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パラレル

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群馬県立館林美術館で開催中の「日欧プライベートコレクション ロイヤル コペンハーゲンと北欧デザインの煌めき アール・ヌーヴォーからモダンへ」展へ行って来ました。


幸福度の高い暮らしで知られる北欧。

生活の中に優れたデザインを取り入れることでも注目されています。

本展では、デンマークとスウェーデンに焦点を当て、19世紀末から20世紀にかけての北欧デザインの魅力を、日欧の貴重なプレイベートコレクションを通して紹介しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

ROYAL COPENHAGEN

BING & GRØNDAHL

GEORG JENSEN

FIGURE

RÖRSTRAND

ORREFORS / KOSTA

 

ロイヤル コペンハーゲンは、デンマーク王立磁器製作所を起源とし、早くから国際的な評価を獲得しました。

1775年の開窯直後に、同窯を象徴する《ブルーフルーテッド》の製造に着手しています。

青と白の落ち着いた釉薬、絵付けの繊細さや均整の取れたフォルム。

”原点”としての磁器の凛とした存在感を味わえます。


ペインター:マティアス・ハンセン・ウォルストロップ《皿<ブルーフルーテッド>》(1785年頃) 塩川コレクション

展示風景より

 

かつて、デンマークでロイヤル コペンハーゲンと双璧をなしたのが、ビング オー グレンダールです。

この時代の陶磁器は、単なる実用品ではなく、「装飾性」「デザイン性」が強調され始めます。

つまり、従来の古典磁器から脱却して、より自由で個性ある形や絵付が試みられています。


デザイン:ピエトロ・クローン《金彩鷺アイスバケット》(1898-1914年) 塩川コレクション、デザイン:ピエトロ・クローン《金彩鷺ソースボート》(1898-1914年頃) 塩川コレクション

 

ジョージ ジェンセンは、110年以上の歴史を持ち、長年にわたって北欧デザインを牽引してきたデンマークのプロダクトブランドです。

ここでは、陶磁器だけでなく、金属/銀器によるデザインを紹介しています。

 

この時代は、陶磁器やガラス器と同列に、日常生活用品として「機能と美」の両立を追求する時代でした。

金属ならではの質感とフォルム、そして北欧らしい機能美。

「暮らしの道具」を芸術にまで高めた表現に注目です。


展示風景より

オスカー・グンドラフ・ペダーセン《浅いボウル no.544》(デザイン:1928年頃 制作:1915-1930年) 個人蔵


展示風景より

 

そして、20世紀中葉のガラス工芸も紹介されています。

透明感・光・色彩・曲線など、陶磁器や金属とは異なる表現が光ります。

オレフォスやコスタのガラス作品が展示されています。

 

ここでは、アール・ヌーヴォー以降の北欧デザインが、「実用」「美」「詩情」を兼ね備えた、”モダン”として成熟した姿を鑑賞することができます。

光と透明感、色彩やフォルムの洗練。

「使うこと」と「見ること」の境界が曖昧になる、暮らしの美に注目です。

 

本展では、単に年代順に並べるだけでなく、磁器→金属→ガラス→という素材ごとの変換を見せることで、「北欧デザインとは何か」「なぜ北欧でこれほど”暮らしの道具”にデザインが宿るのか」を、より多角的に理解することができます。

また、日欧のプライベートコレクションから集められた作品で構成されており、個人が大切にしてきた質の高いコレクションを鑑賞できる貴重な機会を言えるでしょう。



 

 

 

 

会期:2025年10月11日(土)〜12月14日(日)

会場:群馬県立館林美術館

   〒374-0076 群馬県館林市日向町2003

開館時間:午前9時30分〜午後5時

   ※入館は午後4時30分まで

休館日:月曜日(10月13日、11月3日、11月24日を除く)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)

主催:群馬県立館林美術館

後援:デンマーク王国大使館、スウェーデン大使館

企画協力:株式会社ブレーントラスト

参加:第49回県民芸術祭参加

 

 

資生堂ギャラリー開催中の「髙田安規子・政子Prespectives この世界の捉え方」展でこれは、と思う作品《Relation of parts to the whole》の主観レビューをお届けします。


