長く間が開いてしまい、私自身も記憶が薄れてきておりますが・・・


 

体内のカルニチン濃度を規定する主な因子である

1.食事からの摂取量
2.生体内での生合成量
3.腎臓からの排泄量
4.腎臓の尿細管での再吸収量

のうち、今回は【3.腎臓からの排泄量】【4.腎臓の尿細管での再吸収量】について見ていきたいと思います。





【3.腎臓からの排泄量】と【4.腎臓の尿細管での再吸収量】につきましては4/10の記事でちょこっと触れさせていただきましたが、何せもう2ヶ月近く前の事ですアセアセ

そのため、重なる部分も多くなるとは思いますが、復習もかねて再度まとめさせて下さい。

 



●そもそも尿は腎臓でどのようにして作られるか

腎臓には「糸球体」と呼ばれるろ過器と、「尿細管」と呼ばれる必要なものと不必要なものをふるい分けて必要なものだけを再吸収する細長い管があり、それらを一組にして「ネフロン」と呼びます。



(この画像はこちらから引用させていただきました)

 


 

ちなみに糸球体(*目の細かいザルのようなイメージ。実際には毛細血管が毛糸の玉のように丸まったもの)の大きさは0.1~0.2ミリほどで、ネフロンは片方の腎臓に100万個、もう片方に100万個、合計で約200万個存在します。
(*そんなにたくさんっ!?ポーン

 


腎臓を通る血液は、「糸球体」でろ過され、水分のほか、分子量の小さなものがこし出されて、『原尿』が作られます。
(*たとえば蛋白質や赤血球などの分子量の大きな物質はろ過されないので、尿検査で蛋白質や赤血球が陽性だと「異常」となるのです。)

しかしこの『原尿』には、体に不必要な老廃物以外に、大量の水分のほかブドウ糖やアミノ酸などの栄養素や、塩分(ナトリウム)やカリウム、リン、マグネシウムなど、さまざまなイオン(電解質)も含まれています。


これら体にとって必要な成分は、いったんは原尿中にこし出されるものの、尿細管を通る時にほとんどが再吸収されます。

どのくらいの量が再吸収されるかは個々の物質や体の状態によって異なりますが、この再吸収率を調節することで、体内の水分量を一定に保ったり、イオンのバランスを調整したり、体を弱アルカリ性の状態に保ったりしています。

 


ちなみに健康な人の場合、1日の尿量は1.5リットル前後ですが、糸球体でろ過されたばかりの原尿は1日約150リットルもあるそうですポーンハッ*そんなにィィィ!?
つまり水分については、原尿の99%が尿細管で再吸収されることになりますゲッソリあせる

 

 

 

●カルニチンの尿中排泄と再吸収

カルニチンは、腸管で吸収しきれなかったものが一部便中に排泄される以外(1%以下)、もっぱら腎臓から尿中へと排泄されます。
(カルニチンは肝臓で代謝(=分解)されることはないので、そのままの形で)


これを少し詳しく述べますと:

カルニチンは、生体内では遊離カルニチンとアシルカルニチンとして存在しています。

ちなみにアシルカルニチンの大部分はアセチルカルニチンで、細胞のミトコンドリア内で生じた有害なアシルCoAを解毒するための反応で生成されたものです。
(*👉詳細(?)はこちら↓をご参照下さい)

 

 

 

遊離カルニチンは分子量が小さく蛋白質とも結合しないため、血液中の遊離カルニチンは大部分が糸球体でろ過され、まずは原尿中へと排泄されます。

 

が、その90%以上は腎の尿細管において再吸収され、再び血液中へと戻っていきます。

 

この再吸収によって、血中カルニチンレベルは一定に保たれているというわけです。


一方、アシルカルニチンはほとんど再吸収されることなく、尿中へ排泄されます
このことによって、過剰なアシル基(*アセチル基はアシル基の一種)が体内に蓄積することを防いでいるわけです。

 


(この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)

 

 

 


●尿細管での遊離カルニチンの再吸収にもカルニチントランスポーター(OCTN2)が関与している

腸管上皮の細胞膜状にある Na+依存的高親和性カルニチントランスポーター(OCTN2というトランスポーターが、腸管でのカルニチンの吸収において重要な役割を果たしていることは、以前の記事でまとめさせていただきました。

 

 


その際、

「このOCTN2というトランスポーターは、ヒトでは小腸から大腸まで幅広く分布している」

とも書かせていただきましたが、実はOCTN2は、

 

腸管だけではなく骨格筋・心筋・肝・脳・胎盤、そして腎臓にも存在しており

 

遊離カルニチンの細胞内への取り込みに重要な役割を果たしています。
(*そのためOCTN2の欠損や機能低下があると、食物からカルニチンを吸収できないだけでなく、細胞内にも取り込むこともできなくなるため、二重にカルニチン欠乏を呈することとなります)
 

 

これらの臓器のうち、OCTN2が最も多く発現しているのは腎の尿細管であり、OCTN2は遊離カルニチンの再吸収において非常に重要な働きをしています。

 

 

 

●カルニチントランスポーター(OCTN2)の "再吸収の閾値"

腸管のOCTN2には"吸収の飽和現象"というものが存在することは、上記の記事の中で触れさせていただきました。
 

 

それと同じ原理で、腎臓のOCTN2にも

"再吸収の閾値"

