今日の記事も前回からの続きになります。
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以前の記事で触れさせていただいたことがあるのですが、私には神経系の難病で亡くなったおばがいます。
発病後短期間で食べ物を飲み込むことができなくなったおばは、亡くなるまでの2年近く、お腹に穴を開けそこから胃の中へとチューブで食べ物などを送り込む"胃瘻"を用いて、経管栄養を受けていました。
胃瘻を造設して数ヶ月経った頃からでしょうか。
おばは低血糖をたびたび起こすようになりました。
いろいろ精密検査を受けましたものの、結局原因は分からなかったそうです。
胃瘻からは、1日3回、朝と昼と夕方に液体状のという栄養剤やお白湯を2時間くらいかけて注入していました。
ですが主に夜中から明け方にかけて低血糖が起こってしまうので、夜から朝まで、高カロリーの栄養剤をゆっくり10時間前後かけて注入し続けることになりました。
結局、各注入の合間の計5-6時間を除く1日18-19時間注入し続けることによって、低血糖が起こるのを予防していたらしいです。
そんな状態が半年以上続いた時に、ひょんなことから低血糖の原因が判明したのです。
原因が明らかとなったことで治療が可能となり、おかげで低血糖は改善しました。
決して状態は良くはありませんでしたので、1つでも問題が解決したことをおじもいとこも母たちもとても喜んでいたことを覚えています。
解決のきっかけは薬剤師さんのひとことでした。
おばは、「エンシュアリキッド」という、当時も今も非常にポピュラーな経管栄養剤の注入を受けていました。
「エンシュアリキッド」は1缶が200ml、200kcalの液体で、ジュースのように口から飲むこともできます。
糖・アミノ酸・脂質・ミネラル・微量元素・ビタミンなどが含まれていて、口から普通の食事を摂ることができなくても、これだけを1日数缶飲むことで生きていけるそうです。
ですがこの「エンシュア」にはある栄養素が含まれていませんでした。
そのことに気付いた薬剤師さんが、
「その栄養素の欠乏が原因で低血糖が起こっているのでは?」
と主治医の先生に伝えて下さったのです。
その栄養素とは――
カルニチン
といものでした。
「カルニチン なんじゃ、そりゃ
」
当時は
「原因が分かって良かったね」
と単純の喜びましたものの、その後は20年間以上一度も思い出すことはありませんでした。
しかも今回、肝心の「カルニチン」の名前が思い出せなくて母に訊ねたくらいです。
で、当時はもちろん今聞いても「初耳👂」と感じるこの単語につきまして、早速調べてみました。
(*ですがなぜか夫は知っていましたダイエット絡みで耳にしたことがあったようで、「低血糖と何の関係が??」と首をかしげておりました)
すると、まず発見しましたのはこの資料でした。
↓
『カルニチン欠乏症の診断・治療指針2018』 日本小児医療保健協議会栄養委員会委員
な・・・なんと66ページもあるではないですか
ヒェ~とおののきながらとりあえず最初のページを読んでみましたら、こんなことが書いてありました。
(*めちゃ分かりにくいので、後日自分のために分かりやすくまとめ直すつもりですが、とりあえず・・・)
↓
【カルニチン欠乏症とは】
○カルニチンは食事から必要量の約75%が摂取され、生合成により約25%供給される条件的必須栄養である。
○体内のカルニチンのほとんど(約98%)は骨格筋などの組織中に分布し、血中のプールはわずかである(約0.6%)。
○摂取の低下、吸収の低下、遊離カルニチンの排泄の増加や、有機酸・脂肪酸代謝異常症などにおいては大量に体内に蓄積するアシルCoAをアシルカルニチンとして尿中に排泄する際などにカルニチン欠乏症が発症する。
○カルニチン欠乏症は、以下のような多岐にわたる病態で発症しうる。
・先天代謝異常症患者
・バルプロ酸投与患者(てんかん患者、精神疾患患者、脳外科手術後の患者など)
・腎不全により腹膜透析や血液透析治療を受けている患者
