この公演ってこんなに面白かったっけ?
暗闇のロマ (ジプシー) の峻烈なダンスから始まり、一転、貴族邸の華やかなパーティーへ、真風・芹香の赤軍服からスペイン独立戦争のシーンへ、と流れるような展開にぐいぐい魅入ってしまった。
105期の文化祭でもこの演目の改作「黒い風の物語」を見たのだが、比べてみると音楽とダンス、舞台装置が大きな役を果たしている作品なのだなと思った。
会話部分にはほとんど効果音や演奏が流れなくて、ダンスと歌のシーンはスペインギターと舞踏をたっぷり使ってる。
山のように盛り上がったペイネタ(櫛)から垂れる色鮮やかなマンティージャ(ショール) 、 たっぷりと波打つスカートの裾を楽々翻す褐色の女達、歯切れのいい乾いた手拍子とカスタネットのリズム、靴音で打ちだすサパテアード、などなど、華麗で土臭い舞踏と哀愁の帯びた音楽で物語が進められていくのが美しかった。
ただいつもの正塚先生の舞台が暗さに加えて黒塗りで、目にはなかなか負担がかかりました。
■濡れ真風フランシスコ
えーと、まず真風涼帆さんについてですけど、名前、絶対フランシスコじゃないわ!
あんた、ホセでしょ、ホセ!!
(※マツコさんの声でお読みください)
あるいはガルシアとかミゲルとか、牛の生血すすってます、みたいなラテンの筋骨隆々の男でしょ!! わかってんのよ!
スペイン圏の黒髪イケメンの方って、同じラテン・ヨーロッパの中でも、妙に濡れてるイメージがあるのよね。
髪が汗で束になってたり、手の甲まで生えてる剛毛がしっとりしてたり、獣的モイスチャーなエロスがハンパないわ。
はい、出たわよ、濡れ真風!!
フランシスコの後ろ髪をなでつけるような髪型、濡れ感があって、ちょっとどうかと思うわよ? (もっとやって?)
だいたい
真風 × マント = 王
真風 × 革 = 王
真風 × ソファ = 王
どう転んだって王よ!?
くすんだ緋色の皮のロングコート、ブルーのロングコート、ふくろうのカーテンかとみまごうごん太な生地を肩にとめたマント、グレーに緋色のタフタのコート、こんな大物衣装をゴージャスに着こなせるのは、今のトップ陣の中では真風しかいないわ!
私がお衣装部さんだったら、「いつもより20センチ長くしときましたからっ!!」 「襟も倍の大きさにしときました!!」 って、嬉々として布を大量投入すると思うの。
愛国心が強く、波乱万丈の人生の中で不屈の精神で生き抜く貴公子。
真っ赤で苛烈な炎じゃなくて、熾き火みたいにくすぶり続ける大人なフランシスコでした。
フランシスコがイザベラにいつどうして惚れたのかはちょっとわかりにくかったかも。
真風フランシスコと芹香アントニオは、友情が色濃く見えるコンビ。
フランシスコとアントニオの再会の時、「お互い、無事でよかった」、と短い言葉に万感の思いをこめるシーン、真風・芹香が硬く手を強く握り合う姿が実に男っぽく、美しく、正塚版男の友情ここにあり、という感じ。
のに、フェイホー・・・あんたのかぶせ気味の 「うっ・・・(嗚咽)」 で、確かにこっちの涙も引っ込んで泣き笑い。
今回はスーパー弟タイム発動していたキュートな和希そらでした。 (注: 研10)
■フランシスコ/芹香斗亜
キキちゃんは、これまた柔和で理性的なはまり役。
美しいブロンドに、貴族のコスチュームがぴたりとはまってる。
国を思う故にフランス軍に恭順する苦悩をとてもていねいに演じてて、心情がよく伝わってきた。
ともすればただの裏切り者になるところを、苦渋の選択として納得させたキキちゃんの感情の載ったお芝居がよかった。
キキちゃんもアントニオというよりピエールとかラファエルみたいな洗練具合でした。
フランシスコとアントニオが共に歌う場面は、黒真風の雄雄しさと、キキちゃんの優雅さがコントラストをなして、美しかった。
かつて将来を誓った友二人の信念の違いが強調されて、とてもドラマティックなシーンだった。
最後の「家に帰れ」は、映像で拝見しただけだが、絵麻緒さんのじっくりと語りかける口調がとても印象に残っている。
今回は、黒い風が活躍するシーンが少なくて義賊と反抗のイメージが少なかったので、ちょっと重みが少なく感じた。
だけど、フランシスコはアントニオを助けるし、二人の道は再び重なる。
フランシスコが民衆に、徹底抗戦ではなく 「時を待て」 と語りかけるのは、忍従しながらも屈服しないアントニオの姿勢に影響されたところもあったのだと思わせた。
そして、共に暮らしたロマたちの生き方、真っ向から立ち向かうのではなく、移動しながら潜み続けるという姿勢にも影響されたのだと思う。そう思わせるようなキキちゃんのアントニオだった。
最後、ずんちゃん演じるロベルトと真風フランシスコの男の友情も感じぐっときた。
■イサベラ/星風まどか
まどかちゃんは、強く純情なロマの娘を自然に演じてた。
暖かくて人間味のある絵麻緒ゆうさんのフランシスコには、あねごっぽさも感じさせる紺野まひるさんのイザベラがぴったりだったが、大きく感情を出さない真風フランシスコには、まどかちゃんのおきゃんさもあっていたと思う。
フラシスコを思って歌う歌が、伸びやかで情感にあふれていて素晴らしかった。
そして最後のシーン、フランシスコと二人で踊るシーンはようやく舞台も曲調も明るくなって、楽しげな姿が嬉しい。
まどかちゃんの青空に響く晴れやかな歌声も素晴らしかった
■VIVA!宙組!
・セシリア/華妃まいあはどの姿も気品ある美しさだった。令嬢役でも隠しきれない大人びた色気、大好きでした。
・ルイマキセ(留依蒔世)とじゅりちゃん(天彩峰里)が、歌い手カンタオールとカンタオーレを担当するのが非常に納得。
じゅりちゃんの挑むような鋭い目つきがかっこいい。
そしてルイマキセの貫禄と包容力な。押し出しのある野生的な役、本当によく似合う。
・フランス組のフランスっぷり!!
りんきら(凛城きら)演じるクリストフ、もんち(星吹彩翔)演じるアズナワールのベルサイユ味な?!!
特にりんきらのブロンドの縦ロールに、青軍服、一分の隙もなし。うつくしー。