早霧せいな「夢のつかみ方、挑戦し続ける力」感想  成功者の法則と元宝塚トップスター | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

ちぎさんのファンブックとして読むのはもちろん、トップスター※に上り詰めた成功者の教訓的な要素を抽出していて、キャリア形成やビジネス実用書的にも読める。

この本は河出書房の初のヤングアダルト参入本、「14歳の世渡り術」シリーズの中の一冊で、中学生の読者を想定しているという。

YAヤングアダルト本の親しみやすさと、成人の自己啓発本のエッセンスが絶妙に混ざり合って、とても読みやすい。

ですます調の文章の中にも 「よっしゃー!」 とか 「ガッツポーズ」とか、「ちぎ節」が健在なのが垣間見れて、思わずくすりと笑ってしまう。

いろんな意味で、すごくちぎさんらしい本だった。

 

※男役トップスター:宝塚5組ある各組の看板。宝塚歌劇員約400人中5名のみ。

 

 

 

早霧せいな(さぎりせいな):  長崎県出身。2001年宝塚歌劇団に入団。2014年雪組トップスターに就任。『ルパン三世』『るろうに剣心』など人気漫画作品の舞台化の主演を努め、大きな話題を呼んだ。

天性の美貌と俊敏なダンス、繊細な演技力に定評があり、すべての大劇場公演が稼働率100%越えを記録する人気を博す。

「少年のよう」 と称される快活で飾り気のない人柄も高感度が高く、トップ娘役・咲妃みゆとのコンビは、退団した今でも愛称「ちぎみゆ」がSNSのトレンド用語に入るほどコンビ人気も高かった。

17年退団後、舞台「ウーマン・オブ・ザ・イヤー」「るろうに剣心」「まほろば」などで幅広く活躍中。愛称「ちぎ」

 

 

 

■成功者の法則と宝塚トップスター

古くは松下幸之助の「道をひらく」カーネギーの「人を動かす」から、最近ならから長谷部誠「心を整える」澤穂希の『夢をかなえる。」まで、ビジネスの成功者やトップアスリート達の「成功者本」の中で繰り返し語られていることは驚くほど似ている。

 

・自分の課題を徹底的に分析する (だいたいノートに書いている)

・目標設定を具体的にする  (何を、いつまでに達成するか)

・目の前の目標に集中する

スポーツマンシップ、ビジネスマンシップ  (礼儀正しく、謙虚に、人の縁に感謝する)

芽の出ない時期に腐らず、本当にすべきことを見極める期間と考える

 

本を読むと、ちぎさんのやってきたことが、ぴたりと上記にあてはまることに今更驚かされる。

ひとつだけネタバレをすると、なんとちぎさんも日記めいたノートをつけていたという。

(だいもんの専売特許じゃなかった!) 

(ただし、ヤンさんに語りかけてはいません)

 

課題を徹底的に分析する、という点で印象的だったのは、宙組から雪組への組替や二番手のときのエピソード

「あの時実は」 的な好奇心を満足させるレベルにとどまらず、そのときに何にぶつかったか、それが後の行動の変化にどうつながったかがきちんと分析されていてさすがだった。

 

 

よく言われる宝塚の 「清く正しく美しく」は、つきつめていけば、スポーツマンシップに似た、社交性や他者への感謝と尊敬の心を忘れない成功者のメンテリティにもつながって見える。

だいもんも確か、ここに行くためにはここ、と逆算して目標設定をしていたはずだし、他のトップスターさん達の言葉を見ても、成功者の思考習慣を身に着けてることが多い

ジェンヌさんとして生きるということは、自然と人生のサバイブの技術を覚えていくことになるのかもしれない。

 

 

■ジェンヌさんの成功伝

柚希礼音さんの 「夢をかなえるために、私がやってきた5つのこと」もそうだが、ジェンヌさんの本で個人的にいいなあとおもうのは、夫や子どもの話がまったくでてこないこと。

