俺の勇気ある決断でネギの件は綺麗さっぱりと解決した。
さて、彼女は何を作ってくれるつもりだ?
俺は子供が新しいオモチャを買ってもらう時の様な顔をして、彼女の言葉を待っていた。

「じゃあ…ピザを作ろうかな♪」

ピ…ピザですか!?
イタリア人が指先でクルクル回して作るやつですよね。
彼女もクルクルするのか?
俺の想像は飛躍的に膨らんでいる様だ…

「ちゃんと生地から作るし、オリジナルソースも作るから♪
しかも、ビールがすすむ♪」

彼女は嬉しそうに話して、グラスに唇をつけた。

「わかった。じゃあ、作ってもらおうか。
そのかわり、不味かったら怒るぞ。」

俺は笑いながら彼女に話した。

その時…

「勝雪さん!俺達カラオケ行こうと思ってるんすけど、一緒に行きます?」

行くわけねぇだろ…
何が嬉しくてテメー等の歌を聴かなきゃならんのだ?

「俺達は止めておく…
楽しんでこいよ。」

俺は適当な返事をしながら、手のひらをヒラヒラさせて、お願いだから早く消えて下さい!ポーズをした。

「わかりました。じゃあ、彼女の事は任せましたよ。」

後輩はそう言いながら店員にチェックのサインを出した。

………
彼女の事は任せましたよ……だとぉ~!
若干、上から目線の言動ですよね!!
……殺すか?
俺の心の闇が広がった時


「じゃあ、私達は場所を変えて飲もうよ♪」

俺の腕を掴んで彼女が立ち上がった。

す…素晴らしい!
たいした努力無しで、望んでいた形になってきたではないか。
どうやら、この店でのミッションは成功の様だな。

さて…ここからが本番だ。
男の下心満開で、俺は立ち上がった。
「俺も同じ味覚を持ってるぞ。
辛いモノ好きだし、料理は濃い口が当たり前。
病院食みたいな薄口はダメだな。
いい晩酌の相手になりそうだよ。」

笑いながら話すと彼女は嬉しそうに…

「じゃあ、手料理作るから食べてくれる?」

み…みなさん、聞きましたか?
男が言われたいセリフのベスト5に入るセリフを頂きました!!

ちなみに、俺の中での1位は、彼女になれなくてもいいから抱いて…です。

ん?
ちょっと待て…
俺は好き嫌いがあるのだ。

……ネギ

こいつは無理だ!
俺の価値観では悪意の塊にしか思えない。
しかし…俺、ネギが食べれないんです;…なんて言えるのか?
30歳越えたオッサンが…しかも、知り合ったばかりの女性に。
格好悪すぎるだろ。

そんな事を考えてたら…

「嫌いなモノとかある?
美味しく食べて欲しいから、嫌いなモノは使わない様にするし♪」

彼女が笑いながら言ってくれた。

す…素晴らしい!
基本は、食べたいモノを聞いたり、好きなモノを聞くだろう。
このタイミングで、そのセリフ…
ありがとうございます♪
自然な流れに身を任せ、遠慮無しに言わせてもらおう。

そう……俺はネギが食べれないと!!
とは言うものの、タイプを聞かれても本当に可愛いけりゃいいんですけど。

あっ!!絶対条件があるではないか!

「料理が上手な女性かな…」

俺はタバコに火をつけながら彼女に答えた。

すると彼女は…

「タバコ吸いすぎ!」

少し怒りながら、俺のタバコを取り上げると、自分の唇をつけた。

「タバコを吸う女…嫌い?」

不安そうな顔をしながら俺の答えを待っている。

「べつに…気にならないな。吸う女と吸わない女…どちらかを選べ!と言われたら吸わない女だろうけど、好きにすればいいんじゃないか?」

タバコを取られて宙に浮いたままの手が行き場を無くして、仕方無くグラスへと向かう…その時

俺の唇にタバコが帰ってきた。

あら?早いお帰りで…

心の中で、一応ツッコミを入れておいた。

彼女が真剣な表情で自分のカバンの中を覗き込み、何かを探している。

おもむろにタバコを取り出すと、力強く捻り潰した。

「どうした?」

俺は本気で意味がわからなかった。
ま…まさか、私もタバコやめるから、アナタもやめなさい!!
とか、言い出すんじゃないだろうな?
そんなセリフを吐いた途端、言葉を言い終わる前にタバコを3本まとめて火をつけて美味しそうに吸ってやるから!!
さて、どんなセリフが飛び出すのだ?

俺の期待とは裏腹な言葉が返ってきた。

「タバコ…やめる♪」

えっ!?何言ってんの…この子。
理解出来ないわ…

心の中の俺は、子供に手を焼いてる母親のセリフしか出てこなかった。

……
…………

「べ…別にやめなくてもいいんじゃないか?」

言葉のチョイスが難しい。俺の頭の中に有る引き出しを必死で開けてみるが、こんなシーンにフィットする言葉が見付からない。

「や・め・る♪」

俺の顔を見つめながら微笑んでいる。

「好きにしろ…」

俺は少し上に目線を上げてタバコの煙を眺めていた。

「うん。好きにする♪
あっ!料理ね!!
凄く自信あるよ。
でも…」

少し言葉に詰まった彼女を見ながらタバコを揉み消した。

「でも…の続きは?」

料理が上手と言ってるんだから、少し気になる。

何やら言いにくそうな顔で彼女は話し出した。

「私ね…見ての通り、お酒大好きなの。だから、作る料理のほとんどが濃い口の味付けになるの。
しかも、辛いモノが大好きだし…
ねっ!オジサンみたいでしょ…」

彼女は苦笑いをしながら俺を見ている。

ここは本音で話してやるか…