夜間往診クリニックの終焉 | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

夜間往診承ります。

◯◯ドクターという会社で、電話をすれば医師がかけつけてくれる。患者がわざわざ病院にいかずに住むので、当院受診の子どもたちも利用している人がけっこういる。

 

僕自身はかなり問題のあるシステムだと思っていたし、多くの医師が同様の意見であったろう。

 

実は、夜間の往診料がすごく高いのだ。大人の場合には、3割負担が発生するので、かなりの高額になる。依頼するケースはそんなになかったかもしれない。しかし、子どもとなると話は別である。医療費が無料だから、高い往診料など関係ない。ほとんど無料で頼めるからだ。

 

往診料を調べてみた。

ハ イからロまでに掲げるもの以外の保険医療機関の保険医が行う場合

初診料:270点+乳幼児加算75点+深夜加算480点+休日加算280点

往診料:720点
(1) 緊急往診加算 325点
(2) 夜間・休日往診加算 650点
(3) 深夜往診加算 1,300点

 

日曜日の夜間、午後10時以降に、6歳未満の乳幼児の場合、

この時間に往診すると、4100点がもらえることになる。41000円の収入である。風邪の子どものもとに受診して、風邪薬でもだせば一人あたり、これぐらいの収入になる。これを次々に行うと、すごい高収入が得られる。医師免許をもっている人を派遣して、「風邪だ」という診療をすれば、これだけのお金が得られる。つまり、医師は夜間に暇にしているので、高額バイト料を払えば、やりたがる医師はいくらでもいるということだろう。

 

そもそも、従来の医師は昼間に勤務をし、どうしてもやむを得ない場合には、往診に応じていた。これは本当に臨時のことなので、医者の手間を考えて、かなり高い往診料を設定していた。ただ、例外的な措置であり、多くの開業医は年に1~2人ぐらいというところだろう。

 

それが電話をうけて、バンバン医師を派遣して、往診料とりほうだい。しかも、小児が専門でもない医師に小児の診察をさせて、風邪薬を渡すだけというのが現実。そして翌日、昼間にクリニックで診てもらえと言われて、当院受診し、小児科医が診察する。

 

子供を抱えた患者にとっては、病院にいかずに見てもらえるので、ばんばんざいなのである。

 

このような行為ではあるが、実はまったく違法ではない。むしろ正当なのだ。しかも需要がある。ただし、医療費を本当に無駄にくいつぶしている。厚労省なんかも、違法とは言えないが、困ったクリニックだと思い、どうしたものかと悩んできた。

 

そして今年6月の診療報酬改定から、一気に往診料を下げることを決定したのだ。これが決まると、「夜間に往診に行きます」とやっていたところが、軒並みもう往診はしないと方針をかえたようだ。往診は必要だと主張していたところが、もうからなくなるとわかるとすぐにひきあげてしまう。まあ、コロナ禍は需要もあったので、あまり批判はされなかったが、コロナがあけてしまうと、単なる金儲けにしかならない。夜間に医師を呼んでも、専門外の医師であれば、翌日また昼間のクリニックを受診しなければならなくなるわけだから、無駄な医療費を使っているとしか思えない。