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パラレル

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アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《石炭の積み下ろし》の主観レビューをお届けします。

本作は、セーヌ川の岸で船から石炭を荷揚げする労働者たちを描いています。

モネの作品の多くは、河辺のボート遊びや睡蓮などの自然ですが、本作は工業化した都市の労働現場を描いており、かなり異色です。

 

人々は黒一色であり、匿名化されています。

モネは、本作で労働者を小さく、黒いシルエット状にし、顔や表情を描いていません。

そのため、人物は個人ではなく、「作業の単位」のように見えます。

 

船にかかる板は画面を斜めに横切り、そこを労働者が同じ姿勢で運搬しています。

結果として、同じ姿勢、同じ動き、同じ方向が繰り返されます。

このため、人間の動きがラインのリズム=作業の連続運動として見える構図になっています。

 

そして、背景には工場の煙突、工業的な河岸が描かれています。

つまり、この風景は近代都市のエネルギー供給の現場です。

この点から、工業化の結果とも言えます。

 

さらに、天候はどんよりとしています。

色調は、灰色の空、黒い石炭、暗い川面が中心で、モネの明るい川辺の作品とはかなり違います。

このため、作品には、重い産業風景の雰囲気が生まれています。

ここから、産業化した近代の風景として読むことができます。

クロード・モネ(1875頃)《石炭の積み下ろし》オルセー美術館

 

 

アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《雪景色》の主観レビューをお届けします。

本作は、印象派らしい「光と色」の雪を描いています。

雪は実際には光や影を反射して様々な色に見えるため、それを細かい筆触で表現し、自然の光によって変化する色の印象を描いています。

 

対角線左下には森の木々を、右上には街を描いています。

対角線構図は、空間の奥行き、視線の流れ、対比を生みやすい構成です。

本作でも、視線は左下の雪→森→右上の建物へと自然に導かれます。

 

森の木々は曲が理、斜めに伸び、複雑に絡み合っています。

つまり、有機的な線です。

一方、右奥は木が真っ直ぐ、建物の壁が垂直となっており、人工的な直線が支配しています。

 

また、森は筆触が密で複雑、街は比較的整理されている、森の空気感は青や緑の影で冷たい、街は光が入り、少し開けた印象です。

このことから、同じ雪景色でもここまで印象が違う作品になっています。

これは、自然と人間が同じ画面に共存している、とも読めます。

ピエール=オーギュスト・ルノワール(1875)《雪景色》オランジュリー美術館

 

 

アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《かささぎ》の主観レビューをお届けします。

小さなかささぎが画面左奥の門の上に止まっています。

この小さな存在が、広い雪景色の静けさを強調しています。

 

画面の中〜上部には、地平線、石垣、家の屋根といった水平要素が多く配置されています。

水平線は一般的に、安定・静止・静寂を感じさせる構造です。

そのためこの作品では、冬の空気の止まったような静けさが強調されています。

 

一方、画面下部では柵の影、雪面の起状、足跡のような形、石や雪の塊などが斜めのリズムを作っています。

斜線は、動き・時間の流れ・視線の誘導を生みやすい要素です。

そのため、静止した世界の中に潜む動きの予感が感じられます。

 

また、足跡のようなものからかささぎへの視線誘導があります。

手前の雪面→足跡のような形→柵→かささぎ、という順に奥へ視線が導かれる構図になっています。

これはいわゆる遠近と導線の構図です。

 

門の上にいるかささぎは、とても小さく、画面の静寂の中で唯一の生き物です。

そのため、鑑賞者は自然にいつ飛ぶのか、音のない瞬間を想像します。

つまり、この絵は、「静止した風景」ではなく、「動きが起こる直前の時間」として読むことができます。

クロード・モネ(1868-69)《かささぎ》オルセー美術館