・Fanconi症候群患者
・連続腎代替療法(continuous renal replacement therapy: CRRT)を受けている患者
・経管栄養
・完全静脈栄養(total parenteral nutrition: TPN)
・一部の牛乳アレルゲン除去調製粉乳などによる栄養管理されている患者
・ピボキシル基含有抗菌薬投与患者
・抗がん剤投与患者(プラチナ製剤、アントラサイクリン製剤、アルキル化剤など)
・肝硬変や肝不全患者
・筋ジストロフィーや筋萎縮性側索硬化症(ALS)患者など神経筋疾患患者
・重症心身障害児(者)
・食思不振症患者
・高齢者
・重症疾患
・低栄養患者
など
赤字の「バルプロ酸」、これは商品名はデパケンⓇといい、娘が片頭痛の予防薬として数年前から服用していた薬です
とはいえずっと毎日飲んでいたわけではなくて、片頭痛が起こらない期間は1ヶ月以上飲まなかったりしていたようですし、去年の秋くらいにミグシスⓇという薬に変更して以降は1度も飲んでいません。
服用をやめてからも低血糖と思われます症状は起こっていますので、このバルプロ酸(デパケンⓇ)が原因とは言えない気がします。(増悪因子ではあったかもしれませんが)
また青字はおばに関係のありそうな部分です。
これを見て、おばがカルニチン欠乏になっていた原因はエンシュアのせいだけではなかったことに初めて気が付きました
体内で合成されるカルニチンは必要量の1/4だけで、3/4は食べ物から摂らなくてはなりません。
しかもカルニチンのほとんど(98%以上)は筋肉内に貯蔵されているので、筋肉が萎縮して筋肉量そのものが急激に減少したおばの場合は、病気そのものによってもカルニチン欠乏が起こっていたのですね
――ですが、ここにも肝心の "発達障害"や"ADHD" の文字はありませんでした
かつ、ここに挙げられている疾患名の中に、娘に当てはまるものはなさそうでした。
その時点で
「・・・」
と続きを読むのが面倒になり、目次に戻りました。
すると、おばに関係のありそうな項目がありましたので、一応読んでみることにしました。
コレです↓
まず「7.5」にサッと目を通し、続いて「7.6 神経・筋疾患及び精神疾患とカルニチン」の項を読み進めておりますと、なんと"発達障害"の文字を発見したのです
↓
ただこれは
「発達障害そのものによって」
ということではなく、
「自閉症スペクトラム症などで摂食障害(=摂食量の低下や偏り)がある場合」
ということのようですので、娘には該当しなさそうです。
で、次のページをさらに読み進めておりましたところ、こんな記述を見つけたのです。
↓
まさか、本当に
カルニチン欠乏って、ADHDにも関係あるの
――この時の驚きと言ったら、とても言葉では表現できません。
偶然に次ぐ偶然からの発見でしたので、何だかキツネにつままれたような気分でした(←*これは"ねこへび"らしいです。こんなのがあるのになぜキツネがいない・・・?)
確かに
"エビデンスとしては低いが"
と書かれてはいますが、公式なガイドラインに記載しているくらいですし、少なくとも
"データ的に有効だと示されてはいないが、効く症例がある程度報告されている"
という可能性が十分あります。
しかもごく最近(2020年4月)の別の文献を見てみますと、カルニチン欠乏時の各疾患ごとのカルニチン投与量をまとめた表の中に、ナントわざわざ"ADHD"が記載されているではないですか
↓
(L‒カルニチン欠乏症の診断と治療指(外科と代謝・栄養54巻2号 2020年4月)より )
こ・こ・これはもう、カルニチンとADHDの間に関係があることは間違いなくないですか
となると、娘の低血糖の原因がカルニチン欠乏の可能性も十分ありえるのではないですか
――そう思い込みました私は、ちょうど次の発達障害外来の受診が間近に迫っていたこともあり、
「さっそく主治医の先生に相談してみなくては!!!」
と決意したのでした(*相変わらず勝手に)。