宝塚雪組「GATO BONITO(ガートボニート)/凱旋門」東宝 観劇感想 | 百花繚乱

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駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。

 

 

星逢のあとの「ラ」のような意味づけかと思って臨んだら、ガトボニは夜の後のまた別の夜だった。

夢の中のカーニバル。

実際、ショーのシーンには全部夜のタイトルがついている。

だいもんは「汗かいて」と言ったけど、「ラ」のようにビールが美味しい汗ではなくて、岩盤浴の汗というか、内側に熱がこもってじっとり滲み出てくるような汗をかきました。

 

 

■夜のラテン

「ラ・エスメラルダ」とか「リオデブラボー」が、ポップスみたいにわかりやすくのりやすい昼のラテンだとすると、「サザンクロスレビュー」「CONGA」夜のラテン

ガトボニも夜のラテンで、発散系の要素もあるけど、堪能系のショーかなと思った。

縦ノリというより、横ノリ。

バンバン拍手いれて一体化して盛り上がるけど、体揺らして酔いたくもなる。

熱帯夜の気怠さと湿度でむせ返ってた。

 

川底先生のデコラティブなお衣装のどぎついコントラストが、強い太陽を見た後まぶたの裏に黒々とはりつき続ける残像みたい。

奇妙に狂った夜の夢によくあってる。

青木朝子先生の曲はどの曲も、流れるように美しくて、メランコリック。

ページをめくるように、途切れなくシーンが繋がっていく。

逆に言うと、どのシーンも雰囲気が統一されているので、少しメリハリには欠ける印象。

「え、ここでなぜこれ?」 というような 「破」 の部分も、てんこもりエンタの宝塚ショーの大好きなところだが、ガトボニはカーニバルの長いパレードが延々と続くように、途切れなく続いていく。

 

 

第一夜 オープニング

だいもんの登場はシーツの隙間に忍んでくる猫みたい。

猫が足音もさせず普通は入れない隙間にするりと入り込んでくるように、黒猫はカーニバルの山車(アレゴリア)のような巨大な黄金の寝台に伏して、たゆたう旋律に溶けながら滑り出てくる。

 

だいもんの声が黒蜜

艶のあるなまめかしい声で、顔を撫でられてるような気になる。

私たちの夢の中にガトボニさんが入ってくるのか、ガトボニさんの夢の中に私たちが紛れ込んでくるのか、夢かうつつか、幻惑されるようなシーンで大好き。

 

だいもんは暗めの黒い羽に暗い髪で、ちょっと悪魔みたい。

夢の中に忍び込んでくる悪魔は、別名:淫魔とも呼ばれていて、寝ている人のバディになにやらけしからんことをしていくらしいが、綺麗な男が大好きな猫(みとさん)がわざわざ登場したり、咲ちゃんの俺のマグマが爆発したり、娘役さんが天蓋前に雷に打たれたようにばんばん五体投地してくのって、それはなんぞやの隠喩? 大介先生のショーの成分はリビドー。

 

クンバンチェロ、序盤から大技ぶっこんでくる。だいもん比ではおややおとなしめ?(あれで)

影コーラスの男衆が、むさくるしく 「チェロ!!」って怒鳴るのいいね!

いかり肩で大蛇ドレスぶんぶん振り回す真彩ちゃんむっさかっこいい。

黒いマリア様みたい。

銀橋の逆サイに星南のぞみちゃんとかがいるんだけど、りさちゃんたちの黒い淑女Sぶりと対照的な、戦う女神Sみたいな真彩ちゃん、地母神みたいなパワフルさ。

 

 

■第2夜 ガートインテリジェント 賢い猫

シルバー燕尾にピンクシャツの咲ちゃん(彩風咲奈)、とてもスタイリッシュで似合ってるんだけど、ひらめちゃん(草間弥生モードの鬘強烈ねー)と二人でじゃれるシーン、ゆったりした曲のせいか平坦なセットのせいか、ちょっと舞台が広く感じてしまう。

みちる(彩みちる)ちゃんの黒髪アフロ猫&白黒水玉&黒いチュチュドレスが超絶可愛い。

あやな(綾凰華)ちゃんの全身黒のダンス姿、優雅で美しい。凱旋門でもこのショーでも、ダンスにとても華がある。

 

 

■第3夜 キャット・スプルー -しなやかな猫-  ブエノスアイレスのマリア

このショーで一番好きだったシーン。

路地裏に迷い込むような不穏な出だしから始まる ピアソラのブエノスアイレスのマリア。 (原題:yo soy  MARIA)  

