ちくまプリマー新書から刊行された『西洋美術史入門<実践編>』を読んでみました。
池上英洋『西洋美術史入門<実践編>』(2014)ちくまプリマー新書
美術品には、色や素材といった「物理的側面」と、描かれた意味や作品が持つ歴史性、そして観る人との関係といった「精神的側面」という、味わうべき対象がふたつあります。
そしてそれらを決定し結びつけるのは、描かれた時代や地域、人々ーつまり「社会」ということになります。
本書は、同じちくまプリマー新書から刊行された『西洋美術史入門』の続編という形をとっています。
その前著を踏まえた実例や、実際のアプローチの手法を教えて欲しいという要望に応えるべく刊行されています。
目次
はじめに
第1章 ひとつの作品をじっくりと読んでみよう
第2章 美術作品の何を見るかー一次調査と「主題と社会」
第3章 さまざまな視点
1 比較からわかることーツタンカーメンとネフェルティティ
2 絵画はどのように見られたかー鑑賞方法が生み出す違い
3 どこまでが作品かー修復や保存の場面から考える
4 様式と社会ー世紀末のジャポニズム
5 美的価値と社会ーナポレオンとナチス・ドイツ
第4章 まとめ
おわりに
まず第1章では、ひとつの作品をじっくりと鑑賞し、その物理的・精神的両面について考える実例を紹介しています。
続く第2章では、前著でおこなった入門解説を簡潔にまとめて導入とし、次なる実践のステップのために必要な事柄を新たに確認しています。
そして第3章では、両面をいかに学ぶか、そこにある社会性をどう見るかについてのアプローチの方法をいくつか見ています。
これらの事柄に対する理解が深まることで、美術史を学ぼうとする学生の方はもちろん、教養の一部として身につけたい、あるいは美術鑑賞の際の引き出しを増やしたいという方々にとっても有益なものとなるでしょう。
普段の美術鑑賞を別の側面から楽しんでみませんか。
筆者プロフィール
池上英洋(いけがみ ひでひろ)
1967年広島県生まれ。東京藝術大学卒業、同大学院修士課程修了。東京造形大学教授。専門はイタリアを中心とした西洋美術史・文化史。著書に『西洋美術史入門』(ちくまプリマー新書)、『死と復活ー「狂気の母」の図像から読むキリスト教』(筑摩選書)、『レオナルド・ダ・ヴィンチー西洋絵画の巨匠8』(小学館)、『レオナルド・ダ・ヴィンチの世界』(編著、東京堂出版)、『恋する西洋美術史』『イタリア 24の都市の物語』『ルネサンス 歴史と芸術の物語』(いずれも光文社)、『神のごときミケランジェロ』(新潮社)など。