前回の記事で書かせていただきましたように、娘から症状を聞いて
「甘いものを摂取して治るなら、低血糖では」
ととっさに決めつけてしまいましたが、実はあまりよく分かってはいませんでした。
そのため今日は、その後低血糖について調べたことをまとめておきたいと思います。
*
■『血糖』って何?
血糖とは、血液に含まれる糖(=ブドウ糖=グルコース)のことです。
(ブドウ)糖は、私たちが生きていくために欠かすことのできないエネルギー源です。
たとえるなら、車にとってのガソリンのようなものです。
血液に含まれるブドウ糖の量すなわち血糖値は、多すぎても少なすぎても体に害があるため、常に100mg/dLを中心とした狭い範囲(約70-140 mg/dLの間)に維持されるように複数のホルモンによって調節されているのだそうです。
血糖値が高くなった状態を「高血糖」といいます。
高血糖を引き起こす代表的な疾患が"糖尿病"です。
逆に血糖値が低くなった状態を「低血糖」と呼びます。
■『低血糖』って何?
血液中のブドウ糖(グルコース)が不足した状態のことです。
一般的には血糖値が70mg/dL以下となった場合を低血糖といいますが、実はこの値は絶対的なものではないそうです。
といいますのも、どのくらいの値になると低血糖症状が出現するかには、個人差が大きいからです。
たとえば糖尿病などで普段から血糖値が高い人の場合、100mg/dLでも低血糖症状を起こすことがあります。
逆に40mg/dLでも何も感じない人もいるのだとか。
そのため、実際に低血糖かどうかを判断する際には、『ホイップルの3条件』が用いられたりするそうです。
『ホイップルの3条件』とは:
①低血糖と関連のありそうな症状がある。
②血糖を上昇させるとその症状が消失する。
③血糖値が低い。
ここでひとこと・・・
大前提として、「果たして娘の症状は本当に低血糖なの・・・」という疑問があるわけですが、娘の場合症状がある時に血糖値を測れてはいませんので、③については確かめることができません。
ですが①②は明らかに満たしていると思われます。
ですので
「やはり娘は低血糖を起こしているのでは・・・?」
とあらためて思いました
■低血糖の症状
前述のように、血糖値が70mg/dL以下なら必ず低血糖の症状が出る、というわけではなく、症状の出方や症状そのものにもかなりの個人差があることが分かっています。
代表的な低血糖の症状には、以下のようなものがあります。
↓
★
(この画像はこちらから引用させていただきました)
また低血糖は、夜間寝ている間にも起こるそうです。
↓
(この画像はこちらから引用させていただきました)
またひとこと・・・
「低血糖の症状」を見て、私はとっっても驚きました。
なぜなら、
頭痛やめまい、眠気、集中困難、倦怠感、日中の体調不良など、これまで起立性調節障害(OD)のせいだと思っていた症状がカナリ含まれているではありませんか
こ…これはいったい、ど・ど・どーいうことでしょう
ということで、低血糖の症状についてもう少し詳しく調べてみました。
↓
■低血糖の症状が起こる機序
人類の歴史は、長い間ずっと飢餓との戦いでした。
血糖値が下がると、体、特に脳の働きがタメージを受けます。生命すら危機にさらされます。
そのため万が一食料にありつけない状況が続いた場合でも、簡単に低血糖に陥ることがないよう、ヒトの体には血糖を上げるためのホルモンが4種類備わっています。
※余談ですが、血糖を下げるためのホルモンは、インスリンただ1種類しかありません。
だからこそ、飽食の時代となった現代は糖尿病が激増しているのであり、もし血糖降下作用を持つホルモンが人体に2種類用意されていたら、糖尿病という病気は存在しなかったとも言われているそうです
●4種類の血糖上昇ホルモンとは
血糖を上昇させるホルモンには次の4種類があります。
・ グルカゴン
・ 成長ホルモン
・ 副腎皮質ホルモン(コルチゾール)
・ アドレナリン
食べ物から摂取したブドウ糖(グルコース)のうち、エネルギー源として各細胞で利用される以外の余分なものは、グリコーゲン(*日本語では"糖原"というそうです)という形で肝臓と骨格筋に貯蔵されます。
そしていざブドウ糖(グルコース)が必要となった時は、これらのグリコーゲンが分解されることによって、ブドウ糖(グルコース)が血中あるいは骨格筋中に放出されます。
(∵グリコーゲンはあくまでも貯蔵するための形であって、ブドウ糖(グリコーゲン)のようにエネルギー源として利用することはできないためです。)
肝臓のグリコーゲンは主に血糖の維持に、骨格筋のグリコーゲンは運動時のエネルギー源として利用されるそうです。
そして上記の4種類の血糖上昇ホルモンは、いずれも低血糖時に肝臓に働いて、肝臓のグリコーゲンを分解することにより血糖値を上昇させる作用を持っています。
ここでひとこと・・・
この中の「アドレナリン」、これは以前にも見たことがあります!
