パラレル -23ページ目

パラレル

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三菱一号館美術館で開催中の「アール・デコとモード 京都服飾文化研究財団(KCI)コレクションを中心に」展へ行って来ました。


1925年を起点として世界を席巻した装飾様式「アール・デコ」。

生活デザイン全般に及んだその様式は、「モード」すなわち流行の服飾にも現れました。

ポワレやランバン、シャネルなどパリ屈指のメゾンが生み出すドレスには、アール・デコ特有の幾何学的で直線的なデザインや細やかな装飾が散りばめられています。

それは古い習慣から解放され、活動的で自由な女性たちが好む新しく現代的なスタイルでした。

 

2025年は、現代産業装飾芸術国際博覧会(通称アール・デコ博覧会)から100年目にあたります。

本展では、この記念の年に、現代にも影響を与え続ける100年前の「モード」を紐解いています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

序章 アール・デコ現代モードの萌芽

第1章 モードの変化と新しい身体観

第2章 アール・デコ博覧会とモード、芸術家との協働

第3章 オートクチュール全盛期の女性クチュリエたち

第4章 異国趣味とその素材

第5章 アクティブな女性たち

第6章 新しい身体表現とスポーツ

終章 受け継がれるアール・デコのモード

 

序章では、前世紀に比べ、格段に活動的になった女性に相応しい、現代的な装いを紹介しています。

衣服は簡潔なシルエットになり、服飾小物や化粧道具は携帯性と小型化が進みました。


展示風景より


展示風景より

 

19世紀から20世紀初めにかけて、アール・ヌーヴォーが流行します。

当時のモードはレースやフリルを多様し、なによりコルセットで身体を人工的に造形することで極端な曲線を生み出していました。

 

しかし、アール・デコ期になるとその様式は一変し、衣服は身体の曲線を強調しない直線的な裁ち線で構成されるようになりました。

この方向性を明確に打ち出したのが、アール・デコ期を代表するポール・ポワレやガブリエル・シャネルをはじめとするパリのクチュリエたちでした。

第1章では、なぜこの時代にこの装飾様式が生まれたのか、という背景を提示しています。


展示風景より


展示風景より

 

彼らが提唱するモードに呼応し、下着のあり方も変化します。

コルセットに代わってブラジャーが登場し、膝下まで丈が上がったスカートから見える脚に合う薄い絹製のストッキングが流行しました。


展示風景より

 

1925年の現代産業装飾芸術国際博覧会では、服飾が芸術性の高い産業の一つに位置付けられ、全体で5つのグループに分けられた展示のうちの一つが「装飾」に充てられました。

そこでは衣服や宝飾品類、香水、帽子や靴類など、パリ屈指のクチュリエ、飽食や香水メーカーらによる最新の品々が展示され、会場となったグラン・パレやエレガンス館、ブティック通り、そしてポール・ポワレの川船を使用した展示は、各国メディアの耳目を集めることになりました。


ロベール・ボンフィス ポスター「現代産業装飾芸術国際博覧会 1925年」(1925年) 京都工芸繊維大学美術工芸資料館

 

この服飾産業の隆盛を後押しした一つに、芸術家たちとの協働があります。

簡潔なかたちが主流になった衣服において、クチュリエたちは新進気鋭の画家や工芸家たちが生み出すデザインを積極的に採用し、新たな芸術性と装飾性に富んだモードを創出しました。


展示風景より

展示風景より

 

第2章では、アール・デコ博覧会による服飾産業の隆盛と芸術家たちとの協働の精華を堪能することができます。

 

19世紀のデザインにおいて、異国趣味が流行します。

それは、単なるモチーフの引用に留まることが多かったが、20世紀のアール・デコ期になると、異国由来のモチーフは再解釈され新たな文様となってモードを彩りました。

第4章では、異国要素を昇華したドレスなど、そのフォルムや素材とともに楽しめます。

 

