宝塚宙組バウホール公演「ハッスルメイツ」観劇感想 | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

 

「ハッスル」 という熱血・気合・部室臭を感じさせるのはテーマソングぐらいで、全体的にシンプルでスタンダードなショーだったと思う。

曲目の力、そして何より和希そらと宙組子の技術によって、とても質の高い演目になっていた。

ちなみに、そら七変化のポスターは公演内容には全く関係ない

(「ハッスル!!」 と叫ばされながら撮影したらしいけど、それ多分全く必要ない)

 

※以下内容に触れてあります。

 

 

■リトルモンスター・和希そら

ものすごい愛されている世界の弟・ソラカズキけれど、ステージに関していうと、初バウ主演の物語 = まだつたないけれど、緊張するけれど、仲間に助けてもらって一丸となってがんばって成長しますという半人前の神話・無条件で肩入れしたくなる宝塚の成長物語を見事に裏切ってると思う。

全然つたなくないし、緊張してるようにはどうしても見えないし、仲間とハッスルはするけれど、支えて/支えられてという力関係はぜんぜん見えない。

職人が、職人と仕事してる感覚がある。

エンターテーメントというお仕事を。

主演スター和希そらによる見事な主演公演でした。

 

ほれぼれする低い声、たっぷりした声量でのびやかに広がる歌。

周囲の空気を切り割くような俊敏なダンス。

しなやかな体全てを使って表現する演技力。

やんちゃな笑顔を見せたかと思えば、ニヒルな笑顔で堂に入った流し目をくれる。

 

演者としての力量はほぼ熟してるうえ、少年のような無垢な部分と、男役として作られた色気が共存しているリトルモンスター

そらのステージには、なんといっても遊び心がある。

音楽と、宝塚と、無邪気に戯れてるような自由さと余裕がある。

 

「和希そらにあと5センチあったら」 とはよく耳にする宝塚if。

だけど、私個人は、和希そらはあの身長だからこその和希そらだと思っている。

 

そらは、ナイナイの岡村に似てる。

(そら本人もファンだと言っていたように記憶している)

ナイナイの岡村がもしあと10センチ身長が高かったら、岡村になってはいない。

岡村のダンスは、小柄であるが故に動きがより機敏に強調されて見えるし、パワーが色濃く見える。

背丈の圧がない分、エネルギーがぎゆっと圧縮されるようで、煌々と光る黒目とあいまってとてもセクシーだと思う。

そらの目力、密度の高い圧倒されるダンスも、小柄という天分のためにかえって存分に発揮されてると思う。

あのサイズ感もそらの個性的な武器そのもの。

 

そして、和希そらの色気の根っこにあるものは、多分、殺気

それが彼女を宝塚の世界でやや異質に際立たせていると思う。

 

いつもより飾りが10倍ぐらいついて、大きく仕立てられた赤い0番のジャケット、とても似合っていた。

舞台の0番で、そらは大きかった。

それが多分、そらの等身大だ。

 

この数年は、もはやそのifを口にする人もあまりいない。

ifを口にする必要もないほどに、ソラカズキはソラカズキだ。

 

 

 

■ソング&ダンス&アクト

ショーは雨のコーナーやソーランや青年兵など、そらの爽やかさを生かした若々しいシーンが多かった。

ちなみに、そら×パーカー=絶対定理 (制服にしといてください) 

 

そらの得意ジャンルのダンスは、おそらくボヘミアンラプソディーのシーンのようなアクィブでパキパキ踊るダンスだと思うのだが、見せ場の裸足・ソロダンスNEVER SAY GOODBYEが、しなやかな宝塚ダンスで驚いた。

白の衣装も、オスカル風味と少年風味が合わさったような両性具有の感じ。

「和希そらのソロダンス」ではなくて、踊りの精みたい。

 

圧巻だったのはやはり、ボヘミアンラブソティー

考えてみれば、あれはほぼ一人芝居だ。

月並みな言い方だが、一本の映画を見たと思った。

きっとスカイステージのタカラ's歌「戦場」とかでも引用されるような、名シーンだった。

兵士役のみんなが痛恨の表情をするのもいい。

 

そらは一人のダンスの時は言うまでもなく素晴らしい切れだけど、娘役さんとのダンスは苦手なのかなと思うことがある。リフトをするときなど少し大儀そうに見える。

みねりちゃんと踊ってたそらはかっこよかった。背中で「来いよ」と言ってるみたいで包容力があった。

 

 