この記事や↓
この記事で↓。
復習しますと(*私はすっかり忘れておりましたが)、 アドレナリン は神経伝達物質の1つで、交感神経が優位になった時に副腎髄質で合成され血中に分泌されます。
つまり、
体が低血糖に陥ると
↓
上記の4つの血糖上昇ホルモンが分泌される。
たとえばアドレナリンについては、その合成・分泌を促すために交感神経が興奮する。
↓
その結果副腎髄質においてアドレナリンが合成・分泌され、血液によって肝臓に運ばれてグリコーゲンが分解され、血糖値が上昇する。
という反応が速やかに起こるわけです。
一方、交感神経が興奮したことによって、副次的に交感神経末端から大量のノルアドレナリンも分泌されます。
こうして、低血糖時にはこれらのアドレナリンと ノルアドレナリン という興奮性の神経伝達物質が大量に作用して、動悸や手足のしびれ、筋肉のこわばり、頭痛、精神面ではイライラや不安感、恐怖心などの症状が出現するというわけです
つまり、血糖値が70mg/dL以下になった際に最初にあらわれるさまざまな症状は、実は自律神経(交感神経)の反応によるものというわけなのです。
(ちなみにこれは人体が血糖値を上げて対応しようとする反応でもあるため、「警告症状」とも呼ばれるそうです)
さらに血糖値が下がって50㎎/dL以下になると、脳などの中枢神経がエネルギー不足となって、 集中力が落ちたり、強い眠気に襲われたり 、さらには意識障害などの症状が出現するのだそうです。
●低血糖症状の機序による分類
以上のことを踏まえ、低血糖症状を機序によって分類しますと、以下のようになります。
↓
○中枢神経の反応
・自覚症状:頭痛、眼がかすむ、ほやけて見える、2重に見える
・他覚症状:異常行動、不合理な興奮、精神錯乱、発語困難、好戦的、せんもう、うつらうつら、眼振、運動麻痺、けいれん、昏睡
○自律神経の反応
・アドレナリン作動性反応の症状:振戦、心機冗進、不安感
・コリン作動性反応の症状:発汗、空腹感、舌先や口のまわりがピリピリする
(*交感神経が過度に興奮することによって自律神経のバランスが崩れ、副交感神経症状も出現するようです)
○その他の症状(主に自律神経の反応だが、部分的には中枢神経の反応も関与している):悪心嘔吐、疲労感、眠気、イライラ、めまい。
・・・ということを念頭に最初に紹介させていただきました低血糖症状をあらためて見てみますと、こういうことになります。
↓
(この画像はこちらから引用の上改変させていただきました)
■低血糖はなぜ良くないのか?
上記のような症状以外に、低血糖の良くない点を列挙してみます。
○不快であり、血糖を上昇させた後も不快感、体調不良が残るから。
(*甘いものを摂取すると最悪の状態からは秒で脱出できるものの、その後も何となく体調が優れないと言っていたのはそのためだったのですね。納得)
○重症の低血糖では、意識障害から命に危険が及ぶこともあるから。
・誰も見ていないところで起こると危険。例えばトイレの中や一人暮らしの時など。
・深夜の低血糖は睡眠を妨害するし、遵切な処置が難しい。
・周囲の人の手助けを借りなければならないような意識消失やけいれんも起こりうる。
○乳幼児では、低血糖が知能低下や性格変化の原因になる可能性がある。
○成人でも、低血糖が精神機能障害を起こしたり、狭心症、不整脈、硝子体出血につながることがある。
○ 低血糖になると血糖を上昇させるホルモンが必要量以上に出すぎたり、甘いものをたくさん捕食することによって、逆に低血糖後の高血糖が起こる。これによりたとえば糖尿病の人ではコントロールが悪化する。また血糖の乱高下によって自律神経のバランスがさらに乱れる。
またまたひとこと・・・
なんかヤバくないですか・・・?