本作は、壁面に217枚の大小様々な鏡を放射状に配置したインスタレーションです。

鏡は固定され、鏡面は光を反射し、鏡そのものと、そこに映り込む”世界”の両方を作品として取り込む構造になっています。

 

作品としては、一つの巨大なインスタレーションを構成していますが、その前に立つと、私たちの姿は鏡によってバラバラの断片へと解体されます。

少し体を動かしたり、近づいたり離れたりすると、映り込む世界が激しく変化します。

これは、視点を変えれば、世界の見え方は一変するということなのです。

 

また、私たちが他者を見る時にも言えることなのではないでしょうか。

他人を見る時は一面しか見えてないにも関わらず、「この人は・・・」と判断しがちです。

本作を鑑賞するように、体を動かし、個々のイメージを繋ぎ合わせ、全体を掴むことを促しているようです。


髙田安規子・政子(2025年)《Relation of parts to the whole》

資生堂ギャラリーで開催中の「髙田安規子・政子Perspectives この世界の捉え方」展へ行って来ました。


髙田安規子・政子は、一卵性双子のユニットで活動するアーティストです。

身近な素材を用い、空間や時間の「スケール」をテーマに制作。

作品は、数学や物理学的アイデアを背景に繊細な手仕事や緻密な構成で生み出され、アートと科学を融合させた独自の感性により表現されます。

 

2人は2024年、資生堂の文化施設である資生堂企業資料館、資生堂アートハウスの両施設(静岡県掛川市)を訪れ、資生堂の社名の由来である易経の一節「至哉坤元 万物資生」(大地の徳はなんと素晴らしいものであろうか。すべてのものは、ここから生まれる)に出会いました。

自分たちの自然観と重なり合うことから、本展では、「万物資生」の考えを起点に、生命やその成り立ち、進化の歴史を時間の層として描き出しながら、自然の法則で宇宙までつながる時空間を、スケールとともに巨視的・微視的に捉え可視化することを試みています。

 

展示室入口では、15世紀のイギリスの物理学者ウィリアム・ギルバートが「地球は大きな磁石である」と提唱したことに着想を得た《Magnetic field》が展示されています。

地球・木星・土星の図像の上に砂鉄を撒き、それぞれ北極と南極の裏にS極とN極の位置に対応するように磁石を設置してあります。

砂鉄が描く磁力線のパターンによって、磁場の様子が視覚的に確認することができます。


髙田安規子・政子《Magnetic field (Jupiter/Saturn)》(2020年) 、髙田安規子・政子Magnetic field (Jupiter/Saturn)》(2020年)

 

階段を降りると、時間の可視化を試みたという《Timepiece》が設置されています。

ホモ・サピエンスが登場したといわれる20〜40万年前からの時間を砂・石・岩の重さに置き換えて構成しています。

割れた砂時計からこぼれ出たすなは、時間そのものについて考えさせられると同時に受け継がれていく生命、あるいは終焉を思い起こさせます。


髙田安規子・政子《Timepiece》(2025年)

 

同ギャラリーの特徴である吹き抜けを使用した《Strata》は、約500冊の本を積み重ね、それを地層に見立てた大型インスタレーションです。

本の隙間には鉱石や化石が挟み込まれています。

「知の集積(本)」と「時間の集積(地層)」を重ね合わせ、下から見ると圧倒的な時間の重みを感じます。


髙田安規子・政子《Strata》(2025年)


髙田安規子・政子《Strata》(部分、2025年)


髙田安規子・政子《Strata》(部分、2025年)

 

本展は、「世界は捉え方ひとつで、いかようにも変えられる」ということを気付かせてくれます。

忙しい日常で凝り固まった視点をほぐし、マクロな宇宙視点とミクロな観察眼の両方を取り戻させてくれる展覧会です。

 

 

 

会期:2025年8月26日(火)〜12月7日(日)

会場:資生堂ギャラリー

   〒104-0061 東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビル地下1階

開館時間:平日 11:00〜19:00

     日祝 11:00〜18:00

休館日:毎週月曜日(月曜日が祝日にあたる場合も休館)

主催:株式会社 資生堂