新生雪組を出航する船と海に見立てたショー。望海風斗の名前 「望(HOPE)」 「海(OCEAN)」 「風(WIND)」 「斗(BIG DIPPER)」 と名打ったシーンを中心に構成。
スターの名前を四分割するっていう発想が(私の知る限り)既存の宝塚になくて、「お、おう・・」ってなった。
なんか捨てるとこのない鮭っていうか、ひとつもあますところなく食べきります的貪欲な姿勢が大変よろしい。
■オープニング・ゴンドラに乗って登場
「歌詞をもらった瞬間恥ずかしすぎて、これ私歌えるかなと思った」 とだいもんに言わせしめた赤面ソング。
宝塚劇場での初日、歌い始めたら、眼下の客席から、ざわざわざわざわとざわめきの波が広がったことが、どうやらプチトラウマになりかかっている我 らがだいもん。
楽しみにしてました。
「ようこそ 俺の海へ 寒いだろこっちへおいで
寒いだろ 凍えた体を 俺がぎゅっとあたためてあげる」
「いやなことは 俺が忘れさせてあげる」
「怖がらないで さあはじめよう 俺とお前のシークレットクルーズ
ひーーーっ
野口先生!! そこは 「僕」 じゃ駄目だったんで?!!
海軍の堅苦しい軍服が皮膚みたいに似合いすぎてるだいもんが、くそ真面目な顔して、えーーえ声で歌いあげるわけですよ、このキラキラリリックを。
この声質と歌詞の激しい断絶・・・・まごうことなき美声の浪費。
"僕" だったら、全然ありだったと思う。
「ようこそ、僕の海へ 寒いだろう こっちへおいで」
「僕と貴女のシークレットクルーズ」
・・・だいもんだ。
船をイメージした舞台セットに、青と白のベレー帽、水兵服を来た組子がさわやかでキュート!! (衣装:加藤真美)
0番で、白雪のような水兵服に身を包み、にかっとした笑顔で、誰よりも美しい敬礼を決めているだいもんに胸熱。
白い手袋をして掲げた手がね・・・びしっと一分の隙もなし。さすがラジオ体操指導資格保持者。
だいもんの軍服= 「任務」
絶対、任務を遂行してくれるだろうなという絶大なる安心感。
敬礼しながらかくっかくっと、腰を二回入れる振りが、リズミカルで愛らしくて最高にツボ。
まあさまビバフェス黒燕尾の、腰を両手で巻きつける振り(伝われ! )があると思ったら、振り付け羽山紀代美先生!!
ありがとうこざいます!!
■赤面ソングアナリーゼ
今回の演出家の野口先生がもとてもジャニーズがお好きらしく、全面的にジャニーズ風歌詞を取り入れていらっしゃいます。
これが、いつもの宝塚歌詞とはかなり違った様相を呈している。
キラキラスターたちの舞い踊るオープニングの歌詞をアナリーゼいたします。
・終助詞は「ぜ」 「よ」「さ」
※「ぜ」 〔終助詞] 男性専用の語で対等または目下の者に向かっていう場合に用いられる〕 (出展:大辞林) 例文) 大好きだぜ
※ 「さ」 〔終助詞] ほぼ同用法の「ね」に比べて相手に確認する意が弱い。無責任さをこめる。(出展:wictionary)例)逃げちゃだめさ
※「ぞ」 〔終助詞] 自分の判断・決意を自分に言い聞かせ念を押す。 (出展:デジタル大辞泉) 例)大好きだぞ、泣き虫プリンセス
・お姫様はおっちょこちょい
色々聞かせていただいたところ、ジャニーズさんの歌に出てくる女の子は、どうも注意力散漫なようだ。
ぶつかるし (例 「ぶつかっちゃうよ」)、 いなくなるし、 (「例 「君を探すよ」) どっかいっちゃうし (例「こっちにおいでよ」)、海の底にもぐったり溺れたりするし、どんだけ手間かかるっちゅーねん!!
