ユウの宝物 -46ページ目
手術が終わって、体も心も回復している最近。
気持ちが明るくなっているつもりでも、
時々自分が心底最低な奴だと思う時がある。
仕事復帰する前に、
仲の良い後輩同僚の家に行く約束をしていた。
その同僚には、7月に生まれた赤ちゃんがいる。
自分が手術する前までは
そんなに気にならなかったけれど、
術後、いざ会うとなると私の嫉妬心が‥。
私、最低。
嫉妬しても仕方ないのに。
手術、納得して受けたのに。
赤ちゃん生んだ後輩に今更嫉妬?
後輩も私に対して後ろめたさがない訳がない。
全部話していたから心配もさせた。
気も使わせたと思う。
とても大好きで大切な存在の後輩に対して
そんな気持ちを少しでも抱いた自分が
本当に嫌だった。
更に嫉妬心を感じたのは昨日。
実は私、昨日から仕事復帰した。
手術前は交替勤務だったけれど、
年内は日勤帯で仕事をする。
以前、同じ職場で働いていた同僚3人に
更衣室で久々に会った。
その中の1人のお腹が大きい。
8ヶ月くらいだろうか‥。
実は彼女は若い頃、絨毛癌にかかったと
打ち明けられた事があった。
その後寛解し、結婚して子供を授かった。
今回は2人目だ。
以前の私なら、躊躇なく
『おめでとう‼︎』
と言って祝えただろう。
それが今回、出来なかった。
奥の方にいたから気付かないふりをしてしまった。
彼女は病気に勝ち、子供を授かった。
しかも40歳だ。
子宮も卵巣もある。
‥羨ましがっても仕方ないのに。
元々、私は悠々自適な独身人生を謳歌すると
思っていたじゃないか。
私、最低。
黒い気持ちを隠す様に変に高いテンションで
簡単な挨拶を交わし、
逃げる様にその場から離れた。
帰りの車の中、私のこの嫉妬心や黒い気持ちが
早くなくなってくれる様に願う。
最低な嫌な奴、嫌な奴、嫌な奴‼︎
自宅へ帰ってからも、ずっと思っていた。
祝いたい気持ちと嫉妬心が混ざって
グチャグチャだった。
でも、ちゃんとお祝いの言葉、伝えたい。
絶対に心からの『おめでとう』を言うよ。
もう少し、もう少しだけ待っててね。
まだ体も心も、キズが癒えてないみたい。
ごめんね。
その子は私と同じ誕生日。
同じ誕生日なのに、私と違って素敵な女性。
そんなあなたを、心から祝いたいと思ってるから
上部だけの言葉で『おめでとう』は
言いたくない。
ぐしゃぐしゃな心のまま、今日も出勤。
また彼女達に会わない事を願う。
そしたら更衣室で別な同僚に会った。
その人とは今でも食事に行く仲良しさん。
病気の事は伝えていなかった。
手術が終わってから伝えようと思っていた。
早く出勤して人も少なかったので、
廊下の隅で
子宮体癌にかかったこと、手術して
昨日から仕事復帰したことを伝えた。
その時に言われた言葉が
『これからやりたいこと、できることを
楽しまなきゃいけないよ』
‥‥そっか。
やりたいことは考えていた。
だけど、これからの私ができることを
考えていなかった。
女性器を失い、できないことばかりを考えていた。
後ろ向きだった。
できることを探す。
そして楽しむ。
涙が溢れた。
今の私に、1番必要な考え方だね。
いつもサバサバ系のあなたがとても優しいから
泣きながら話しちゃって、
結局心配もさせちゃったね。
ごめんね。
そして、心からありがとう‼︎
しばらくすると、またインテリ系の医師と
先程の看護師さんが現れた。
姉は別な部屋へ移動した。
‥そろそろ始まる‥。察知した。
下着を脱がせて貰い、仰向けに寝る。
口に酸素マスクが装着された。
確か両足を手術台へ固定されたと思う。
急にバタバタと沢山の足音がして
何人も手術室へ人が入ってくる気配がした。
怖くなって、目をギュッとつぶる。
『〇〇さん、〇〇さん』⇦私の名前
呼ばれてパッと目を開けると、
若いイケメン医師‥。
もう1人の先生とは、このお方か‥。
そう思った瞬間、インテリ系医師が
手術の準備で体に触り、驚いた。
するとイケメン医師が
『〇〇です。よろしくお願いします。
キチンと麻酔効いてから手術するので
安心してくださいね。』
と優しく言った。
‥多分、この時の医師が後の私の執刀医だ。
優しい言葉をかけられ少し安心した私は
何気に点滴(右)を向く‥と、
そこにイケメン看護師が‥。
‥‥‥もう、どうにでもなれ‥。
大学病院、恐ろしや‥。
すると直ぐに
『麻酔入れていきますね』
と、看護師さんの声がした。
私はまた目をつぶり、そこからの記憶はない。
『いたぁい‼︎』
自分の声でハッと起きた。
私、今叫んだね‥。
痛かったのは一瞬だった。
もしかしたら、一瞬だけ麻酔が切れて
また眠ったのかも知れない。
目が覚めてからは、全然痛くなかった。
看護師さん1人とインテリ系医師がいて、
インテリ系医師は直ぐに手術室から出て行った。
『このまま2時間、休んで頂きます。』
そう言われて、手術室には私1人‥。
頭上には循環モニタ。
見ようと頑張ったが、ほとんど見られない位置。
このまま2時間‥長い‥。
仕方がないので、点滴を見ていた。
どんどん減っていく。
術後、横になっているのに、
出血も凄い感覚。
お腹に少し力を入れると、溢れる感覚。
血の海になるんじゃないか‥?