というものが存在します。


"吸収の飽和現象"により、 一度に大量のカルニチンを経口摂取しても、OCTN2が取り込むことのできるカルニチンの量には限界があるため、吸収が頭打ちになってしまいます。

同様に、再吸収には"閾値"が存在するために、静脈内投与でカルニチンの血中濃度が極めて高くなった場合は再吸収しきれず、多くが尿中へ排泄されてしまうという現象が起こります。

そのため、カルニチン欠乏症の急性期や意識のない重症患者にカルニチンの静脈内投与を行うことは臨床的には極めて有用ではあるけれど、腎機能が正常な患者においては必ずしも効率的とは言えないそうです。




腎臓での排泄・再吸収の異常


もし何らかの原因で腎臓からの排泄の増大が起こった場合、尿中への喪失によってカルニチン欠乏が生じてしまいます。

"腎臓からの排泄の増大"とは、ほとんどが"尿細管での再吸収の障害"を意味しており、以下のような病態が知られています。

OCTN2の機能異常=全身性カルニチン欠乏症(SCD)
 ・・・これについては上の4/24の記事の最後の部分でまとめさせていただきました。
   その時は『カルニチンの腸管からの吸収障害』として扱わせていただきましたが、

   実際は食物からの吸収だけでなく、尿細管での再吸収も、各臓器(肝臓・筋肉・

   脳・胎盤)における細胞内への取り込みも障害されているために、細胞レベルで

   重篤なカルニチン欠乏が生じてしまうのです。

Fanconi(ファンコニー)症候群
 ・・・これは、尿細管の機能障害を来す疾患の総称です。
   尿細管での再吸収が障害されるため、カルニチンだけでなく本来再吸収される

   べき物質すべてが尿中に過度に失われてしまいます。
  Fanconi症候群には先天性と後天性(二次性)があります。
  ・先天性:Lowe症候群、シスチン症、ミトコンドリア異常症など
        (*よく分かりませんのでとりあえず名前だけで・・・汗
  ・後天性:多くは薬剤性です。

       抗てんかん剤(バルプロ酸(デパケンⓇ)、フェノバルビタール、フェニ

        トイン、カルバマゼピン)抗菌薬(ピボキシル基含有プロドラッグ、

       βラクタム系抗菌薬 など)、抗がん剤の一部、抗不整脈薬の一部、

       AIDS治療剤(ジドブジン)などが知られています。
      ※このうち抗菌薬(ピボキシル基含有プロドラッグ)とは トミロン、フロモ

        ックス、メイアクトなどのいわゆる第3世代のセフェム系抗生物質)で、

        いずれも小児科や耳鼻科でよく用いられるものです(*最近は

        吸収率の悪さから使われなくなっているそうですが)。報告によると

        患者は小児から高齢者までと幅広く、多くは長期間の内服後ですが、

        短い場合は内服開始から2~6日でカルニチン欠乏に陥ることが

        あるとのことでした。
       (*これらの抗菌薬の代謝物質がカルニチンと結合するため、

        アシルカルニチンと同じ原理で尿細管で再吸収されなくなるそうです)

透析を受けている末期腎不全患者

  ・・・カルニチンの生合成低下、食事療法による摂取量低下、透析液中に

    カルニチンが漏出すること、等によってカルニチン欠乏になりやすい。

    ただしアシルカルニチンは透析膜からろ過されにくいため、逆に高値となる。

○例外: 透析に至る前の慢性腎臓病(慢性腎不全)

  ・・・カルニチンの生合成も障害されますが、腎機能の障害によりカルニチンの

    排泄量も低下するので、結果的に体内の遊離カルニチンはどちらかというと

    高値を示すと言われています。

 

など。

 



●余談ですが・・・娘とバルプロ酸ナトリウム(デパケンⓇ)

 

薬剤によって尿細管での再吸収障害が起こり、二次的にカルニチン欠乏が起こることを初めて知りましたが、その中に

バルプロ酸ナトリウム(デパケンⓇ)

 

を発見してあらためて驚愕しております滝汗


2021/2/7の記事【 低血糖の謎◇カルニチン→ADHDにも関係!?】でちらっと書かせていただきましたように、娘、片頭痛の予防のためにデパケンを数年前から服用しています。

と申しましても、片頭痛が続く時は忘れず毎日デパケンを飲むけれど、調子がいい時は1ヶ月以上飲み忘れていたり・・・という状態だった上、2020年秋にミグシスⓇという予防薬を代わりに飲むようになって以降はまったく服用していません。

それでも変わらず低血糖らしき症状は起こっておりましたし、娘がカルニチンの血液検査をしたのは、デパケンをやめて1ヶ月以上経ってからでした。

 


そのことを発達障害の主治医の先生にお伝えしましたところ、

「だったら血液検査の結果とデパケンの関係はまずないと思います」

とのお返事でしたので、ホッとしています。


――いえ、ホッとしている場合ではないかもしれません。

 

デパケンが原因の薬剤性のFanconi症候群が原因なら、デパケンをやめさえすればカルニチン欠乏も低血糖発作も治る可能性が大だからです。


ですがデパケンが原因でないとすると・・・

 

いったい娘の低カルニチンの原因は何!?アセアセあせる

 

 

ますます謎が深まるばかりですえーん

 

 

 

*明日はいよいよ・・・待ちに待った初めての盆栽教室です音譜
  実は自信がなくて今さら不安になってますが、遠出も楽しみなので、頑張ってきますチュー