アール・デコの時代、女性たちは鉄道や自動車で自由に遠出をするようになりました。

彼女たちを飾る帽子やバッグといった服飾小物には、前時代のそれと比べ簡易さや軽さが求められるようになります。

帽子はつばのない小さくまとまった形になり、動きやすくかつ膝下丈のスカートに合うように、靴のデザインは軽快なものになりました。

機能的かつ装飾性に富んだ腕時計も登場します。

こうした服飾小物は、アクティブ女性の装いを完成させる重要なアイテムでした。

第5章では、アクティブな女性たちが持ち歩いた品々を鑑賞することができます。

 

アール・デコ博覧会で話題をさらったものの一つにモードの展示に用いられたマネキンがあります。

それは、それまでのリアルな人体を模したものではなく、抽象化された新しいフォルムの女性像でした。

この趣向は、ジャン・デュパやエドゥアルド・ベニートらの絵画、マン・レイの写真などにも端的に表れています。

 

同時に、スポーツの広がりも人々の身体観を大きく変えました。

ベストセラー小説から生まれた「ギャルソンヌ(少年のような娘)」と呼ばれた女性たちは、時代の寵児となり、若々しい身体で最新のモードを着こなしました。

こうした動きにいち早く反応したクチュリエたちは、スポーツウェアの開発をはじめ、デザインをさらに洗練させていきます。

 

1930年代にその流行の終焉を迎えたアール・デコ。

1960年代に一度は忘れられたこの様式が再び見出されたきっかけとなったのは、「Les années 25(『25』年代)」展です。

その背景として、第二次世界大戦後の経済成長や女性の社会参画への機運といった社会的類似性、さらに60年代に盛んになるミニマルアートやポップアートとの芸術的親和性が指摘できます。

アール・デコのモードの現代性は、100年を経た今もなお私たちを惹きつけてやまない。

 

本展は、「ファッションが現代の扉を開いた瞬間」を目撃できる、必見の展覧会です。

ファッション好きはもちろん、デザインや歴史に関心がある方にとっても満足度の高い内容となっています。

 

 

 

 

 

会期:2025年10月11日(土)〜2026年1月25日(日)

会場:三菱一号館美術館

   〒100-005 東京都千代田区丸の内2-6-2

開館時間:10:00〜18:00

   ※1/2を除く金曜日と会期最終週平日、第2水曜日は20:00まで

   ※入館は閉館の30分前まで

休館日:祝日・振替休日を除く月曜日、および12/31と1/1

   ※ただし、トークフリーデーの10/27、11/24と12/29、会期最終週の1/19は開館

主催:三菱一号館美術館、公益財団法人 京都服飾文化研究財団

特別協力:株式会社ワコール

後援:在日フランス大使館/アンスティチュ・フランセ

協賛:DNP大日本印刷

協力:日本航空、株式会社 七彩

 

 

群馬県立館林美術館で開催中の「日欧プライベートコレクション ロイヤル コペンハーゲンと北欧デザインの煌めき アール・ヌーヴォーからモダンへ」展でこれは、と思う作品、《風景図皿》の主観レビューをお届けします。


本作は、日が沈みかけ、闇が支配し始めている時間帯を描いています。

風が吹き抜け、カラスも飛び立っています。

木や月が映る水面は、印象派風のタッチで、その様子が手に取るように感じられます。

 

クローは青い下絵付けを強化することで、繊細で落ち着いた色調、静けさや詩情のある風景画風の絵付けを実現しました。

これは、彼が日本の陶磁や浮世絵、自然観などからインスピレーションを受けていたためだとされています。

つまり、本作には器として機能の他に、芸術としての表現も含まれているのです。

 

光と闇がせめぎ合うグラデーションが目を引く作品です。

落ち着いたディナーによく合いそうです。


アーノルド・クロー《風景図皿》(1890年) 塩川コレクション

 

 

