久しぶりにAPDの患者を診察した | 耳鼻科医として、ときどき小児科医として

耳鼻科医として、ときどき小児科医として

以前にアメブロで書いていましたが、一時移籍し、再度ここに復活しました。専門の耳鼻咽喉科医としての記事を中心に、ときにサブスペシャリティな小児科診療のこともときに書いていきます。

聴覚情報処理障害(APD)の診察をやめてから、1年になる。月に一人ぐらいは、APDで受診してくる人もいるのだが、それは最初から、専門病院に紹介状を書くことに決めている。紹介状だけ書いて、あとはそちらの病院に丸投げである。結果的には自分は診察していない。

 

先日、ある病院に患者を紹介したら、診察は再来年と言われたそうだ。それまでは1ヶ月ぐらいで検査を受けられたのがが、一気に待たされるようになった。病院側の事情はよくわからないが、それぐらいの待ち時間になっても、おかしくはない。それぐらい診る病院は少なく、患者は山のようにいるからだ。

 

本日受診してきた患者、他の病院に紹介すると、1年ぐらいはかかるよと説明したら、かなり動揺していた。現在仕事で悩んでいるので、すぐに診断を受けたいそうなのだ。

 

本人に確認すると、APDの検査はなくてもいいということなので、朝見して聴力正常を確認後、仕事面のアドバイスをした。1年前までは毎日二人ぐらい、こんな感じでアドバイスをしていたのだ。

 

ところが、APDの診断にはAPT(APDの検査が必要だ)と専門家が言うので、当院では診察をやめてしまったのだ。患者が検査もしないで、診断するのはいいかげんだと文句を言う人がでてきたからだ。

 

APDの患者は、自分らが受診してくるのだから、もうかってうれしいだろうと思ってくる。しかし、一人に30分時間をとって対応するようにしており、その30分の間に、他の多くの患者を診る機会を失ってしまっている。APD患者は診察料と聴検代しか入ってこないので、損失利益のほうが大きいのだ。

 

それでも2年間ぐらい、APD患者を診察してきた。全部で、600人ぐらいは診てきただろうか。この人数は日本一であると思っている。

 

その後は、APDの患者は一人もまともに診てこなかった。紹介状を書いた人は10人ぐらいはいたが。暇になることはなく、逆に他の患者数は増えて忙しくしていた。

 

仕事ですごく悩んで受診してくるひとはけっこういる。はっきり言うと、一年も待てないのだ。一年も待てる人はどうでもいいんじゃないかと思う。せっぱつまって受診してくる人をなんとかしなければならない。

 

APDを診察している病院はもっとがんばってもらえたらなと思う。せいぜい、全国の大学病院すべてが診られるようになればいいのだが。