これまで

・カルニチンとは何か
・カルニチンはどんな働きをしているか

について調べてきました。


今度は

「いったいなぜ娘あるいはADHDの人でカルニチンが欠乏するのか」

 

を知るために、

・カルニチン欠乏が起こるしくみ

について調べてみたいと思います。
(*いろいろ雑用が多くて、今後は今までにも増して少しずつになると思いますが・・・ショック




■カルニチンの体内動態

○カルニチンの摂取と生成


一般的に、1日に必要なカルニチンのうち約75%が食事から供給され、残りの約25%が体内で生合成される、と言われています。

 

 

 

カルニチンは赤身の肉焼肉(*赤ければ赤いほどカルニチン含有量が多いそうですハッ、魚肉うお座、鶏肉鳥、牛乳牛あたま など動物性食物に豊富に含まれています。
 

 

普通の食生活をしている成人だと、1日あたり約60~180mgのカルニチンを摂取しています。

ですがたとえばビーガン(完全菜食主義者)では、1日のカルニチン摂取量は約10~12mgと少なくなります。

ただその場合でも、1日に必要なカルニチンは 肝臓や腎臓、脳 で十分な量が合成されるため、敢えて食物やサプリメントから摂取する必要はないとされています。

事実、全米アカデミーズの食品栄養委員会(FNB)は「カルニチンは必須栄養素ではない」と1989年に結論付けており、カルニチンの1日あたりの推奨栄養所要量などの食事摂取基準を定めていません。

ただし遺伝的疾患や医学的な理由により十分な量を産生できない人(未熟児など)にとっては、カルニチンは条件付きの必須栄養素といえるそうです。



○カルニチンの吸収

食物中のカルニチンのほとんど(54~86%)は 小腸から吸収 され、血液中に入ります。


吸収されなかったカルニチンは便中へと排泄されていきます。



○カルニチンの体内分布

食物から摂取または体内で生成されたカルニチンは、その後

・約98%が筋肉(骨格筋、心筋)に貯蔵され、
・約1.6%が肝臓と腎臓に分布し、
・残り約0.6%がそのまま細胞外液(血液)中に存在

することになります。
(*合計が微妙に100%をオーバーするのは気のせい・・・?ぶー
 


生体内のカルニチンプールは、小児よりも成人が、女性よりも男性が多く、小児の場合約50mmol、70kgの男性で約100mmol とされています。

 


各臓器や組織におけるカルニチン濃度は、以下のようになります。


(この表はこちらから引用させていただきました)
 

 

 

カルニチンは細胞でのエネルギー産生において非常に重要な役割を果たしているだけでなく、生成された有害な物質(アシルCoA・・・*👉3/9の記事をご参照下さい) をミトコンドリアの外に運び出す大切な役割も担っています。

そのためエネルギー(特に脂肪酸由来のエネルギー)を大量に消費する骨格筋や心筋、脳などに多く存在する、というわけです。

 


骨格筋に貯蔵されるカルニチン量が多いことから、骨格筋量が少ない乳幼児、女性、高齢者、重症心身障害児(者)、サルコペニア(*加齢やさまざまな疾患で筋肉量が減少し、身体機能が低下している状態のこと)や悪液質(*がんなどで脂肪組織と骨格筋の両方が消耗した状態のこと)を伴った患者は、カルニチン欠乏に陥りやすいとされています。

小児と成人や性別によるカルニチン濃度の差も、骨格筋の量の差によると言われています。

 

 

以上を図示しますと、以下のようになります↓


 


※ちなみに血中のカルニチンは0.6%とわずかですが、生体内のカルニチンプールの大部分を占める骨格筋の濃度と血中濃度は、緩やかな平衡状態になっていると考えられています。
そのため一般的には、血中のカルニチン濃度を測定することで全身のカルニチン量を推定できるとされています。

 ただし肝不全や肝硬変患者、横紋筋融解症を発症した患者、重度の食思不信患者などでは、必ずしも血中のカルニチン濃度測定が組織のカルニチンの状態を反映しない場合があるので、判断には注意が必要なのだそうです。
(その場合、真のカルニチン量は筋生検を行って筋肉内のカルニチンを直接測定する必要があります)

 

 


○カルニチンの排泄

ヒトの体には、体内の物質を必要な一定量に保つホメオスタシス(恒常性の維持)というシステムが備わっています。

カルニチンの場合も、必要に応じて余剰のカルニチンは体外へと排出されていきます。


たとえばカルニチン(正確には遊離カルニチン)は、ほとんどがいったん腎臓から尿(正確には原尿)中へと排泄されます。

原尿とは、腎臓内の糸球体において毛細血管から濾過されたばかりの尿のことで、蛋白質以外の尿素やブドウ糖、アミノ酸、ナトリウムなどを含んでおり、その後必要な養分が尿細管で再吸収されて最終的な尿となります。

カルニチンもほとんどが原尿中に排泄されますが、尿細管で90%以上が再吸収されます
(*体内のカルニチン濃度を一定に保つためのシステムが働き、再吸収率は変動します)

ミトコンドリア内で生じた有害なアシルCoAの解毒反応によって生じたアシルカルニチンも、同じく腎臓から原尿中へと排泄されます。
しかしアシルカルニチンはあまり再吸収されず、尿中へ排泄されていきます

 

 

(この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)
 

 

 

このように不要なカルニチンは大半が尿中へと排泄されていきますが、便中にもわずかだけ(1%以下)排泄されます。



■カルニチンの体内量を決定する要因

以上より、体内のカルニチン濃度は、

1.食事からの摂取量

2.生体内での生合成量
3.腎臓からの排泄量
4.腎臓の尿細管での再吸収量

の主に4つの要因によって規定されることになります。




――というわけで、次回以降は上記の4つの要因を少しだけ掘り下げてみたいと思います。