街から離れ、田舎暮らしの電磁波過敏症の人のお宅へお邪魔したことがある。
Dさん(電磁波測定器を持つ電気工事士)にお願いして同行させてもらった。
この日、二軒のお宅に伺うことになっていた。
最初の女性宅で、玄関で靴を脱いでいると、女性が私をじっと見た。
初対面だし、変な感じもしなかったので気に留めなかった。
二軒のお宅は、Dさんが書き物でお世話になった人たちだった。
女性の今の健康状態などを聞き、今から、もう一軒の男性宅に向かうとDさんが言うと、
女性は笑顔で別れを告げて、また、私を見た。
その戸惑い気味の表情に、今度は違和感を感じた。
移動の車中で、バッグの中を覗いて、合点がいった。
携帯電話(当時はガラケー)の電源が入ったままだった。
女性は、最初に玄関でそれを感知したに違いなかった。
私は、慌てて携帯電話の電源を切った。
男性宅に着くと、男性は自分が電磁波過敏症を発症した経緯を私に丁寧に話し出した。
携帯電話基地局が建って、自分たちのような大変な思いをしている人がいるんですよ、と言った。
その一方的な話しぶりに、前宅の女性から連絡が入ったのだと思った。
バッグの中で、携帯電話の電源は入っていなかったが、
私は叱られた子供のように、ずっと男性の前でうつむいていたのを覚えている。
もちろん。
男性は終始笑顔で、Dさんも、訪問の目的を果たした。
帰りの車中。
私はDさんに、電源の入った携帯電話を女性宅に持ち込んだことと、
だから、男性は、高周波の話を私にしたのだと思う、と言った。
男性は、基地局が原因で子供もひどい健康被害にあってるからね、とDさんは言った。
電源を切っていても、私のような無頓着な人間は、
家の中でいつ携帯電話を使い出すかわからないから、くぎを刺したのだろう。
あれから紆余曲折あって、私は今、電磁波カットの家で暮らしている。
就寝しながらのアーシングで心と体の健康を維持している。
人の痛み(精神的な痛みも含めて)は、
経験しないとその中身はわからない。
でも、傍から見て、痛がっていなくても、確かにそこに痛みがあって、
その人は、体の奥で耐えている時がある、ということを、忘れてはいけない。




