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パラレル

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アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《フォンテーヌブローの森》の主観レビューをお届けします。

フレデリック・バジールによって描かれた、印象派が生まれる直前の風景画で、当時の新しい自然観察の方法がよく表れた作品です。

森が対角線左下に、右上に空が描かれています。

森は暗く、空は明るいため、対立しています。

明暗対比は通常、劇的効果、視線誘導、空間の分割などを生みます。

 

また、対角線構図は一般に、動き、緊張、変化の予感を生みやすい構図です。

そのため、「何かが起こりそう」な印象を受けます。

 

しかし、本作では人物がおらず、風や動きの表現が弱く、森が重く沈んでいます。

そのため、構図は動的なのに、情景は静止しているという状態になります。

つまり、画面は複数の対立構造があるが、最終的には静けさに収束している、という読み方になります。

まとまると、対角線構図と明暗の対立は本来動的な印象を生むが、本作品では人物や運動の要素が排除されているため、むしろ森の静寂が強調されている、となります。

フレデリック・バジール(1865)《フォンテーヌブローの森》オルセー美術館

 

 

アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《オンフルールのトゥータン農場》の主観レビューをお届けします。

木々に囲まれた農家の庭のような空間が描かれ、中央には藁葺き屋根の農家、周囲には牛や農民の姿が見えます。

木々の枝葉が画面を覆い、木漏れ日が差し込む穏やかな田園風景になっています。

 

その枝はまっすぐではなく、緩やかに曲がりながら広がっています。

こうした有機的な線は、静止した景色の中にリズムや流れを生みます。

そのため、人の出入り、家の前の生活の気配、農作業の動きといった、「目に見えない生活の動き」を想像させます。

 

また、本作は緑、茶色、やや灰色がかった空気色といった、近い色の調子で統一されています。

強いコントラストや派手な色が少ないため、画面全体に静けさ、穏やかさ、安定感が生まれます。

そのため、「緊張感のない穏やかな生活」と解釈することができます。

 

そして、中央の家や人物には、木漏れ日のような光が当たっています。

周囲の森の影よりも少し明るく描かれているため、自然にそこに視線が集まります。

この構図はよく人間の生活の中心性、家庭の温かさ、安心できる場所を示す効果として使われます。

したがって、「幸せな生活を感じる」という読み取りができます。

カミーユ・コロー(1845頃)《オンフルールのトゥータン農場》石橋財団アーティゾン美術館

 

 

アーティゾン美術館で開催中の「モネ没後100年 クロード・モネー風景への問いかけ」展でこれは、と思う作品、《石炭の積み下ろし》の主観レビューをお届けします。

本作は、セーヌ川の岸で船から石炭を荷揚げする労働者たちを描いています。

モネの作品の多くは、河辺のボート遊びや睡蓮などの自然ですが、本作は工業化した都市の労働現場を描いており、かなり異色です。

 

人々は黒一色であり、匿名化されています。

モネは、本作で労働者を小さく、黒いシルエット状にし、顔や表情を描いていません。

そのため、人物は個人ではなく、「作業の単位」のように見えます。

 

船にかかる板は画面を斜めに横切り、そこを労働者が同じ姿勢で運搬しています。

結果として、同じ姿勢、同じ動き、同じ方向が繰り返されます。

このため、人間の動きがラインのリズム=作業の連続運動として見える構図になっています。

 

そして、背景には工場の煙突、工業的な河岸が描かれています。

つまり、この風景は近代都市のエネルギー供給の現場です。

この点から、工業化の結果とも言えます。

 

さらに、天候はどんよりとしています。

色調は、灰色の空、黒い石炭、暗い川面が中心で、モネの明るい川辺の作品とはかなり違います。

このため、作品には、重い産業風景の雰囲気が生まれています。

ここから、産業化した近代の風景として読むことができます。

クロード・モネ(1875頃)《石炭の積み下ろし》オルセー美術館