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これまでの記事に続きまして、今回はカルニチンとは関係のない低血糖が娘に起こっていた可能性について考えてみたいと思います。
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■カルニチン欠乏症とは関係のない低血糖について
●胎児期の低血糖
胎児の血糖値に関しましては、以下のことが分かりました。
・胎児には、母親の血液中のブドウ糖が胎盤を通ってそのまま運ばれる。
つまり胎児の血糖値は母体の血糖値の影響をそのまま受ける。
・妊娠中は、胎盤でインスリン(=膵臓から分泌される血糖値を下げるホルモン)の
働きを抑えるホルモン(ヒト胎盤ラクトーゲンやプロラクチン、プロゲステロンな
どのインスリン拮抗ホルモン)が産生されたり、タンパク質分解酵素による
インスリンの分解が起こることにより、インスリンの働きが抑えられる。
(*これは、胎児へのエネルギー源となるブドウ糖を母から子へ効率的に供給す
るためだそうです)
・その結果、母体では非妊娠時よりも多量のインスリンが分泌されることになるが、
インスリンが十分に分泌できない母体においては血糖値が上昇しやすくなる。
これを"妊娠糖尿病(GDM)"といい、妊婦の約1割で認められる。
・前述のように母体のブドウ糖は胎盤を通って胎児に運ばれるが、インスリンは
胎盤を通過できない。
・そのため母体を通じて胎児の血糖値が上がると、胎児は自分の膵臓からインスリ
ンを分泌して血糖値を調節する。
へぇぇぇぇぇ!
高血糖時に自分でインスリンを分泌して血糖値を下げる力が、胎児期からすでに備わっていることに驚きました
が、もっと驚きましたのは、胎盤がわざわざ数種類のホルモンや酵素を分泌してまで、母体のインスリンを効きにくくさせる、すなわちインスリン抵抗性を引き起こすことです。
ここまでする必要があるのは、それだけ胎児にとってエネルギー源としてのブドウ糖が正常な発育や生命維持のために重要だからであり、それだけ低血糖になることは危険だからなのかな・・・って思いました。
●果たして娘が胎児期に低血糖になる可能性はあったのか
妊娠中の糖尿病には、
・妊娠糖尿病(GDM=糖尿病の診断基準を満たすほど高くないが、妊娠中正常よりは
血糖値が高くなっている状態)
・妊娠中に初めて発見された糖尿病
・糖尿病合併妊娠(妊娠前から糖尿病がある場合)
の3パターンがあります。
これらのコントロールが不良で、母体に高血糖が生じた場合、先に書かせていただきましたように、胎児はそのまま高血糖となり、同時に、自分で多くのインスリンを分泌することによって高インスリン血症が生じます。
このような状態が続くと、胎児にはたとえば流・早産、胎児仮死・死亡、先天奇形、巨大児など、さまざまなリスクが起こり得るのだそうです。
がしかし、肝心の"胎児の低血糖"につきましては、いろいろ調べてみましたものの、見つけることができませんでした。
――ということは、胎児に低血糖は起こらないのでしょうか
胎児の血糖値は母体の血糖値に左右され、高血糖になった時は胎児は自分の膵臓からインスリンを分泌して血糖値を下げようとすることは、先に記載させていただきました通りです。
一方、低血糖に陥った時に、肝臓に貯蔵されているグリコーゲンを分解して血糖値を上げること(=これを"糖新生"といいます)ができるようになるのは、ヒトも動物も共通して出生後のことだそうです。
ということは、母体の高血糖で胎児が高血糖になるなら、
母体に低血糖が起こると、そのまま胎児まで低血糖になってしまうのでは・・・
以上の点を踏まえますと、胎児が低血糖に陥る可能性があるのは、
①母体が低血糖になった時
②胎児のインスリン分泌が過剰になってしまった時
の2通りがあり得ると考えられました。
まず①についてですが、正常成人であれば、たとえ絶食時であっても低血糖が起こることはありません。
妊娠中は胎盤からインスリン抵抗性を引き起こすホルモンなどが分泌されているので、なおさらです。
例外的に母体が低血糖に陥るケースとしてよくあるのは、母体がインスリンなど糖尿病の治療薬を使用していて、それが過量になってしまった場合だそうです。
が、私はそのような薬を使用してはおりませんでしたので、私と娘には無関係と思われます。
ということは、私に低血糖が起こることないので、胎児だった娘も低血糖になる可能性はあり得なかったんだ
