて燃え始めた
その様子を確認すると、もう1本薪を重ねた
「お見事でございます、テヒョン様」
テヒョンの後ろで火熾しを見守っていた従僕が驚いていた
「ははは、な?私にも火を熾せる事が分かっただろ?」
「いつ覚えられたのですか?」
「10代の頃、とても可愛らしくて優秀な先生に教わったのだ」
テヒョンがウィンクをして話すと、従僕はハッと気がついた
「そうでございましたな・・・」

テヒョンとナンシーの事については、キム公爵家の皆が記憶していた
ただ皆が深刻に扱うような事をしなかったので『殿下の可愛らしい淡い思い出』となっていた

「さ、身支度をしたら、国王陛下と朝食だ」
「はい」

陽が昇ると、ファームハウスが朝の活気で賑やかになる
ジョングクも目を覚ます
隣にテヒョンが既に居ないことに、少し安心して、少し残念な気もした
だけど、清々しい気持ちでいることに変わりはなかった
テヒョンと一緒だと、こうして気分がいいのだ

それぞれが身支度を終えると、食堂に向かった
「おはようございます。テヒョン様」
テヒョンが食堂の入口に差し掛かると、ジョングクとジョングクの従僕が、頭を下げて挨拶をした
「おはよう、昨夜はよく眠れたか?」
「はい、お陰様で」
テヒョンとジョングクは顔を見合せて笑った
二人は、心の距離がより近しいものになったことを実感していた
「さ、中へ入ろう」
「はい」
テヒョンとジョングクは一緒に食堂に入ると国王を待った

二人が食堂に入って間もなく、国王が姿を見せた
「おはよう」
「おはようございます、陛下」
「あれからお前達は夜更かしをしていたようだが、よく眠れたか?」
「はい。ぐっすり休ませて頂きました」
「そうか、それならばよい」
国王が着席するのを待って、テヒョンとジョングクは席に着いた
それを合図に、朝食の用意が始まる


朝食の時間が終わり、食後の紅茶が配られると、国王は人払いの合図を出した
国王の侍従やテヒョンとジョングクの従僕を含め、食堂にいた全ての使用人が席を外した

「何か、あるのですか?」
テヒョンが国王に訊ねた
「フランスにおるお前の父から、極秘で連絡が入ったのだ」
テヒョンとジョングクが顔を見合わせる
国王は続けて言った
「D帝国がP国の王位継承権を狙って、戦闘態勢を整えつつあるというのだ」
「え?・・しかし、それは既に権利を有する3国で協議の最中ではありませんか?D帝国には元々権利はありませんよね」
テヒョンが怪訝そうに言う
「その通りだ。しかし、今、周辺諸国で謎の内乱が小さい規模で勃発しているというのだ。どうやらD帝国の差し金だという噂が出ている」
「このご時世に、まだそんな継承権争いをしようという国があるなんて・・」
テヒョンは驚きを隠せないでいた
「もしも、D帝国が密かに関わっているのだとしたら、中立国である我が国にも何かしらの仲裁要請が入るやもしれぬ。そして万が一、仲裁が決裂に終われば、ヨーロッパ中がまた戦火に見舞われる」
「父の言う通り、D帝国が既に戦闘態勢を整えているのだとしたら、協議や仲裁どころか強硬手段に出るということですよね」
「そこなのだ。急ぎ我が国でも協議を始めねばならぬ。お前の父にも既に急ぎ帰国するよう伝えてある」
「そうですか・・・」
国王とテヒョンが話をしている間、ジョングクは微動だにせず、顔色も変えずに静かに二人の話を聞いていた
「この話はまだ内密にしておいてくれ。まだ噂の域を出ておらんから、同盟を組んでいる国々と調査と共に、調整も組まなければならぬ」
「分かりました」
「さて、私はこれから王宮に帰り執務に戻る」
国王は席から立ち上がる
ジョングクがそれに合わせて食堂の扉に向かうと、廊下で待機する国王の侍従に声を掛けた
侍従が国王のそばまで来ると『馬車のご用意が出来ております』と伝えた
「それでは参ろう」
テヒョンとジョングクも玄関先まで国王を見送る為に移動する

「それでは二人共、来週のチャリティー試合でな」
そうテヒョンとジョングクに言うと、国王が玄関先に着けられた馬車に乗り込んだ
侍従がテヒョンとジョングクに挨拶をして、一緒の馬車に乗り込む
そして馬車の扉が閉められた
するとすぐに国王が窓を開けた
「ジョングク、後ほど父のセオドラ卿と共に王宮に参れ」
「はい、かしこまりました」
ジョングクがそれに応えて頭を下げた
国王からの呼び出しがある事を既に心得ていたような落ち着きだった

この時、国王が改まってジョングクとその父も共に、王宮に呼んだ事と、ジョングクのいつもとは違う落ち着き様をテヒョンは気にしたが、理由を伺うのは止めた

「では僕達も帰るとするか」
「はい」
テヒョンとジョングクも帰り支度をする為に部屋に戻る

二人が支度をしている間に、テヒョンとジョングクの馬車が、玄関前に来て待機する
そして準備を終えた二人が玄関先で再度顔を合わせると、なんとなくお互いに名残惜しい気持ちになった
「それじゃあ、来週の競技会場で」
「はい。テヒョン様、ありがとうございました。お気を付けて」
「うん。ジョングクも気をつけてな。また君の淹れてくれたココアを楽しみにしてるよ」
そう言ってテヒョンは笑った
ジョングクも笑顔で応える
テヒョンと従僕が馬車に乗り込むと、すぐに出発した

そしてジョングクも王宮に呼ばれた為、急いで屋敷に向かうのだった