月組NOBUNAGA 下天の夢 観劇感想 | 百花繚乱

百花繚乱

駆け出し東宝組。宙から花のように降る雪多めに鑑賞。




・龍真咲 
真咲さんの信長は、とにかく華やか。
もともと外連味のある龍真咲の持ち味に見事にはまり、まぶしいほど。
かっこいい。

観劇した男子高生集団が 「龍真咲かっこえーー。俺、龍真咲なら男でもいけるわ!」と興奮していたというtwitterを見かけたが (注:龍真咲は女です)、そらそーでしょう。

意外に信長の場面が少なくて、心情がつかみにくい。
龍さんの信長は、怒り屋の気まぐれの信長ではなくて、自分の目的を徹底的に通すために非道なこともいとわない、理の信長だった。

天下統一し、「魔王」となっていく様があまり掻き込まれていないが、「尾張のうつけもの」の前をはだけたやんちゃくれの青年期から、豪奢な南蛮羽織に髭を蓄えた破竹の勢いの盛年期、渋面に黒びかりした甲冑をまとう晩年の信長と、龍さんのたたずまいの推移が圧巻で、それだけで説得力がある。

ジェンヌさんがやりたい役で「舞台の上で年を取って、老いるまでの人生を演じられる役」を上げることが多いけれど、短く濃く華やかに生き急いだ信長の一生は、タカラジェンヌが演じるのに、なんてふさわしい演目なんだろう。

最後、信長は死なないことで、賛否両論あるけれど、私は当然、あり、だと思う。

南蛮船に乗って、大海へ漕ぎ出していく信長。
義経が死んで中国にわたってチンギスカンになったという伝承とか、日本のあちこちに義経が流れ着いたとされる場所があるように、英雄が死なずに転生とした、という説を説くまでもない。
スター・龍真咲の新しい門出だもの。
なんの文句があろうか。

信長と共に航海へ出ようとするロルテス(珠城りょう・次期トップ) 「やらなければいけないことがあるだろう」と語りかける信長の、龍さんの柔らかな口調、穏やかなまなざし。
月組の舵が渡されるのだ、といやでも感じざるをえない。
そして、「はい!」と力強くうなずき、走り去っていく珠城りょうの背中はすでにぶあつく見えました。

信長を裏切った明智光秀でさえ、「やっと、殿の重荷を背負う覚悟が覚悟ができました」と語る。
光秀は信長の、失意の中に散っていった者たちの、負の遺産の継承者なのだ。
栄光も、欲望も失意も、何もかも受け継がれながらすべてを飲み込んできらきらと輝いている、宝塚とはそういうところだ。

最後、龍さんが、黒いビロードのマントを、金色の翼のごとく翻すシーン。
神々しく雄々しい、龍真咲そのものでした。


・武将たち
月組の武将たちは華やかーー!!
美弥ちゃん(秀吉)を中心にした武将の群舞のシーンは、あでやかで圧巻!!

や、みんな、どうしてもっとビジュアルのよさを宣伝しないのだ?!
るろ剣もすごかったけど、NOBUNAGAの皆さまもたいがいだよ?
むさい髭面にちょんまげ姿、時代劇で綿々と続く古典的な武士姿で、あんなに雄々しく、美しく、華やかってほかにないよ?
まずい、むさいおっさんや鬘の似合っとらん若手俳優パラダイスの時代劇、もう見る気がしない。
しかも、奴ら、歌ったり踊ったりできないし。(←当たり前)

皆があまりにも飄々と踊っているので、こっちもさらっと見そうになるけど、新人公演映像を見ると、あの身のこなしは磨き抜かれた「男役芸」の結実だということがよーーーくわかる。
髭面&ちょんまげ姿の武将が甲冑をつけたまま踊りまわる姿を観れる場所は、現世では唯一無二だーー!!

殺陣は、何がどう違うと言えないのだが、間とか、ポーズからポーズのつなぎの刀の持ち方ひとつでずいぶん印象が地がものだな、と思った。


柴田勝家(有瀬そう)
ツボでした。
荒々しくて、武骨な信長の重臣のイメージそのまま!
ひとことぐらいしかしゃべらないけど!!
しかし、有瀬さん、あだ名が「サブ」って・・・

・秀吉(美弥るりか)
あんなに妖艶な秀吉ってあるのか。
「秀吉は好色」っていう伝説が、やっと理解できたよね。
でも、ちゃんと「猿」なの。
耽美になってなくて、どこか野卑な感じがちゃんとあるの。
肌の色が少し黒めのせいか。
いやはや感服つかまった。


・浅井長政 (宇月颯)
穏やかで、理知的で、誠実な智将の浅井長政にぴったり。
涼やかなたたずまい、烏帽子からはらりと垂れる一筋の黒髪の美しさ。
そりゃ、絶世の美女お市さま娶るわ!!添い遂げるわ!!
落城するときに、お市さまに寄り添い、そっと肩を抱きかかえるたたずまいのその優しさよ!

私は、人生で購入した記念すべき舞台写真2枚目が、バスティーユの民衆のとしさんの写真だったのですよ!
自分の見る目を全力で褒めたいよね!!! ←うざい
(一枚目は、ちゃぴのマリーアントワネットです。)


・沙央くらま
足利将軍役のコマさん、いい味出してました。
公家独特の気取った感じとか、こすい感じ、力の抜けた感じが絶妙にうまかった。


・帰蝶
ちゃぴ、もう圧巻の貫禄ですね。
声が、日本昔話のナレーションのごとく、しんしんと体の芯に染み込んでくるええ声。
あのエリマキトカゲのような一人ファンタジーな衣装の意味は、一生懸命考えたけど結局わかりませんでした。