三菱一号館美術館で開催中の「フェリックス・ヴァロットンー親密な室内」展でこれは、と思う作品《お金》の主観レビューをお届けします。
画面に描かれるのは、女性に話しかける男性。
情緒的な関係ではなく、利害によって結ばれた関係が露骨に示されています。
感情よりも計算が渦巻くブルジョワ社会の冷たさを、シンプルな線だけで皮肉たっぷりに描いています。
19世紀末のパリでは、上流階級と新興ブルジョワジョワジーが消費社会を謳歌し、男女関係は欲望と金銭が交錯する場でした。
ヴァロットンはそこに潜む欺瞞を、冷徹な視線で切り取りました。
本作では、黒い影が画面の大部分を占め、息苦しいほどの緊張感を演出し、限定的な白い部分に描かれる人物に視線が集中するようにしています。
そうした視覚的な単純化が、見えない会話や関係性を想像させ、社会批評を鋭くしています。
こうした点は、エドガー・ドガの作品とも類似点があります。
どちらも人間を公的な場ではなく、室内・密室で捉えています。
そこに描かれるのは、親密さに潜む不安・緊張・支配関係です。
つまり、美しいようで、美しくない現実を隠しません。
そして、どちらも単なる理想化された女性像から離れます。
ドガはしばしば冷徹な視線でその現実を描き、ヴァロットンはさらにそこに金銭が介在する歪みを明確にします。
二人はともに、社会の装飾を剥ぎ取り、人間の隠された関係性に光を当てたと言えるでしょう。
フェリックス・ヴァロットン《アンティミテ》(1897-98年) 三菱一号館美術館
フェリックス・ヴァロットン《お金》








