母はキレイ好きで、庭の手入れと家の中の掃除を怠らない人でした。調味料までこだわって調理されたものがいつも食卓に並ぶ。まさに主婦の鏡のような人でした。

ボケてはいけないと、わざわざ電車に乗って街にあるフィットネスジムに通い、ジムで出会ったお友達とランチに出掛け、月1でデパート、年1で娘の私と海外旅行を楽しむ。比較的優雅な老後を送っていました。

海外旅行に関しては、私の出産を機に早々に立ち消えとなりましたが、それ以外のものに関しては、診断を受ける2〜3年前から徐々に興味を失い、家にこもりがちになっていきました。

それでも孫の成長は楽しみだったようで、運動会や音楽会などの行事には、どうにか一人で電車に乗って来る事が出来ていました。

5年前の秋の事です。母は音楽会に来てくれました。音楽会終了後は一緒にショッピングモールへ出掛け、母は孫達に渡すお年玉袋などを購入して帰っていきました。

その後、母より孫達に渡すクリスマスプレゼントやお年玉の相談を受けたので、お年玉は一緒に買物に出掛けた際に購入した袋を使えば良いと伝えました。しかし母は、自分が孫の音楽会に行った事も、その後娘とショッピングモールに出掛けた事も、スコンと抜け落ちていたのです。

エピソード記憶の完全な抜け落ち。

「もうこれはダメやな」と思いました。

程なくして母が通院していたクリニックを受診した際、私から経緯をお話して、認知症の詳しい検査が出来る病院宛に紹介状を書いて貰いました。


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