川島理一郎展 自然から得た生命の律動 | パラレル

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足利市立美術館で開催中の「川島理一郎展 自然から得た生命の律動」に行って来ました。

 

足利市に生まれた川島が没して50年になるにあたり、その画業を顕彰する回顧展としてこの展覧会が開催されます。

足利市立美術館が新たに収蔵した作品に加え、川島の友人や画家たちとの交流も紹介しています。

 

展覧会の構成は以下の通りです。

 

第1章 アメリカ、そして1910年代のパリへ 1905年-1923年

第2章 緑の時代 1924年-1937年

第3章 アジアを描く 1938年-1945年

第4章 抽象に向かって 1946年-1971年

特別展示室 川島理一郎旧蔵版画コレクション

 

1886年、足利市に生まれた川島は19歳にしてアメリカへ向かい、本格的に西洋画を学びました。

ここでレイモン・ダンカンと出会い、ギリシアをはじめとする古代美術研究へ傾倒していきます。

1911年、アメリカの美術学校で優秀な成績をおさめた川島は、パリへと向かいます。

そして、近代美術の新運動に接することとなります。

 

この頃に描かれた「兵士と女」(1911年頃)、「二美人図」(1913年)は中央付近に置かれた光源からの光でほんのり照らされた空間に二人が描かれた、川島の作品でも異色の存在です。

動きは感じられず、親密そうな様子が感じられます。

 

1924年、当時川島にとって重要だったのは写実でした。

バルビゾン派やクールベに学び、自然の把握に努め、緑の階調を追求する「緑の時代」へと入ります。

「オリーブの並木(ナポリ)」(1925年)などはその成果です。

オリーブの木々が並び、その下を人々が行き交っています。

憩いの場といった雰囲気で、散策や会話を楽しんでいる様子が窺われます。

 

川島は1924年から1934年に中国に渡ります。

陸軍省嘱託の従軍画家として各地を転々としましたが、川島が描いたのは「戦争画」として想像されるような戦地や兵士を描いたものではありません。

各地の風景や風俗の記録のように見えます。

「卍寺廊」(1938年)や「緑陰の回廊」(1938年)は中国風の服を着た二人の女性が回廊で佇んでおり、中国らしさが前面に出された作品となっています。

同じ中国でも、近代的なビルが林立する様子が描かれた「広東大観」(1939年)とは対照的な作品です。

 

1960年代に入ると、川島の画風は長年の心に留まり続けていた抽象へと舵を切ることとなります。

「雨と風の詩」(1966年)は明るい色調と単純化したフォルムで描かれています。

川島は自身の抽象画を「今日の楽しい心の反映」であるとし、画面に相応しいマチエールを作ることを新しい試みとしています。

 

足利市ゆかりの画家の作品を時系列で紹介している展覧会です。

地方美術館ならではの好企画といえます。

川島理一郎を知らなくても、感じるものがあるはずです。

おすすめします。

 

 

 

 

会期:2022年10月29日(土)〜12月25日(日)

会場:足利市立美術館

主催:足利市立美術館

助成:芸術文化振興基金、公益財団法人 花王 芸術・科学財団

協力:公益財団法人みどりと文化・スポーツ財団、公益財団法人足利市民文化財団、一般財団法人おもい・つむぎ財団