群馬県立館林美術館で開催中の「日欧プライベートコレクション ロイヤル コペンハーゲンと北欧デザインの煌めき アール・ヌーヴォーからモダンへ」展へ行って来ました。


幸福度の高い暮らしで知られる北欧。

生活の中に優れたデザインを取り入れることでも注目されています。

本展では、デンマークとスウェーデンに焦点を当て、19世紀末から20世紀にかけての北欧デザインの魅力を、日欧の貴重なプレイベートコレクションを通して紹介しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

ROYAL COPENHAGEN

BING & GRØNDAHL

GEORG JENSEN

FIGURE

RÖRSTRAND

ORREFORS / KOSTA

 

ロイヤル コペンハーゲンは、デンマーク王立磁器製作所を起源とし、早くから国際的な評価を獲得しました。

1775年の開窯直後に、同窯を象徴する《ブルーフルーテッド》の製造に着手しています。

青と白の落ち着いた釉薬、絵付けの繊細さや均整の取れたフォルム。

”原点”としての磁器の凛とした存在感を味わえます。


ペインター:マティアス・ハンセン・ウォルストロップ《皿<ブルーフルーテッド>》(1785年頃) 塩川コレクション

展示風景より

 

かつて、デンマークでロイヤル コペンハーゲンと双璧をなしたのが、ビング オー グレンダールです。

この時代の陶磁器は、単なる実用品ではなく、「装飾性」「デザイン性」が強調され始めます。

つまり、従来の古典磁器から脱却して、より自由で個性ある形や絵付が試みられています。


デザイン:ピエトロ・クローン《金彩鷺アイスバケット》(1898-1914年) 塩川コレクション、デザイン:ピエトロ・クローン《金彩鷺ソースボート》(1898-1914年頃) 塩川コレクション

 

ジョージ ジェンセンは、110年以上の歴史を持ち、長年にわたって北欧デザインを牽引してきたデンマークのプロダクトブランドです。

ここでは、陶磁器だけでなく、金属/銀器によるデザインを紹介しています。

 

この時代は、陶磁器やガラス器と同列に、日常生活用品として「機能と美」の両立を追求する時代でした。

金属ならではの質感とフォルム、そして北欧らしい機能美。

「暮らしの道具」を芸術にまで高めた表現に注目です。


展示風景より

オスカー・グンドラフ・ペダーセン《浅いボウル no.544》(デザイン:1928年頃 制作:1915-1930年) 個人蔵


展示風景より

 

そして、20世紀中葉のガラス工芸も紹介されています。

透明感・光・色彩・曲線など、陶磁器や金属とは異なる表現が光ります。

オレフォスやコスタのガラス作品が展示されています。

 

ここでは、アール・ヌーヴォー以降の北欧デザインが、「実用」「美」「詩情」を兼ね備えた、”モダン”として成熟した姿を鑑賞することができます。

光と透明感、色彩やフォルムの洗練。

「使うこと」と「見ること」の境界が曖昧になる、暮らしの美に注目です。

 

本展では、単に年代順に並べるだけでなく、磁器→金属→ガラス→という素材ごとの変換を見せることで、「北欧デザインとは何か」「なぜ北欧でこれほど”暮らしの道具”にデザインが宿るのか」を、より多角的に理解することができます。

また、日欧のプライベートコレクションから集められた作品で構成されており、個人が大切にしてきた質の高いコレクションを鑑賞できる貴重な機会を言えるでしょう。



 

 

 

 

会期:2025年10月11日(土)〜12月14日(日)

会場:群馬県立館林美術館

   〒374-0076 群馬県館林市日向町2003

開館時間:午前9時30分〜午後5時

   ※入館は午後4時30分まで

休館日:月曜日(10月13日、11月3日、11月24日を除く)、10月14日(火)、11月4日(火)、11月25日(火)

主催:群馬県立館林美術館

後援:デンマーク王国大使館、スウェーデン大使館

企画協力:株式会社ブレーントラスト

参加:第49回県民芸術祭参加