だいもんの端整で憂いのある声の響きが、瞬間と過去しかない土地によくあってる。

親指を咥えてまとわりつく雪娘の野良猫感が素晴らしい。娼婦役なんだろう。

ガート・ボニートは優雅で黒くて、光の強すぎる国の闇の濃さを感じる。

 

ガートボニートが足を踏み入れたタンゴクラブの陰翳が息を呑むほど美しい。

漆黒の酒場に、タキシード姿の黒い男達とルビーのドレスをまとった踊り子たちがぼうっと浮かび上がる。

誰かの葬列みたいに厳粛で重厚なシーン。

 

ヤンさんの振り付けはさすがで、男役のしなやかな美しさをいかんなく見せてくれる。

そこにいない影と踊っているような振りのところが、大好き。

凪様(彩凪翔)の一抹の傲慢さを漂わせる硬い表情、後ろから見るオールバックの黒髪とボックス型のシルエット、溜め息が出る。SVに続いてのDV男の厚みのある色気、素敵。

歌うカリ様(煌羽レオ)と諏訪さきちゃんは、絶対なんとか一家の兄弟。輪郭まで黒い

残忍に人殺しまくって「エルサルバドルの蛇」とかなんとか呼ばれちやってんでしょ?

 

ガート・ボニートとアビシニアン真彩ちゃんのタンゴ。

お二人、体で会話してます・・・

歌で会話するのは知ってましたけど、バ、バディで・・・

 

あまりに密着して抱擁しているから、汗も息遣いも全部混じりあっているみたいで、

「セクシーじゃなく、センシュアル」 

とか、どこぞの女性誌のキャッチコピーをつけたくなる。 ←

ガートボニートが抑制した冷たげな表情をしているのに対して、アビシニアンの女は哀願するような、焦がれるような、苦しげな目をして体を絡ませていくのがもう・・・。

タンゴは情痴の踊りだなあ。

 

胸をぴたりと合わせたまま膝を落としてたわめながら、腰を回し、足をすり寄せる。

肘を尖らせ、踝どうしを音が出そうなほど打ちつけあう。

もたれかかる真彩ちゃんを支えるだいもんの胸板はがっしりと揺るぎなくて、真彩ちゃんの頭が沈み、宙が足に浮くのを、だいもんは腕二本で支えてる。

野生的で弛みのない、緊迫感のある美しさ。

 

 

二人は運命の男女の設定だけど、時に兄妹にも見えた。

誰よりも血の濃い兄妹が、互いの血と血で愛しあってるようにも見える。

その姿が、実力のせめぎ合うこのコンビらしくて見ごたえがある。

だいきほは 「作画が同じ」 という言葉が的を得てると思うけど、トップコンビのコンビ感が目にうれしい。

(クリアポスターの 「のけぞる女・M」は一見の価値あり。)

 

 

■第四夜 猫祭り クーラ・キャット  カルナヴァール

大介メイドの豹柄チューブトップギャル、パーリーナイ!!キラキラ

雪娘のいつもの大人びた色気もいいけど、イケイケも最高やな!!!

中央で囲まれるあーさ(朝美絢)がナウオンでやたらテンションテンションアップ連呼してて大丈夫か??と心配したけど、見たら納得。

確かにあれは錯乱してもしょうがない。

 

娘役さんの髪型がファンタジスタ

みちるちゃんのラスタポニーテール、ひらめちゃんのソバージュっぽいポニーテール、希良々うみちやんのとさか髪、 はおりんの片側モヒカン風味、私たちがやったらただのオードリー春日の七三わけになるひまりちゃんのロッキンな前髪、バリかっちょええ。

 

からの、真っ赤っ赤の食虫植物ドレスの真彩ちゃんあーい連発タイムwith 高速ウインク砲オブリガード!! オブリガード!!

よっ、蕨の木の実ナナ!! 

ナニワの黒いダリア!!  

夏だぜ、なつこ! 

 

ハツラツと飛び跳ねる様、キュートさ満点! 真彩希帆の「本領発揮」ですね。

舞台上のミラーボールも振動でぶりぶり揺れてるよ! 

