宙組エリザベート新人公演 東宝 感想 | 百花繚乱

百花繚乱

駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。




もう感想もレポも出尽くしてますけどね。
その夜のタイムラインのふわふわ具合がすごかった。
鍋の湯からぽこぼこ泡が出てくるみたいに、みんな興奮が止まらない、ってい感じで次から次へと濃い感想が上がってきた。
伝説の新人公演になりますね。


■新公ストーリー
人数いるところは全部カット。
オープニングの「世界が、終わった・・」の亡霊シーンなし。
ハンガリー戴冠式なし、病院のシーンなし、キッチュも、世界の美女なし。
ルドルフとトートの最終答弁なし、
いゃーない、しゃーないけど・・・
政治的なところがかなりがっつりカットされてるから、ちょっとスケールが小さく感じる。
ただ嫁姑のドラマに疲れた美人皇后になってしまう。

このカットされた部分をすべて語りでつないでるのが、そらルキーニでした。
埋めてあまりある存在感。


■瑠風輝  るかぜひかる
瑠風トートは "ヒーロー力" がすごい。
ジャンプの主人公というか、連隊ものでいうところの"赤"感というか。

熱さや感情がストレートに出るトートだった。
ムラでは人間味がありすぎると指摘されたようだが、トートという枠組みの中でちゃんと収まっているので、魅力的だった。

まあさまトートは、腹に一物ある不気味さが常にあるが、ルカゼ君はぐいぐいくる感じ。
ルドルフと本当に友達になってくれそうだし、黒天使たちとフットサルチームとか組んでそう。
「チーム・"闇"一緒に入ろうぜ!!」 みたいな。

立ち姿の美しさ、華が圧巻で、伝統的な銀髪カールの鬘が恐ろしく似合っていた。
あの9-13投身 (※諸説あり) のまあさまの衣装を見事に着こなし、所作も優雅で美しい。
舞台におちる影だけでも見てしまう。

そして、声。
すべての説得力のある声。
歌で完全に舞台をねじ伏せる感
鳥肌が立った。

音楽学校成績2位は伊達じゃない。
厚みのある、張りのある美しい声、朗々とした節回し。
ところどころパワフルなシャウトも入り、聞きほれる。



■和希そら ルキーニ
お見事。役者として、そらの代表作品になるでしょう。
私は個人的に、この 「エリザベートスカイステージ連続10ヵ月放送」の中でも、最も好きなルキーニだった。

エリザベート暗殺者である狂人ルキーニ。
そらのルキー二は、彼の社会的背景まで見えた

引きずるように歩く歩き方、丸まった背中、せわしなく体を揺らし、にやにやと嘲笑するような口もと。
一昔前の映画に出てくるような、片目のつぶれた、セムシ男のアル中を思いだした。
社会 から疎外されていて、野卑で、不信感にあふれていて、凶暴で。
だから、死=トート閣下、や社会を憎んでいるという説得力があった。
閣下を崇拝し、言いなりになってシシイを殺す喜び、という彼の狂気がつながって見えた。

で、ちゃんと、宝塚だった。
死ぬほど、かっこよかった。
ギラギラして、色気が滴ってた。   

宝塚は美しくなければいけないので、浮浪者や死ぬときなんかも生々しくやってはいけない。
美しさの中で、説得力を持たせなければならない。
そらは、その端正な顔立ちと野性的な男の色気で、見事に宝塚の男役として、ルキーニを演じきってた。


もうすごすぎて、かっこよすぎて、正視できなかった。
比較的下手に近い席で、そらがよく見える席だったもんで、あのギラギラオーラが直にびんびん来て、
「これ・・まともにくらったら・・・終わる・・・・」と久々に死を覚悟したもので、もう必死で視野をもやっと広げて見てました。

マダムヴォルフのシーンでですね、奴=そらルキーニは、娼婦たちにちょいちょいいたずらするわけですよ!!
泡風呂に浸かってるスペシャルなマデレーネの尻尾までにやにやと笑いながら撫でまわすのだが、あの優希しおん君のマデレーネの反応がぶっ飛ぶぐらい色っぽく、 「え・・・まさか・あんた・・・すでに・・・つまみ食い・・??」的なとんでもないことになってた。