点滴が終わるタイミングでナースコールする。
出血も凄い感覚がする事を伝える。すると
『もう少しで1時間経つので、その時に
出血量計りますね。』
と言われる。
なるほど、だから持参したナプキンの重さを
測ったのね。
何も確認してくれなかったので、
溢れて血の海になっても知らないからね!
と心の中で思っていた。
1時間が過ぎ、ようやくナプキンを換えて貰った。
どうやら間に合った?みたいだ。
あと1時間残っている‥。
眠くもなく、意識もハッキリ。
相変わらず出血も多い感覚がする。
何とかまた1時間が過ぎ、出血量の確認。
インテリ系医師も看護師さんと同時に来て
診察してくれた。
『抜かれる感覚していきますね。』
ガーゼ?を止血するのに詰めてあった様だ。
詰め物を取って貰うと下着をはかせて貰い、
上半身を起こして貰う。
凄く心配されながら立ち上がらせて貰った。
やはり手術台は血まみれになっていて
申し訳なく思ったのを覚えている。
体は全然平気だった。
『歩けますか?』
‥全然平気。
『お手洗いで排泄できるか確認してみましょう。』
排泄出来た。普通に歩ける。
また手術台へ座る様に言われ、点滴を外して貰う。
インテリ系医師参上。
処方されるお薬(抗生剤、胃薬)の説明を受ける。
その他にクリニックで処方して貰っていた
止血剤と血管強化剤のお薬も出して貰う様に
お願いした。
‥実は次の日、仕事に行こうとしていて
それを先生に相談した。
行けない訳じゃないけど、余りお勧めは
しないとの返答。
確かに。
私も何を考えていたのだろう。
日帰りとはいえ、手術は手術。
次の日は会社をお休みした。
次の日休みを取ると、会社は4連休。
体を休めるには丁度良い。
職場のみんな、ごめんなさい。
病室へ戻り少し休んでいると、
薬剤師さんがお薬を持って登場。
TVでアンサング・シンデレラ放送中で
毎週楽しく見ていたので気持ちが舞い上がる。
お薬の説明をして頂き、それが終わると
看護師さんに術後の生活の説明をして貰う。
退院証明書と次回の通院予約表を受け取り、
リストバンドを切って貰って無事に退院。
日帰りできて良かった〜!
姉も長い時間付き添ってくれてありがとう‼︎
かかった費用は、2万1千270円。
先程の看護師さんと一緒に、姉が病室へ来た。
そのまま手術室へ通される。
今思うと、
手術室ではなく、分娩室だったのかも知れない。
内診台よりも大きなフカフカな
まるでエステする様な大きな内診台があった。
その手術室で姉と2人、1時間近く?待つ。
看護師さんが数名、中に入ったり出たり
ワゴンはどこに行った?持っていった?
と、バタバタしていた。
どうやら、緊急のお産が入った様だ。
大学病院は難しいお産も多いだろうから仕方ない。
むしろそんな時に申し訳なく思った。
しばらくすると、インテリ系?の医師が来て
手術の説明をしてくれた。
話し方は穏やかだが、見た目がインテリ系なのと
手術に伴う危険性を説明されて緊張する。
説明が終了して手術承諾書にサインすると、
医師は手術室から出て行った。
姉『なんか凄く怖い事ばっかり言われたね‥。』
姉の方が怖がっていたみたいだ。
私はというと、どちらかと言うと
沢山の事を言われてボヤーっとしていた。
少しして、看護師さんが来た。
さっきの可愛い看護師さんと違う看護師さんだ。
でも、その子も若くて可愛い看護師さんだった。
『沢山お待たせしてすみません。
ちょっと緊急のお産が入ってしまって。
先生も2人揃わないと手術出来ないので‥。』
と言われたけど、仕方のないこと。
逆に、謝ってくれる看護師さんが気の毒に思えた。