幕間30分きっかりでトイレ行って、トイレの列で友人に感想ライン打って、キャトルよって、ポスターもらってきて、雪組公演デザート「スッパインジャー」(410円) を食して小腹満たして席に着く、時間管理と自己管理を徹底するヅカオタはどう考えてもお呼びじゃない。
※)注 ジャニーズの楽曲はとにかく多様で、年上女性対象とかアバンチュールソング等色々あるそうです。「太ってもいいよ」って曲もあるらしいです。(すごい聞きたい)
・キュンキュンドキドキ擬音多し
少女漫画界での類語は 「トクントクン」と 「カアアアアァ」
擬態語でも「ムカムカ」とか「イライラ」とか絶対ない。
・大事なことは三度言う
例) 「hey hey hey Boy!! 」 (「がんばりましょう」SMAP)
「 I want you no no no」 (「仮面舞踏会」少年隊)
「傷ついても落ち込んでもsmile smile smile」
「空はsun sun sun なのに cry cry cry どうしたんだい」 (「never give up」Sexy zone)
・ファンに馬乗り
例)「抱きしめてやる」 「目覚めさせてやる」
「お前、こうだろ??」的に、オレ様王子様なんだが、実はそこに飛び込んでく一歩を踏み出すのはファン。ファン側の負担でかし。ファン、勇者。
こんだけジャニーズさんに寄せといて、結局最後は
望海 「さあ創ろう 僕らのすばらしいbrand new world」
ちょっ、「僕」でいいんじゃん!!
この歌詞を、明るくキラキラとした素敵な曲に変え下さった青木朝子先生を拝み倒したい。!
■客席降り
ポンポンを持った組子たちが、「希望もって海へ飛び出そう!」 の歌詞と共に、客席に進水してくれます。
予科生がつくった疑惑が若干捨てきれないが、客席のいたるところで青とシルバーのポンポンがきらきら光っているのは海みたいでとてもきれい。
客席で客と組子がダンシングしている間、銀橋でだいもんがずーっと歌い続けてる。
だいもんの声をBGMに客席降りってなんという贅沢。
組子たちが、客席から本舞台に引き上げてくるとき、「アーアアアーアーアーアー」と だいもんのシャウトが追い風みたいに一階後ろ扉まで響き渡るのにしびれる。
バイブス半端ない。
うちらのトップさん、すごいっす。
■ロケット
しかし、敬礼しながらの足上げってすごい大変だな!!
あやなちゃん(綾 凰華)、白くて人魚みたいにきれい! Welcome!
■海の見える街
ジブリの魔女の宅急便の音楽をジャズ風にアレンジ。
満月の浮かぶ、夜景の美しい海をバックに、ラララランド風にひたすら踊りまくる5分ぶっ通しのダンスメドレー。
ジャズアレンジが軽やかで切なくてほんとに素敵。LowlandJazzというbigbandの演奏らしい。
今回、皆様、両足ほとんど舞台につけてなくない? ほぼ跳ねてます。しかも掛け値なしに楽しそうなんだ。。
がしがし踊るダンスに、どSのsong&danceとちぎさんの影が見えて夜景が滲むぜ。
なんか熱い塊が通り抜けてったなって思うと、それはたいていあきら(叶 ゆうり)&オージ君(桜路 薫)・・
どんなときでもわかる存在感よ・・
緑ドレスにショートヘアは華蓮えみりちゃんかな??so cute.
■北斗七星 コールポーターメドレー
たいていショーの役名は、「スパニッシュの男S」 とか「ジプシーの女B」 など、漠たる呼称なのだが、今回、役名がわからん!!
ネーレウスって誰や! (内海を表す穏やかな神らしい)
真彩ちゃんのアムピトリーテーって、ほんっとに台本見ずに噛まずにいえますか、野口先生?! (ポセイドンの妻らしい。)
いやー、コール・ポーターもまさかyou’d be so nice to home to※が、こんなにぴっかぴかにアレンジされるとはぶっ飛んだろうよ・・。(※) ヘレンメリル等 戦場に行った青年が家に帰りたいと歌うしっとりした切ないバラードソング)
そう、これぞ宝塚変換。とりあえずどこにでもスパンコール巻く。衣装にも歌詞にも。ラブ・ユー!!
