田舎の病院の話です。
脳外科医が二人いて、一人は部長。むちゃくちゃ、怒ります。もう一人は若い脳外科医。優しい先生です。
部長が週二日待機。残り5日はやさしい先生。
脳の病気の患者が来ます。まず、聞くのは「今日の待機はどっち?」
部長のほうだと、電話すると怒られるからやめておこう。若い医師のほうだと、気楽に相談しよう。そんな風になります。
でも、脳出血しているし、どうしても脳外科の医師にみてみらいたい。こんなとき、怖い部長をさけて、やさしい医師のほうに電話をします。その医師はその日の待機ではないのですが、よぶといつでもみにきてくれます。みんなが頼りにしていますね。
病院の中にこんな事情があるわけです。部長先生には、絶対に電話してはいけない。その分を、下の先生が全部かぶってくれるわけです。実質的には、この下の医師が、ずっと待機しているようなものです。
その部長先生。普段はにこやかな先生ですよ。僕は嫌われていないので、けっこうよくしてもらっていました。ところが、夜に電話すると、激変するのだそうです。「そんなことで電話かけてくるな!」と怒られた医者や看護師多数。病院の中では恐れられています。
別の病院の話です。こんなこともありました。
この病気は呼吸器の病気だと思うので、呼吸器科に紹介しようとしました。今日は呼吸器科の外来が開いているので。ところが、呼吸器科の看護師さんが、「今日はダメだ」と理由を言わずに別の日に回そうとするのです。患者は今目の前にいるし、呼吸器科の外来も開いているんでしょう。なんでダメなの?その時は、理由がよくわかりませんでした。
後に知ったのですが、その呼吸器科の医師はかなりの問題をかかえていて、患者をまわさないようにスタッフが必死になっていたようです。患者を診させないことが、トラブルを起こさない方法だったのでしょう。
これも内輪の事情で、外の人にはわからない話です。研修医がだめなら、上の医師がみればいい。こういうのは、上の医師がみんなまともだという前提にたっているのです。実は、まわすととんでもないことになると、周囲の人はわかっているのかもしれません。