国は混合診療を導入したがっている | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

 

 

厚労省は混合診療の導入をずっと反対してきた。多くの医者も基本的には反対である。ただし、社会保障費が増大している中で、混合診療の解禁が、社会保障費を抑える切り札になると思うようになってきた。

 

厚労省の混合診療反対は、医師とも利害が一致する。医師も反対なのだ。しかし、混合診療を導入したがっている人たちがいる。それは厚労省ではなく、財務省だと言われている。財務省として、社会保障費を節約するのに、混合診療解禁が切り札になるのだ。

 

混合診療が認められない今のルールをおさえておこう。保険のきかない診療をすると、すべての治療を保険を使ってはならない。診察料も含めて自費診療になる。これが今のルール。

 

たとえば、ノロウイルスの検査は一般的には保険適応が認められない。その迅速検査を行った場合、診察料も含めて自費のあつかいになり、1万円ぐらいの費用がかかる。それを理解した上で検査をするしかない。1万円も払えないという場合には、ノロウイルスの検査そのものができない。

 

今後、混合診療が可能になれば、ノロウイルスの検査は2000円だけど、それ以外の診察は保険を使って行うことができるようになる。必要なところだけ、自費で行うので、それを混合診療と言うわけだ。

 

多くの人はそのほうがいいだろうと思うかもしれない。しかし、混合診療の解禁は、保険診療の縮小につながると思われている。たとえば、ノロウイルス検査は保険で受けられる人もいるのだが、保険の対象外にして、すべて自費にしてしまう。ここでも指摘してはいるが、ヒルドイドも全部自費、漢方薬も全部自費。保険でカバーできる領域を縮小し、なんでもかんでも自費にする。自費になれば、社会保障費など関係なくなるからだ。

 

がん治療にも当然行われる。高い抗がん剤は自費。その抗がん剤を使いたい人は、その分は自分でお金を払い、保険診療は使わないように。それまではひとたび保険診療になれば3割負担でOKだったものが、すべて10割患者負担になる。

 

つまり、金持ちだけが高額医療費を払い、高度の医療を受け、金がない人は必要な治療も受けられない。米国はそんな感じが多いのだが、金持ちだけがいい治療を受けられるシステム。そして金がない人は最小限の治療しか受けられないシステム。それが混合診療なのだ。

 

命は平等だ。この概念をくつがえす。金がある人の命はなんとかするが、金がない人の命は救えない。こんな時代がくるのであろう。