江戸琳派と磁州窯 | パラレル

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東京黎明アートルームで開催中の「江戸琳派と磁州窯」展へ行って来ました。

桃山時代後期に京都で興った美意識の系譜、琳派。

その約100年後、琳派に感銘を受けた酒井抱一によって江戸で花開いた優美な作品・江戸琳派。

 

主に民間用の器を生産したことで知られ、多彩な装飾技法で独自の美を創造したことでも有名な磁州窯。

 

本展は、酒井抱一を中心に、鈴木其一、酒井鶯蒲、酒井道一などの作品、陶磁器は、白釉・白地黒掻落・白地練上など18作品を展示するものです。

 

まず目を引くのは《五彩花鳥文輪花盤》(中国・景徳鎮窯 明-清時代 17世紀)は小ぶりながらしっかりとした作行の皿です。

輪花(輪郭が花びらのように複数の弧でできているもの)の縁を赤で彩り、緑、赤、黄、紫で花鳥がのびやかに描かれています。

見込みに暗花で描かれた菊花の文様が見えます。

暗花とは、素材を線彫りしたのち釉をかけ、釉下に沈線模様を描く技法です。

 

清朝の康煕時代に入ると、五彩の技術が格段に進歩し、優れた作品が作られるようになります。

顔料の種類が増え、素地もより白くなり、華やかさも増します。

ほとんどがヨーロッパ向けに作られたもので、日本では

「康熙五彩」の名で親しまれています。

《五彩花鳥文堤手水注(康煕五彩)》(中国・景徳鎮窯 清時代 康熙年間(1662-1722))の吊手は竹素材を表しています。

 

続いては磁州窯です。

磁州窯作品には鷹揚な器形が多いのですが、《白釉瓶》(中国・磁州窯(鉅鹿) 北宋時代 11世紀)は唐時代の白磁を思わせる端正なフォルムです。

頸の下にある突帯状の飾り、肩部の鋭いライン、肩部と胴部のメリハリ、そしてシャープな高台など。

鉅鹿手(磁州窯の白無地の作品)のなかでも異例の作例といえます。

北宋らしい鋭い造形美と磁州窯ならではの柔和な釉の調子が相まった贅沢な作品です。

 

《白釉絞胎腕》(中国・磁州窯 北宋時代 11-12世紀)は、異なる粘土を練り合わせ、マーブル柄(大理石模様)に装飾する「練上」の作品です。

中国では「絞胎」と呼ばれています。

唐時代に褐釉や緑釉を掛けた練上が作られ、北宋時代には本器のような白地の練上が磁州窯で作られました。

丁寧に作られた文様と、シャープな器形が本器の見どころです。

白い無文の口縁もすっきりしています。

 

展示室を奥に進むと、酒井抱一《秋草に兎図》(江戸時代 19世紀)が展示されています。

夜空に浮かんだ穏やかな丸い月。

芒、兎、萩が月の淡い光に優しく照らされています。

風があるのでしょう、芒がわずかに右に靡いています。

画面手前に描かれた萩には、芒よりも色の濃い、墨や金泥が使われています。

画面中央で佇む赤い目をした白兎の輪郭を巧みに処理し、足部や腹部のもっさりとした毛の量感を表現しています。

 

酒井抱一筆・亀田綾瀬賛《梅に鴛鴦図》(江戸時代 19世紀)には、うねうねと躍動する紅梅の枝と幹が描かれています。

雪の中に咲く梅の花は淡く輝き、雪をのせた梅の木には風雪に耐える強さを感じます。

水辺に佇む鴛鴦。

何とも微笑ましい感じがします。

 

地下1階にも江戸琳派の作品が紹介されています。

中国の黄河には龍門と呼ばれる険しい滝のような場所があり、この龍門を登った鯉は化して龍になるという言い伝えがあります。

立身出世のための関門を意味する「登竜門」はここから転じた語です。

市川其融《登竜門図》(江戸時代 19世紀)の体の一部を優雅にくねらせ、龍門を登る鯉の姿は清雅です。

流れ落ちる水は激しいというより清らかで、琳派らしい「たらし込み」も効いています。

 

神坂雪佳《筏流し図》(昭和時代 20世紀)には、たらし込み技法を用いた岩が描かれ、その横を筏を操る筏師がゆっくり下流へ向かっています。

切り出した木材を筏に組み、下流に運搬する筏流しは木材流送のひとつです。

色彩も構図も明快で親しみやすく、温もりを感じます。

よく見ると、雪のような花びらのような白いものが舞っています。

筏師の服装から、冬ではなさそうなので花びらだと思われます。

 

北宋時代の庶民が普通に使った日用品の中の美。

そして、京都で興った美意識の系譜、琳派。

まとめて鑑賞できる、贅沢な時間はいかがですか。

 

 

 

 

 

開室期間:2024年5月21日(火)-6月30日(日)

会場:東京黎明アートルーム

      〒164-0003 東京都中野区東中野2-10-13

休室日:6月3日(月)、6月15日(土)

開室時間:10:00-16:00

      ※最終入室は15:30

主催:東京黎明アートルーム