■Diaryからの大階段
だいもんの、天海さんに語りかける日記に題材をとった美しいバラード。
「天海さんもそんなことある?」 ⇒ 宝塚変換 ⇒「have you ever done before? 」
・・・あのね、個人的には群馬のJリーグチーム「ザスパクサツ群馬」 が、 「the spa 草津」 から来てたと知ったとき以来の衝撃だったよ。
雪が降る大階段に響き渡るバグパイプの音が泣ける。
「天の海に輝く星に憧れて」 の星空に響きわたる調べが雄大。
思わずぐっとくる・・・暇は全然なく、スクリーンに流れ行く巨大なだいもんの幻影群に眼ん玉飛び出る。
からの、白燕尾に白いトップハット、白ケーンを脇に抱えた組子が大階段から降りてきての群舞。
「エンターテーナー」を思わせるようなクラシックなダンスに、大段階が虹色に光って夢夢しい。
野口先生、ジャニオタだけど、ゆるぎないヅカオタでもあって、こういうところ本当に信頼しかない。
娘役さんたちの白ケーンってたぎる。生足あんだけ出してるのに、気品があって美しい。真彩ちゃんの可愛いこと可愛いこと。
■コマさん sailing day
ペンラソング、来た。
このショーは新生雪組の出航でもあり、元雪組の専科さんが退団する新しい門出でもある。
宝塚は、始まる者と旅立つ者が常に入り混じって留まらない、まさしく港のような場所だ。
コマさんのシーンは、退団者を見送る宝塚的の伝統的なシーンであるだけでなく、このショーの世界観に奥行きを与えてくれる。
銀橋は、二階席から見ると、ちょうど船の舳先に見える。
青い筋の光に照らされた甲板=銀橋をゆったりと渡っていく真っ白な衣装のこまさんの、切ないまでの美しさよ。
■アイドルユニット Blizzard 「hard nock day 」
彩凪翔×朝美 絢 の致死量の顔面を摂取してあっち行ってしまうところだったが、どでかい雪の結晶がごろんごろん吹き飛ばされていく背景のCGに吹いて一命をとりとめる。
それぞれに芸名がついているという設定なのだが、日向春磨君か゛「ピヨタ」って、それはもはやアイドルではない。
そして、眞ノ宮るい君(キラッキラしてた) の 「ウェインツ」は ただの本当のあだ名だ。
まあ、陽向春樹君が「タワシ」じゃなかっただけでもよしとしよう。(本当のあだ名)
(ジェンヌのあだ名についてはこちら⇒タカラジェンヌの愛称)
宝塚は基本的に生歌なので、この激しく踊るアイドルシーンが口パクであるかどうか、口パクがありかなしか、ファンの間で議論がかまびすしい。
それも実にアイドルっぽくっていい。←盲目。
私は生歌でやってほしい派。
モーニング娘はハードで難易度の高いダンスを生歌でバッチリ揃えて決めてますから、ジェンヌなら絶対できる。
しかし、せっかく、彩凪翔×朝美 絢というイデア界の風神雷神が銀橋で肩組&ばっちりねっとりウインク決めてくださってるのに、その背景はどでかい「暴風雪」 の文字+ そこに突き刺さってくるメンズナックルめいた斜体、Blizzard。
当然あらゆる意味でざわつく客席。
ジャニーズさんが台湾とか行った時、「V6」が 「勝利六人組」 、「SEXY ZONE」が「性感帯」って表記されてたりするのを踏襲した中国ネタと思われます。
■情熱の一夜
咲ちゃん&スパニッシュ。
大階段の中央、雪娘の中央に、マタドールの衣装で一人そそり立つ咲ちゃんのシルエットの美しさときたら!!
足、ながっ!! 知ってたけど長っ!!
ロングレッグPostまあさまの称号はあなたのものYO。
肩出しスリット入りのブラックドレス&真紅の薔薇のコサージュ、黒扇ひるがえすバリかっこいい雪娘たちの名前は、「エルモーソ」 (誰だよ?!)
「ボニータ」 に続く、トンチキスパニッシュ名だが、雪娘が完全艶女(アデージョ)だったので許す。
振りは挑発的なのに、娘役さんたちの歌声が若々しいというギャップが生々しくていい。
組換えしてきたひらめちゃんがコアラみたいに小顔で可愛いのにあだっぽくて、眼をひく。
■大階段 アンダルシア
・シャツ、タックインプリーズ
・ラップ調
・「オレ」 8:15分には第3倉庫に到着
・銀橋を走る「オレ」、ちょっとゆるい
・イルカに代わってジャケットに頬ずりする男役
・せっかくの腰振りがシャツとジャケットに隠れて消化不全
全体的に、テーマが海で、明るくて華やかでいい。
ショーのコンセプトが発表されたときに、生田先生に負けない前のめりぶりで 「野口先生落ち着いて」 とファンにたしなめられていたが、宝塚は過少より過剰を愛する国。
ちょっぴり眼がCHIKA☆CHIKAするけど、全然無問題(モウマンタイ)。
突っ込みの余地を大量にこさえておく、っていうのも、宝塚の演出家として実は必要な力量だと思う。
そういう意味で野口先生は偉大である。
大衆娯楽としての宝塚の面目躍如。
エンターテーナーの五組をいれこんだ歌詞もそうだし、今回の組子の名を入れ込んだ歌詞とか、野口先生の言葉遊びもとても好き。普通の歌詞もとても美しい日本語だと思う。
最高の夢の船旅でした。
セクシーサンキュー!!
(使い方間違ってる。セクゾファンさん、すみません。)
(ただ使ってみたかっただけです)
(中島健人さんの隠微なターンには脱帽です)
追記 :でも、やっぱだいもんは「僕」だよ。