中公新書より刊行された宮下規久朗『バロック美術 西洋文化の爛熟』を読んでみました。
宮下規久朗(2023年)『バロック美術 西洋文化の爛熟』中公新書
近年相次いで開催されているフェルメールやカラヴァッジョの展覧会。
そこに空前の観客が殺到することからも、バロック美術のダイナミックで壮麗な美に惹かれる方が増えていることが分かります。
バロックとは、ルネサンス期の端正で調和のとれた古典主義に対し、豪華絢爛で躍動感あふれる表現を特徴とします。
『バロック美術 西洋文化の爛熟』では、バロック美術全体を理解するために、時代順や地域ごとではなく、テーマで分けてそれに沿って考察する形式になっています。
その過程で、重要な美術家や作品については詳しく解説されています。
本書の構成は以下の通りです。
第1章 聖 カトリック改革とバロックの舞台
第2章 光と陰 カラヴァッジョの革新とその系譜
第3章 死 殉教と疫病
第4章 幻視と法悦 幻視絵画から総合芸術へ
第5章 権力 教皇と絶対王政
第6章 永遠と瞬間 古典主義と風俗画
第7章 増殖 辺境のバロック
このような視点によって、ローマにはじまり、世界に及んだバロック美術の豊かで普遍的な魅力とその背景を解き明かしています。
また、絵画のみならず、建築・彫刻まで目配りしてあり、バロック全体像の把握に適しています。
では、豊穣で豪華なバロック美術の巡礼に出かけましょう。