 

カナリアイエロー&バレンシアオレンジの羽根飾りのお衣装で、巨大な風船やら猫手やら牛乳パックやらの飾り物を高くかかげての中詰めの大行進。仮面をつけてる人達もいて、まさしく謝肉祭。

さらに、なんか4色のでかい化け猫まで登場。

 

すけすけの全身レースのパンタロン (しかも化繊じみたどぎついネオンカラー)、胸元のビミョーなボリュームのフェイクファーと、尻振るたびに揺れる尾羽という目のやり場に困るあられもない格好で、皆さま書いていたように鬘でなく地毛なのが生々しさ極まれり。

これまで見た男役の女装の中でも、ぶっちぎりのキワモノ感

カーニバルは冬の闇や悪い精霊をうちはらって春の精霊を呼び覚ますための乱痴気騒ぎ。

日本のお盆と一緒で、死人や奇怪な魔物もこっそり祭りにまぎれてたらしいので、男とも女ともつかない得体のしれない生命体が登場するのはいいんです、きっと。(無理やり)

 

ガトボニさんと次々に絡んでいくシーンは、なんか昔飼ってた猫っていうか、昔つきあってた女たちが化けて出てきてるみたいなど迫力。

ガトボニさんはむっちゃウハウハしてるので、何よりです。

 

その後再び食虫植物お衣装のキング&クイーンが出てくると、心っ底、目と心が安らぐ。

だいきほのコカバナーナ、スイング感が気持ちいい。

 

 

■第五夜 シンガプーラ 

あす君の清新できらきらした歌声が、宝石みたいに転がっていくの心地いい。

チョコレート色のお衣装にあゆみさんとひーこさんのココア色の背筋、嗚呼、褐色の恋人よ!!(スジャータ)

雪組の屋台骨陣の、クリスプで冴えたダンス、短いシーンながら一級品でございます。

 

 

■第六夜 黒猫のタンゴ   

ひろしです。 

黒猫のタンゴにあわせての客席降り、だいもんの客席降りのアドリブの安心感ときたらない。

私は客席参加型で必ずしもジェンヌさんと同じ振りつけを一緒に踊ったりとかしなくてもいいと思っていて(もちろんやるけど!楽しいけど!) 、 客がとても楽しんでるよーということを出せるような、ちょっとはしゃげるシーンがあれば十分と個人的に思っている。

だから、だいもんが練りに練ってくれた(?!)アドリブを披露してくれて、それに観客が思い切り笑ったり拍手したりすることが許される黒猫のタンゴのシーンは客席降りの王道というか、とても安心して楽しんでいる。

望海風斗歌謡ショウ@浅草国際劇場のようなレトロ味ある風格もいい。

 

銀橋で茶々いれる後ろの3人衆(まあやちん、あーさ、ひとこ)が食玩のようにキッチュで本当に可愛い。

特にまあやちゃんはガトボニさんの言葉に数秒で反応してくれる。しかも全・肯・定。 

なんだかさらに黒くなったように見える黒塗りで、にかっと笑うまあやちゃんの白い歯の笑顔のかわいさよ。

 

しかもうちのガトボニさんは、「恋人はいないんです」とか言って銀橋の可愛いあの子無視して客を釣ったり(真彩ちゃんつっぷして泣き、ひとこに慰めてもらう) 、どこの馬の骨ともしらん黒猫と銀座でデートしたりしてるけど、ぶっちゃけ、初日と千秋楽の挨拶では、ほぼほぼしれっと嫁の名を呼んでるんだからな!! 

千秋楽にはシャルトレー・真彩ちゃん、報われるか?

 

 

■第七 激しい猫:チャウシー

先陣努める翔ちゃんの歌声も、呪術的な全力ダンスも、リスみたいな真彩ちゃんも目が離せないが、これはやはりサビにつきよう。

光と影、生者と死者、精霊と母なる大地のエネルギー・・・・・神聖な緊張が極限に達し、階段中央から降臨する白い神様=だいもん

太陽神を呼び覚ますような深い声の響きが劇場をあまねく染めてゆき、四千百三十の耳がそばだつ集中力のクライマックス。

 

「今日--裏切られても--、明日---い--いことがある-------」

 

軽っ!!  

南米の裏切りって、基本撃たれるとか殺されるぐらいの重さじゃ?!

蘭寿さんのCONDAのさびで 「夢が見えなくなったとしても、明日の奇跡を信じるのだ。」 って歌ってたけど、ガトボニさん、災難は重くなって、救いは小さくなっとるがな!! あわれ・・。

だがしかし、あの厳粛な歌声で歌われると、「明日のことは思い煩うな。あすのことは明日自身がおもいわずらうだろう。」 (マタイ:6. 34) に脳内自動変換される望海風斗の究極の折伏力な。

 

 

■第八夜 猫の王と王女

だいきほデュエダン。滾ってる。

挨拶は頭突き、って感じで、お二人の沸点が全く同じなのがすごい。

舞台じゅう走り回った後、だいもんの食いちぎるような直滑降の接吻。(白目)

真彩ちゃんは真彩ちゃんで、そのとき自分のヴァイオレットのドレスをぐっと握りしめてた。なんという攻めの受け芸!!(泡)

 

 

9夜の真夏の原色の夢でした。

GATO BONITO  noche!! 

GATO BONITO del AMOR!!!!

 

 

 

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