今回は若めのシーンが多かったけど、そらのやさぐれた土臭い男らしさが大好きなので、色気むんむんなアダルトなシーンも見たかったと思うのと、そらが一人で歌うことが多くて、娘役さんとしっかりからんだり、男役さんともがっつり絡むシーンがなかったのは少々残念。

 

歌がすばらしいメンツだったけれど、がんがんダンスを堪能するような公演もいつか見たい。

野口先生大階段みたいな中央男役1人with娘役総なめとか、今流行の牛vs男役闘牛士ばきばきダンスでなぎ倒すとか、見てみたかった。

がっつりアイドル曲をバキバキダンス+生歌、もそらなら可能だし、マイケルジャクソンのRock on me みたいな難易度ダンスもそらならできる。

宝塚ファンタジアのれいちゃんみたいに、バスケダンスシーンなんかも相当似合うはず。

もしソラカズキのブリドリとかが未来にあってくれるのなら、まあ様みたいに名作ダンスシーンをそらで再現とかしてほしいよ・・

 

 

■歌唱力の宙組

精鋭たちの歌声、素晴らしかった。

SMAPみたいにひとりひとりは下手だけど、リエゾンにすると得体の知れないスペシャルな何かになるわけではなく、コーラスの宙組のベースには個々の確たる歌唱力があるという当たり前の事実に感動した。

 

名曲メドレーの中でも、エリザはドラマティックさが桁違いだった。

大好きだったのは、娘役さん8人たちだけで歌う「私だけに」

娘役さん8人が、暗い壇上に弧の字を描いて立っている。

2人の娘役さんがペアになり、2-3小節ずつ歌いついでいく。

歌っている二人以外の6人は、客席に背を向けていて、彫像のように動かない。

トートの分身としての黒天使のように、シシイの分身として8人の娘役がいるように見え、シシイの孤独が迫ってくるようで、ぞくりとした。

しかも全員歌がうまいので、幻想的な世界観になんなく入っていける。

 

アカペラのアマポーラの6人の響きの甘やかさと優雅さ、傑出していた。

なつ 颯都(なつはやと)君、175cmと実に宙組らしい奇跡の等身が揺れる姿、見栄えがしました。

 

「わたしがベルだったら」せとぅ(瀬戸花まり)、道化めきながらもキュートで、難易度の高い曲を難なくこなす貫禄の技術。

天彩 峰里ちゃんの「あなたの空を飛びたい」、とてもよかった。顔立ちはキュートなのに、とてもしっかりした歌い方をするのね。激情のカルメンも意外に強さがあった。

 

 

■宙組の未来

宙組20周年をふりかえるとういう形になっていて、名曲・名シーンが目白押し。

面白いなと思ったのは、過去の曲をやっても、圧倒的に未来を感じること。

伝統を受継いでいくというより、新しいところへ運んでいくような現代的な感覚がある。

 

特に「宝塚行進曲」軽やかで優雅だったこと。

寺田瀧雄先生たちが書かれるような宝塚伝統の名曲は、シェイクスピア劇のように、型を意識しすぎると硬く聞こえてしまうことがあると思うのだけれど、宙組生の自然な伸びやかさが耳にすっとなじんできた。

まさしく、「タカラジェンヌの歌声は、大空高く 広い世界を駆け巡」ってた。

 

もえこコッティの着流しシンメ(光と影)も、和物なはずなのに現代劇なみのすがすがしさ。

明日へのエナジーはもはや自動放水装置。

 

 

 

■もろもろ

・パーシャルタイム監獄

アイーダちゃん、ラダメス君等が出てきたときは 「あ、去年タカスペパロデいなかったぶんね」 と思いつつ、客は大笑いしてたのだが、ほまちゃん(穂稀せり)が出てきた時は、本格派過ぎて「あ、こっから本公演開始ね」 って思わず笑いが止まりました。素晴らしいダンディー。ついで出てきたエドモンデンテス/澄風なぎちゃんもね。

 

まっぶー松風輝 &'あおいさん

シトラスのBojangleですっしーさんがやったような、ペーソス芝居、なんてうまいんだ。きゅんっとする。(小室等の「雨が空から降れば」 )

 

・麗しきツインタワーズ

亜音有星(あのんゆうせい)(まあさまと同じ佐賀出身)君と、なつ 颯都(なつはやと)君のシンメ、美しき宙組のまおぽこ

あの等身は完っ全に平成の等身、いやもはやネオ地球といっていい。

本家まおぽこも、まあさますらもしのぐ二次元体型。

まだ研2とは、けおそろし。

 

 

 

 

 

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