『隠された人災』松本健造・著、を読む。 | アーシングエブリナイト

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10年間、夜は導電性シートを使ってアーシングをしながら寝ています。目覚めた時、ゼロボルトの脳とカラダは純正の私そのもの。紡ぐ言葉も私そのものでありたい。

日本は知らせない国。

度々そう書いてきた。

正しい知識さえあれば自衛ができる。

誰もがたった一度きりの人生を謳歌したいから。

そのチャンスさえ奪う国や企業の知らせないことの大罪がこの本を読むとわかる。

 

記憶に新しい2021年大坂ビルクリニック放火事件。

出火から30分後 鎮圧。クリニックから27名救出。

救出直後多くの人は意識があった。

「災害派遣医療チーム」(DMAT)によると。

出動直前の救命可能なトリアージ情報は、赤(重症)4人、黄(中等症)4人、緑(軽症)10人。

現場に向かう途中、先着隊より、救命可能な18人全員が、

黒(死亡または救命困難)に近い赤に変更との情報。

医療チームは到着するも、すぐに解散の指示を受けるー。

現場はほぼ全員が心肺停止に陥るという最悪の状況だったからだ。

 

トリアージとはこれほど確実性に欠くのだろうか。

著者はひも解く。

救出された被害者らには日本の火災現場における慣例である純酸素投与と

心臓マッサージが行われた。

火災の煙で死に至るのは一酸化炭素のみという思い込みが踏襲されているからだ。

しかし、欧米では違う。

近年、建物火災で煙を吸い込んだ被害者は

かなりの確率で猛毒の青酸ガスを吸い込んだ疑いがある為、

解毒剤「ヒドロキソコバラミン」が準備されており、

実際、心肺停止の被害者にこの解毒剤を投与後、救命出来た事例もある。

話をクリニック火災現場に戻すと。

一酸化炭素よりはるかに毒性の強い青酸ガスが被害者の体内を駆け巡っているとしたなら、

酸素のみの投与はほぼ意味がなく、

哀しいかな、一刻を争う命の時間を使い果たしてしまうー。

 

ところで。

この悲惨な現場を再現することが著者の目的ではない。

なぜ、被害者が青酸ガス中毒に陥ったのか。    

火災から半年後、総務省消防庁は、火災の調査報告書を発表した。

それによると、現場は大量のウレタンが燃えていた。

待合室の3人掛けソファー2つは背もたれのウレタンの大半が焼失しており、

座面のウレタンも露出。同室の椅子も大半が焼失、とある。

著者は述べる。

現場はウレタンが燃えて致死濃度に近い青酸ガスが発生した可能性があり、

現場に駆け付けた消防隊・救急隊、搬送先の病院は、青酸ガスの発生を

知る由もなかっただろうーと。

そして、燃えると大量の青酸ガスを発生するアクリル繊維にも触れている。

クリニックの待合室なら、絨毯やクッションに発生源があったかもしれない、と。

 

本を読むと、

著者が読者に知らせたいことがもう一つある、と気付く。

 

実はウレタン火災の青酸ガス発生は半世紀前からウレタン業界を相手に論争があった。

業界の圧力に解剖医側がねじ伏せられる形で、正論は世の中に出なかった。(現在も)

それでも、1970年代までは、ウレタン火災による青酸ガスの危険性は、

度々、新聞も見出しで報じるなど、

消防庁も青酸ガスへの注意喚起に協力的だった。

が。何時しかそれも鳴りを潜めた。

 

著者はこの章を業界の裏話でくくっている。

ある会合で、安全な木造建築を推進する団体が、

外断熱に使われる硬質発泡ウレタンの火災における青酸ガス発生の危険を指摘した。

出席者のひとりが次のように反論。

「火災で住人は、家の外から燃えて発生する青酸ガスより先に、

部屋の中の家具が燃えて発生する青酸ガスで死んでしまう」と。

 

『隠された人災』を読み終えて、

私は電磁波問題も似ている、と感じた。

2002年、朝日新聞が1面トップで、

日常的電磁波被曝による小児白血病発症リスクを報じた。

WHOの見解によるもので、他紙も後追い記事を掲載した。

が。

今や、電磁波の健康被害について書かれた記事は皆無と言っていい。

かつて、それでも真実を伝えるのが報道の使命と信じ、

電磁波関連取材をする記者がいたと聞く。

が。

書いた記事が紙面に載ることはなかった。

当該記者が左遷されたとも聞く。

 

『隠された人災』。

ここにはメディアも行政機関も隠す側にいるという現実がある。

だから。

人の命と暮らしを守る為に進むべき道筋が照らされても、

そこに向かって歩を進めることができない。

でも。

メディアには言いたい。

嘘をつかなきゃいい、だから隠し事はオーケーと思っているなら、

その看板外して下さい。

 

それと。

救命を念頭に、青酸ガス中毒の解毒剤ヒドロキソコバラミンの準備と

現場での投与という新たな医療体制の確立を願います。

 

長文でごめんなさい。もうひとつ。

 

『隠された人災』は二本柱になっていて、もう一本はバス事故に関するものです。

ここにも恐ろしい現在進行形の大罪が書かれています。

今も裁判中の2016年の軽井沢スキーツアーバス事故。

実は、この事故に類似した、下り坂でギアがニュートラルに入ったまま

制御不能で暴走するバス事故はいくつも起きている。

すべて同一メーカーのバス。

このバスにはこのバス特有の構造に基づくカスタマイズされた運転技術が必要で、

著者は、中古車として同一バスが日本中の道路を今も走り続けていることを危惧する。

特異な構造を知らされないまま、一般のバス運転手が、

一般的な運転をしただけで、事故に繋がるとしたらー

軽井沢スキーバス事故のような大勢の死者を出す悲劇を生むとしたらー

著者は、即刻この同一バスのメーカーにバスの回収、修理を求めている。

(『隠された人災』で、メーカー名は明記しています)