知能や精神衛生面にも影響があるって・・・
しかも低血糖や低血糖を繰り返すことが自律神経にまで悪影響を及ぼすなんて・・・
低血糖とODとの共通ワード「自律神経」の観点から、もう少し掘り下げてみたいと思います。
↓
■低血糖と起立性調節障害(OD)の症状がなぜこんなに似ているのか?
まずは、最初の方で紹介させていただきました 『娘は本当にOD(起立性調節障害)だったのか・入門編』 という記事の中から、起立性調節障害(OD)についてまとめた部分を転記させていただきます。
↓
◆起立性調節障害(OD,orthostatic dysregulation)とは
・自律神経の代償調節機能が低下した状態と、心理社会的因子がさまざまな程度で混ぜ合わさった、幅広いスペクトラムからなる疾患。
・ただしODの場合は、“自律神経失調症”や“更年期障害”のように自律神経の働きが広くバランスを崩してしまっているわけではありません。
・ODでは、主に循環器系を調節する交感神経(詳細は下記)の代償機能が低下しています。
・そのため起立時などの体動時に反射的に血圧を保つことができず、血圧が低下してしまったり、その反動で頻脈になってしまいます。
・血圧が低下した結果、脳に行く血流が低下し、動悸の他、めまいや失神などの症状が出現します。
・また低血圧のため朝起きられず、午後からだんだん元気が出てきて、夜はなかなか眠れない、という症状も多くみられます。その結果夜更かし朝寝坊が定着してしまい、登校が困難となり不登校に至るケースも少なくありません。
・日常生活の困難から、強い不安や抑うつ、焦燥感、集中力や作業能力の低下などの精神症状を伴うこともあります。
・循環器系以外の自律神経の機能異常により、疲れやすい、腹痛、吐き気、嘔吐、頭痛、胸痛、食欲不振、朝起きられない、などの症状も現れます。
つまり、起立性調節障害(OD)は主に循環器系を調節する交感神経の代償機能が低下しているために、自律神経症状のほか、脳への血流が低下したことによる中枢神経症状があらわれます。
ちなみに"脳への血流低下"は、酸素だけでなくブドウ糖の供給低下も含まれます。
そして低血糖では、自律神経(主には交感神経)の反応によって自律神経症状が出現するほか、脳でのエネルギー源(=ブドウ糖)不足による中枢神経症状があらわれます。
つまり低血糖と起立性調節障害(OD)は、原因は違えど起こっていることはとてもよく似ており、そうなりますと
症状が似ていて当然
といえるわけです
ここで・・・ちょっと待てぇぇぇぇぇい
昔から娘に山ほどあるコマゴマとした体調不良には、自律神経の機能障害が関与しているのは間違いないと思われます。
その自律神経の機能障害の主な原因は起立性調節障害(OD)だと、ずっと思い込んでいました。
(ADHDも一部関係している可能性がありますが)
ですが、もし本当に娘に低血糖が起こっているのだとしたら、
これまでの頭痛やめまいや倦怠感や眠気なども、実は起立性調節障害などによる自律神経の機能障害のせいだけではなく、低血糖が関わっていた可能性もあるということなのでしょうか
それならば、もし娘の低血糖を改善することができたら、自律神経の機能不全も落ち着いて、山ほどあるコマゴマとした体調不良が良くなる可能性もあるのでしょうか
――しかし、ここでの最大の謎は、なぜ娘が低血糖になるのか、ということです。
娘の話を聞いていても、
「私ならそのくらいの時間食事を摂らなかったからといって、体がだるくなってきて"ヤバい、エネルギー切れだ。そろそろ何か食べておかないと"と思う程度で、そこまでのひどい低血糖症状は出たことないけどなぁ」
と感じるようなことばかりです。
というわけで、次回はなぜ娘が低血糖になるのか調べたことをまとめてみたいと思います。