さらに、最後、娼館のマダムヴォルフが、「おいしい商売させてくれて、どーもね、あははは!!」みたいにルキーニに濃厚なキスを一発かますシーン。
奴は、それまであんなにニタニタセクハラしてたくせに、マダムヴォルフに顎つかまれてキスされるとき 「うおっ・・」って心底びっくりした声だしてのけぞったあげく、ディープキスされた後に、スイッチ入っちゃったのか 「ハアハア・・」ってうめき声を・・・
ひいーーーーーーーっ・・・
そら・・あんた・・・・・

ルキーニ、あれだよね、金なくて女にもてなくて、いつもねーちゃんに酒飲んでからんでるけど汚いし醜いし相手にされないもんだから、マダムがサービスでキスしてくれて、もう制御不能になっちゃったのね・・・

また、まいあー(※華妃まいあ)が激烈エロくて鼻血吹いた。
うらら様のヴォルフとは全く違うんだけど、はすっぱで世渡り上手そうな見事なマダムっぷりで・・
あんたたち、アダルトすぎる。

キッチュのシーン、ルキーニが一人銀橋に出てくるとき、カメラで客の写真をとるときに、日々アドリブがあるのだが、そらのアドリブ。
「銀橋から出てくると、「今日何やってくれんだろー」って期待に満ちたまなざしで見るのやめてくれるーー?」
と・・余裕の客いじりでどっかん笑いとってきました

いちいち小技が素晴らしい。
舞台の端でエリザベートたちを見てる時も、手の指を伸ばしたりかがめたり、肩をすくめたり・・・。
・・一瞬、手のツボ体操にも見えてしまったが、もうすべてがそらルキーニで一貫してる。


■星風まどか<
少女の自由さ、野性味が際立っていた。
みりおんは、繊細で潔癖な少女のイメージがあったが、まどかちゃんのシシイは少女の怖いもの知らずの強さ、正直さが伝わってきた。
宮廷に入り自由を奪われながらも、白い衣装で窓の外の空を見上げ、「私は自由に生きる!」と高らかに歌い上げる「私だけに」、 シシイの生きる力の強さ、自己肯定感が伝わってきて素晴らしかった。

トートは、自分と対局にあるシシイの生き抜く強さに惹きつけられ、愛したんだな、と初めて納得がいった。
シシイに愛をはねつけられるたびに、手ごわい敵を称賛するように敬意を深めていったのだと思う。

戴冠し、真っ白なドレスに着替えた皇后エリザベート。
まどかちゃんの、自信と余裕に満ちた表情が見事。

また歌が・・・
うまいうまいとは聞いていましたが、これは・・
声に艶がある・・・高音でも余裕で安定していて聞いてて安心感が・・・


■留依 蒔世  ルイマキセ
素晴らしい声。
あの北翔さんでさえ「難しい・・」とうめいていた、扉の前の「エリザベート、開けてくれ」の曲・
本役の真風涼帆「今まで鼻歌とかで歌ってた自分を抹殺したい」とうめいた難曲。

素晴らしかった。
あの声帯でころがるようなベルベットみたいな声。
そらに、トークであんな美声聞こえて来たら扉開けちゃうわ。「え?もっと聞きたい」ってと言わしめた声。

ルイマキセのヨーゼフは、歌声とはうらはらに、軍人の単純な感じがよかった。
ほんとに女のこととか微塵もわかってないんだな、って感じがして。
綺麗なシシイに一目ぼれして宮廷連れてきたけど、嫁姑の争い、ぽかーん、みたいな。
何言ってるかさっぱりわかんないけど、こんないい女とやれなくなるのは嫌だから、わかった条件飲むよ的な、男の雑さがよかった・・


■ミルク
誰もが書いてるけど、書かせてくれ!
「ミルクはどこに行った」「あるところにはあるさ」のあの畳みかけるような高音と低音のかけあいのコーラス、銀橋で市民が一列に並び、こぶしを振り上げながら革命を誓う超見せ場。

人数が!!! 半分なのに!! 熱気が倍増!!
すごい、あのコーラスの厚みが全く衰えてないのはほんとにすごい!!

真ん中でこぶしを突き上げながら歌うそらルキーニの堂々たる姿・・・
宝塚でも、ひゅーーって口笛吹いたり、ばたばた足踏み鳴らして称賛できる日があればいいのに!!!


■書ききれん
・ゾフィー 瀬戸花まり  怖い・・・(ほめてる)
・シュテファン(潤奈 すばる)、エルマー(真名瀬みら)かっこいい