――と安心しかけて、ある事実を思い出しました。
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こちらの記事の、特に最後の方に紫の字で書かせていただきましたように、私には境界型糖尿病(別名:かくれ糖尿病)があります。
境界型糖尿病では、血糖上昇に対する膵臓からのインスリン分泌反応が少し低下しているので、以下のような現象が起こります。
(*簡単に端折っていて分かりにくいかと思いますので、詳細は上記記事をご参照
下さい)
食事開始後に血糖値が上がりはじめても、なかなかインスリンが分泌されない
→食後に血糖値が急激に高くなってしまう
(*糖尿病の診断基準である200mg/dlを超え、これを"食後過血糖"と呼びます)
→ようやく膵臓からインスリンが分泌されるが、すでに血糖値はかなり高くなって
いるため、それに応じて普通の人より大量のインスリンが分泌されることになる
(*上記記事中のグラフにありますように、私の場合は正常の2倍以上)
→大量のインスリンによって今度は急激に血糖値が下がり、食後2~4時間で低血糖
が起こってしまう(*これを"反応性低血糖"と呼びます)
少なくとも私の中では、このような事態が食事のたびに起こっているようです。
(*なので糖質を摂りすぎないよう注意しています・・・なかなか守れませんが)
自分に境界型糖尿病がありますことが分かりましたのは、30代の終わりのことでしたが、それより15~20年ほど前の娘を妊娠中に、そういえばこんなことがありました。
それは妊娠後期の、暑い夏の日のことでした。
まだ若く無知で、もともと痩せていてまったく体重が増えすぎる心配をする必要のなかった私は、あろうことかアイスクリームを2個食べた直後に、妊婦健診に行きました。
いつも通り最初に尿を提出して待っていると、にわかに慌ただしくなり、看護師さんが私のところにやって来て言いました。
「今から採血をします」
どうやら尿検査で尿糖が3+と出てしまったので、至急血糖値をチェックすることになったようです。
その結果、血糖値は67mg/dl(*母子手帳で確認しました)でしたので
「高いどころか低くてよかった。糖尿病の心配はなさそうですね」
と先生から言っていただいて、よく分かりませんがホッとしたことを覚えています。
――が。
あらためて調べてみますと、一般に尿糖は血糖値が160~180mg/dl(腎閾値)を超えると出てくると言われているそうです。
(この画像はこちらから引用させていただきました)
また上の図のように、尿糖の検出は血糖値の上昇より少し遅れます。
(*そりゃそうですよね。血糖値が上がる→腎臓で尿が作られる時に尿に糖が出る→でもその尿をしばらくは膀胱にためている→その間に血糖値は下がるのですから)
以上より、あの時の尿糖が3+だったことから、私の一番高い時の血糖値は200mg/dl以上であった可能性が高く、その結果インスリンが過剰に分泌され、尿検査の結果が判明した時にはすでに急激に血糖値が下がり、正常どころか軽度ではありますが低血糖(*低血糖の定義は70mg/dl以下)になってしまっていた、ということが考えられます。
そして実はこの後にはもっと血糖値が下がっていた可能性もありえます。
つまり当時の私には、妊娠の影響か元々なのか、すでに境界型糖尿病の状態があったことが予想されます。
(*ちなみに妊娠糖尿病があると将来糖尿病になるリスクが7.4倍になるそうです)
そうなりますと、
私(母体)が高血糖になる
→娘(胎児)も高血糖になる
→私(母体)もインスリンをたくさん分泌するが、娘(胎児)も自分でインスリンを
たくさん分泌する
→娘(胎児)の血糖値が下がる (*⇒②の現象)
→その頃には私(母体)が反応性の低血糖になっている
→娘(胎児)も低血糖になる (⇒①の現象)
こんな感じで、娘(胎児)は自分のインスリンと私(母体)の低血糖のダブルパンチによって、低血糖状態となっていた可能性も否定できないのでは・・・って思いました
(*あくまで机上の推測ではありますが)
ちなみに、胎児の場合どのくらいを低血糖というのか、低血糖によって胎児に悪影響が出るのか、出るとしたらどんな影響が出うるのかにつきましては、私はデータを見つけることはできませんでした。
代わりに新生児のことにはなりますが、次項で少し触れさせていただきたいと思います。
*今回で終わりにする気満々だったのですが・・・内容がない割に長くなってしまいましたので、いったんはここまでとし、次回で最終回とさせて下さい