女性の成功談の話になると、既婚者の女性であれば、家族や子どもは大切な要因になるので触れるのは当然と思う。

ただ、男性成功者が家族についての話をする以上の分量で、女性が家族の話を求められたり語ったりせざるをえない現状については、もやもやする。

し、このご時勢、ロンリープラネットでサバイブしなければならない女はごまんといる。

ジェンヌさんだと、なんたって元妖精なので、ぱしっと仕事と本人に特化した話になるのがストレスフリー。

 

 

それとなにより、愛が原動力になっているのがいい。

好きなものを仕事に選ぶということは本当に強い。

達成した後の、楽しい・嬉しい・素敵な結末イメージがしっかりあるから。

宝塚が好きで入るということは、あの華やかで幸せな舞台の成功の快感を知っているとうことだから。

「快」のイメージを知っていると、より努力しやすいように思う。

 

宝塚は”好き”で繋がっている世界

ちぎさんが初めての宝塚の舞台を見たときの高揚感や感動が、そのまま憧れの舞台に立てたときの感動へとつながっていき、ちぎさんの軸になっていく。

それがまた舞台の成功を呼び、誰かの好きを継ぐ。

そんな宝塚愛の連鎖を感じられるのが嬉しい。

 

 

 

■ちぎさんらしさ

ちぎさんらしいと思ったのは、

 

「むきあうこと、それ時点で苦しさがとれる」

「何をやったらいいかがわかるだけでも、重さがとれる」

 

という箇所。

 

さらりと書かれているが、すさまじい真理だ。

直視しないようにしている時と、足りないのはわかっているけどどう改善したらいいのかわからないときが一番つらい。

何を、どうすればいいのかが判れば、苦しくても頑張れる。

 

何をすればいいか、ちぎさんがどうやって知ったか。

それは、人のご縁

そのご縁は、自分を知る不断の努力と、他者評価を受け入れる柔軟さから呼びよせられていることがわかる。

 

前にも書いたことだが、(早霧せいな退団に寄せて②ちぎ語録 )、現役のときのインタビューで、「苦しむ過程すら楽しむ」 と語っていた言葉が忘れられない。

ちぎさんは過程を楽しむ人、何かに向かっていく時に一番力を発揮する人なのだなあと思う。

 

 

とてもすっきりした文章なのに、ちぎさんらしい明るさやまっすぐさ、どこかひょうきんなところがありありと伝わってきて、とても楽しい。

音楽学校や新人公演、集合日や組替えなどの宝塚のシステムについても端的に解説しながらご自身の経験を語っているのもとてもわかりやすいし、大変大変といいながら、その分面白そうに見える。

これを読む子は、舞台の世界はなんだか違うおもしろそうな世界なんだ、と思えると思う。

 

 

 

しっかし余談だが、ちぎさんの事務所の公式ホームページ(http://www.image-enter.co.jp/actor/seina_sagiri.html)のプロフィール欄の

 

特技:殺陣

 

が、女性タレントページでは異彩を放ちすぎている。

だいたい宝塚OGの方は、「日舞」「ダンス」とか書くもんだけども、さすが和物の雪組男役トップスター

 

さらに

趣味:TV,映画鑑賞

 

ってもうそのまんまで、ちぎさん・・・w って思いますよ。

 

あれだよ、男性俳優なら 「カメラ」 「サッカー観戦」 とか、女性タレントなら 「読書」「旅行」「美術鑑賞」とか無難で好感度上がりそーな趣味を書くところですよ。

もうほんっとに・・・好きですわ。

 

(ゆうみちゃんの趣味:ボディボード にもぶっとんだけど )

 

 

 

「元宝塚トップスター」 の枕詞がつくうちは、早霧せいな個人としての活動が宝塚時代を上回っていないということ、ときっぱり評価して言葉にするちぎさんの冷静さが、まだまだ道が続いていることを私達に知らせる。

真の意味で宝塚を卒業できるようにがんばるというちぎさんの地図にない道がどこにいくのか、とても楽しみです。

 

 

 

 

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