百人一首の歌人-33 阿倍仲麻呂 | 松尾文化研究所

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百人一首の歌人-33 阿倍仲麻呂

「天の原ふりさけ見れば春日なる三笠の山に出でし月かも」

(天を仰いではるか遠くを眺めれば、月が昇っている。あの月は奈良の春日にある、三笠山に昇っていたのと同じ月なのだなあ。)

安倍仲麿(698~770)

19歳の頃、遣唐使として中国の唐へ渡った留学生の一人。時の玄宗皇帝に気に入られ、中国名「朝衡」として50年以上仕えた。一度帰国を許されたが、途中で船が難破して引き返し、結局帰れぬまま唐の地で没す。盛唐の大詩人である李白や王維とも 親交があった。

 子供のころ、よく家族で百人一首のかるた取りを行った。最初に覚えたのがこの歌で、この歌を聞くと懐かしさが募ってくる。数年前に映画「空海」を見た時にも登場し、何となく親しみを感じた。玄宗皇帝に気に入られたり、李白や王維とも親交があったということから大きな人物であったことが想像され、何となく縁みたいなものを感じる。

 彼の歌はこれだけだが、多くの派生歌があるようで、下記に掲げる。

ふりさけし人の心ぞ知られぬる今宵みかさの月をながめて(西行)

さしのぼる三笠の山の峰からに又たぐひなくさやかなる月(藤原定家)

何処にもふりさけ今や三笠山もろこしかけていづる月影(*源家長[新勅撰])

初時雨ふりさけ見ればあかねさす三笠の山は紅葉しにけり(〃[続後撰])

天の原ふりさけみれば月清み秋の夜いたく深けにけるかな(*源実朝[新拾遺])

年を経て光さしそへ春日なる山はみかさの秋の夜の月(西園寺公相[続拾遺])

春日なる三笠の山の秋の月あふげばたかき影ぞ見えける(二条良基)

影たかみ今もふりさけみかさ山遠き神代に出でし月かも(堯孝)

今宵月みかさの山の草枕夢かうつつかもろこしの空(藤原惺窩)