麻疹報道がなされればなされるほど、麻疹ワクチン不足がひどくなる(2) | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

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以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

海外で麻疹の流行がひどくなり、日本に麻疹が入るようになってきている。そうなると、日本国内の人が、麻疹ワクチンをうけていないことが大きな問題になる。

 

テレビが麻疹患者の報道をどんどん行う。恐怖感を覚えるのは、麻疹にかかると危ない子供ばかりではない。もっと大きな影響を受けるのは高齢者である。

 

高齢者が、麻疹ワクチンに殺到する。子供のころに麻疹にかかったような高齢者が、不安だから麻疹ワクチンをうってほしいと殺到するのだ。

 

麻疹ワクチン接種は1万円以上である。内科クリニックが、今がもうけどころとばかりに、麻疹ワクチンを仕入れて、どんどん接種をはじめる。竿をたらせばいくらでも魚が釣れる状態なのだから。

 

麻疹ワクチンというのは年間の製造量が決まっている。実は子供の定期予防接種分ぐらいしか作っていないのだ。それが一気にうちたいと大人が殺到すると、すぐにワクチン不足になる。麻疹にかかったら危ない子供たちのワクチンが亡くなる。一番打たなければならない人がうてなくなり、うつ必要のない人がどんどん消費してしまうのだ。

 

小児科医師であれば、まず子供のことを考える。このため、不要な麻疹ワクチンをうったりはしない。しかし、子供をまったくみないような内科の医師にとっては、子供のことなどどうでもいい。ワクチンをうちたいという大人がくれば、もうかることをなぜしないということになる。そのようなクリニックがバンバン麻疹ワクチンをうてば、世の中から麻疹ワクチンが無くなってしまう。

 

こういう理由から、大人には麻疹ワクチンを基本的にはうちません。まずは、麻疹抗体を確認させてもらい、抗体価が低い場合のみ接種をします。高い人はそもそもうつ必要がないからです。

 

麻疹報道がなされたら、麻疹ワクチンの相場が一気にあがった。接種料金をすぐに値上げするところが増えたのだ。高くしても売れる。これがその理由であろう。もうけをあげるには正しい考え方である。うちたい人が多いのだから。

 

これは被災地にいって、弁当をいつもの倍の値段でうるようなものである。食べたい人がいるんだから、値段高くしても大丈夫。そんな感じなのだろう。本人はうてば安心なのかもしれないが、あおりを受けるのは、子供たちである。そのせいで、麻疹ワクチンをいっさい受けられない子供たちがでてくる。

 

金をもうけることがベストの選択ではない。しかし、うちは麻疹のワクチンあるよと高い値段でPRし、接種をすすめる悪徳医療機関が今後どんどんでてくるに違いない。麻疹ワクチンの増産はそんなにすぐには無理である。新ゲーム機が手に入らないのならば、待ってもらえばいい。しかし、麻疹のワクチンはそういうわけにはいかないのだ。みんなに節度を守ってほしいし、もし大人にワクチンをうてとあおる医療機関があったら、そこを攻撃してもらいたいぐらいである。自分のことしか考えない態度を改めろと。